2014年 第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議開催

2014年5月31日から6月2日にかけて第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議が東京で開催され、300人が参加した。


〇各国の報告

 
 連帯会議の第1日目の集会では、被害者の訴え、基調報告と各国報告がなされ、2日目には、提言に向けての討論がおこなわれた。
62日には、国会前でスタンディング・デモと院内集会がもたれた。6月3日には都内の大学で証言集会がもたれた。

 第1日目の集会での被害者の訴えは、韓国の金福童さんとインドネシアのミンチェさんがおこなった。金福童さんは1941年に連行され、日本軍の性奴隷とされ、中国からインドネシア、マレーシア、シンガポールなどを転々とした。金さんは落ち着いた口調で発言し、生きているうちに反省して賠償することを求めた。ミンチェさんは14歳の頃、日本軍によって連行され、レイプされたが、6か月後に慰安所から逃亡した。ミンチェさんは話を聞いてくれる人がいて、初めて体験を話したと語った。

基調報告は日本と韓国からおこなわれた。日本からは、安倍政権による戦争ができる国づくりと河野談話への攻撃の現状が示され、河野談話の否定を許さず、それを発展させて、アジア全域の被害者が受け入れられる解決をすすめることが呼びかけられた。韓国からは、20年の国連人権委員会、アジア連帯会議、各国での決議などでの国際連帯活動、平和の碑の建設の動きや現在の戦時性暴力問題との連帯、ナビ()運動などの記憶と再発防止のための国際活動などについて報告がなされた。

続いて台湾、フィリピン、韓国、中国、東ティモール、オランダから現状報告がなされた。

台湾の婦女救援社会福利事業基金会は、展示会や映画(「蘆葦の歌」)などによる記憶の継承活動を紹介し、日本政府が、慰安婦制度が巨悪な人身取引制度であったことを認め、謝罪し、賠償することを求めた。

韓国の報告は、憲法裁判所が日本政府の法的な責任と被害者の損害賠償を認めたことをあげ、韓国政府にとって請求権協定第3条での仲裁手続きが法的義務となっていると指摘した。そして、人道的レベルでは解決できないとし、法的な責任として、@真相の確認と糾明、A国家的次元での公式謝罪と賠償、B歴史教育と追悼を指摘した。

中国の報告は、「慰安所」の設置が日本駐屯軍の指揮官によって決定され、日本軍と憲兵が慰安所の設置並びに慰安婦問題を軍事情報として通報しあっていた事実をあげた。また、資料から、59師団が27か所の慰安所を設置し、171人の中国女性と373人の朝鮮女性を監禁したこと、一人の慰安婦が178人の軍人を相手としたことなどを示し、歴史の事実を否定し、法的な責任を逃れようとする安倍政権の動きを批判した。

インドネシアからはブル島での「慰安婦」調査が報告された。報告では、日本軍はジャワからブル島に女性を連行した。ブル島の男たちはロームシャとされた。連行された女性たちは「再び死ぬ」(ブルのアリフル民族の言葉で「マタオリ」)という苦しみを受けた。それは誘拐されたこと、繰り返しレイプされたこと、山岳地帯での族長との強制結婚、ブル島での死という4回の死である。連行された人々は性奴隷制によって2つの時代を生きた。日本には、人間らしい生を奪ったこと、道徳と文明的な生活を奪ったことに対する責任がある。

東ティモールの報告(東ティモール人権協会)は、1942年2月から日本軍が占領し、道路建設などの強制労働、性奴隷、食糧供出などをおこなったこと、2005年の合同調査、サバイバーへの定期訪問、若い世代へのパネル展などの活動、日本政府が過去の歴史を認め、尊厳の回復すべきことなどをあげ、日本の若い世代による探究と過去に向き合う気概と意思を求めた。

オランダの対日道義請求財団は、国連人権理事会にアジア連帯会議の決議や証言を声明書として提出したこと、総会での強制収容所の生存者の陳述活動をあげ、日本が事実を認め、損害への補償をおこなって責任を果たすべきとした。

今回の集会は、被害者がつぎつぎに亡くなるなかで、もうこれ以上待てないという状況下で、安倍政権が河野談話を見直し、集団的自衛権の行使を認めて戦争ができる態勢をつくろうとするなかでもたれた。集会では、拙速な政治決着ではなく、「被害者が望む解決だけが真の解決」との呼びかけがなされた。

〇日本政府への提言

2日目の討論では、「日本政府への提言」をまとめ、決議を採択した。

提言では、問題解決のために日本政府がつぎのような事実と責任を認めることを求めた。その事実と責任とは、政府と軍が「慰安所」を立案・設置し、管理・統制したこと、意に反して慰安婦・性的奴隷にされ、慰安所などで強制的な状況におかれたこと、日本軍の性暴力にあった植民地・占領地での被害には異なる態様があり、被害は甚大であり、その被害は現在も続いていること、当時の国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であることなどである。

さらに提言では、日本政府がつぎの被害回復措置をとることを求めた。その措置とは、翻すことのできない明確で公式な方法で謝罪すること、謝罪の証として被害者の賠償すること、真相究明として、政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外での被害者及び関係者へのヒヤリングなどをおこなうこと、再発防止措置として教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施、追悼事業、誤った歴史認識による公人の発言の禁止、および同様の発言への明確で公式な反駁に実施をおこなうこと、誤った言論に対して政府が反論することなどである。

決議では、この提言の実現を日本政府に要求すること、2007年の誤った閣議決定を即時撤回させること、日本政府に国連諸機関の勧告を遵守させ、被害者の名誉を傷つける暴言・暴行に対し公開的で公式的に反駁させること、慰安婦問題の継承などの要求を確認した。そして、被害者への支援、8・14メモリアルデーへの取り組み、各国政府による問題解決への外交的取り組みを求めること、戦争をする国づくり政策への反対行動など確認した。

3日目にはスタンディング・デモの後、衆議院議員会館で院内集会がもった。集会には議員をはじめ、各国の外交官も出席した。集会では、遺族の曹金愛さん(中国)、元「慰安婦」のスカンティさん(インドネシア)、ミンチェさん(インドネシア)、エステリータさん(フィリピン)、李容洙さん(韓国)らが被害の実態を語り、日本政府が解決することを訴えた。その後、提言と資料についての説明がなされた。連帯会議のメンバーは、日本政府に、提言と強制性を証明する529点の「慰安婦」関係史料を提出し、強制連行を否定する日本政府の動きに強く抗議し、その早急な解決を求めた。(竹)