浜松市長様                      201411月4日

                           人権平和・浜松

 

旧平野家邸宅の解体工事の中止を求める要請書

 

 浜松市は浜北区の旧平野家邸宅(森岡の家)を解体する計画ですが、わたしたちは浜松市民としてこの解体工事の中止を求めます。

 この平野家の邸宅の旧主平野又十郎の経歴は浜松地域の歴史と文化を象徴するものです。浜松市による邸宅の解体は、この地域の歴史と文化を破壊するものです。浜松市は邸宅を文化財として保護する道を歩むべきです。

 平野又十郎は掛塚の廻船問屋で生まれ、維新変革の後に17歳で東京に出ました。そこで新たな世界に触れ、小野組で経営や簿記を学び、帰郷して浜北の豪農・平野家の養子となりました。又十郎は、浜北で報徳思想による同心遠慮講という貯蓄組合をつくり、さらに西遠銀行を設立しました。この西遠銀行はのちに遠州銀行となり、死後、静岡銀行へと統合されました。又十郎は企業融資だけでなく、企業の設立・経営にも関与し、浜松米穀取引所、天竜運輸、帝国制帽、遠州電気鉄道、浜松信用金庫などにも関わりをもちました。また、林業の平野社団、浜松裁縫女学校(現・学芸高校)の設立にも関りました。

 このように平野又十郎は浜松地域の産業化・資本主義の発展の基礎づくりをおこないました。その又十郎の邸宅は維新変革と産業化、報徳思想の地域的展開、地方銀行の形成、民間植林事業への関与、浜松での産業形成など、浜松地域の歴史を語ることができる邸宅です。長屋門・土蔵は江戸期の豪農家を示すものであり、邸宅にある銀杏の大木は自然遺産です。明治期に建築された邸宅は産業化をすすめた人々の歴史を示す遺産です。解体するのではなく、文化材として遠州地域の産業遺産に組み込み、広く人々に公開されるべきものです。

市はこの邸宅を破壊し、駐車場にして目先の利益を求めています。しかし、いまこそ、この邸宅の文化財として価値を理解すべきです。ここには浜松の産業形成の歴史があります。それを破壊してはいけません。

このような理由で、わたしたちは市による平野家邸宅解体工事の中止を求めます。