金富子静岡講演「日本軍「慰安婦」制度と植民地支配」

20141220日、静岡市内で静岡県近代史研究会の主催による金富子さんの講演会「混迷する「慰安婦」問題を考える」がもたれ、日本軍「慰安婦」制度と植民地支配についての議論があった。

はじめに金さんは、日本軍「慰安婦」問題が東アジアから東南アジア全域にわたるものであり、朝鮮人「慰安婦」だけではないこと、日本軍の慰安所で性行為が強制され、その主体が日本軍であり、実態が性奴隷であり、それが国際的な理解であること、「慰安婦」問題が国際問題になったのは金学順さんらの証言によるものであることなどを指摘した。

そのうえで、金さんは韓国の民衆史的記憶としての挺身隊認識、植民地教育での女性の就学機会の状態などについて話した。民衆が「挺身隊」という言葉を強制動員の代名詞として使っていたこと、未婚の女性たちが性的な関係を強いられていると発言すると処罰されていたこと、中国に連行されて一日70人余の客をもたされたという記事、植民地朝鮮では義務教育が実施されず、女性の就学率が低かったこと、官許の新聞に出された「慰安婦」募集広告を読むことができた女性は少なかったことなどの指摘は、参考になるものだった。

 金さんは、「慰安婦」問題が、植民地朝鮮の歴史的、社会的文脈を軽視することによって誤解・曲解されるの危険性を指摘して話を終えた。「慰安婦」問題については、事実を意図的に歪曲する動きが顕著である。このなかで、10月に、日本軍「慰安婦」問題WEBサイト制作委員会編『QA 「慰安婦」・強制・性奴隷』(御茶ノ水書房)が出された。この本に示されたような真実が共有され、2015年内にこの問題が解決されればと思う。