「問われる産業遺産情報センター 722ユネスコ決議とは」シンポ報告

 2021918日、「問われる産業遺産情報センター 722ユネスコ決議とは」シンポジウムがもたれた。(以下文中敬称略)

 シンポジウムでは最初に中田光信が「7・22ユネスコ世界遺産会議決議の意義について」の題で、ユネスコ決議の内容を説明した。決議の内容は、日本が「関連決定を完全に実施していないことは極めて遺憾」とし、歴史全体が理解できる解説戦略とする、朝鮮人などが意に反して連れてこられ過酷な条件で働かされたことや日本の徴用政策を理解する展示にする、犠牲者を記憶するための適切な処置を解説戦略に組み込む、歴史全体の優れた国際的な解説戦略の実例に学ぶ、関係者間で継続的な対話をするというものだった。中田は21世紀においては植民地主義の克服と文化多様性の尊重が平和構築の要とされていることを指摘し、産業遺産情報センターの展示の改善が課題とした。

 つづいて、竹内康人が「加藤康子「韓国と反日日本人に洗脳されたユネスコ」を読む」の題で報告した。報告では、加藤が国家総動員法を1939年(実際は1938年)とするなど、事実認識の不十性を示し、加藤が戦時体制を批判的にとらえず、戦争責任の視点を排除する姿勢であること、自らの強制労働を否定するという政治性については問わないこと、強制労働をプロパガンダとみなしていること、端島を事例に「仲良しのコミュニティ」と宣伝していること、強制労働問題を端島島民への人権侵害として問題をすりかえていること、批判するものを反日・国益の名で非難すること、情報センター長として知りえた情報を雑誌で暴露する行為に及んでいることなどを示した。

 小林久公は「加藤康子元内閣参与の行政私物化と産業遺産情報センター」の題で、明治産業革命遺産が安倍晋三と加藤康子の歴史観の宣伝の場となっていること、産業遺産国民会議専務理事の加藤康子が内閣官房参与となり、明治産業革命遺産の保全委員会やその下のワーキングループで地位を得るなかで国民会議へと業務委託がなされてきたこと、その中で加藤は産業遺産情報センター長としてセンターを私物化するような行動をとっていることなどを示した。

 民族問題研究所の金丞垠は植民地歴史博物館での「被害者の声を記憶せよ!強制動員の歴史を展示せよ!」の特別展について示し、強制動員の問題は現在の問題であるとした。そして、孫龍岩(江原道からサハリンの炭鉱、そして高島炭鉱)、柳奇童(忠清南道から三井三池炭鉱)、孫成春・李栄烓(ともに全羅北道から三池製錬所)らの証言を紹介した。証言では、日帝期は警察には絶対服従であり、行けと言われたら絶対に従うものだった。「募集」といっても自分の意思で来たのでなく、逃げられないように警備されたという。それは、動員と現場での労働の強制性を示すものである。(t)