彼岸花 生駒孝子
白い彼岸花が咲いている
それは一筋の道を描いて
遠くなった空に向かっている
白いその糸なる縁の花よ
叶わなかったこの胸の想いを
連れて逝っておくれ
紅い彼岸花が下りてくる
聞き分けの無い願いに
紅く染まって地に沁みる
紅いその血潮の花よ
言葉もないままに
この胸の願いを葬っておくれ
季節に迷うことなく咲く花の
想いは何を標とするのでしょう
月が果てた花に涙する十三夜
川面に延びる月の道は
白金に照らして輝く
ひとつと信じた流れが
ふた瀬に離れ逝く時を
許されるものならば
せめてあのひとの傍らに
黙して咲け彼岸花