裁判で「責任と被害の否定」を主張し「歴史の偽造」を行う国・東電を許すな!  
 海渡雄一さん講演会

2022年4月23日、静岡労政会館で浜ネット(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)総会の記念講演が弁護士の海渡雄一さんを招いて開かれ、65人が参加した。

海渡さんは冒頭、講演内容の主眼を、「今年の脱原発運動の争点は、2011年福島原発事故裁判で、加害側の国・東電による『責任の否定』及び『被害の否定』と闘うことだ」と話した。「責任の否定」及び「被害の否定」は、①損害賠償訴訟の上告審、②東電刑事裁判の控訴審、③東電株主代表訴訟の地裁判決の各裁判において、東京電力と国の責任を司法に確認させることが重要であることを強調した。

さらに今年の1月27日、2011年の福島原発事故の放射能物質によって被ばくし、子ども甲状腺がんに罹患した若者たち6人が、原発による損害賠償を求めて東京電力に対して起こした裁判では、そもそも子ども甲状腺がんは、1年に100万人に1~2人程度の発症見込みしかないとされているものが、子どもの人口が40万人足らずであった福島だけで、福島原発事故後の10年間で293人も発症していることは明らかに異常な多発だ。このことから、裁判では福島原発事故によって環境中に放出された放射能物質による被ばくとの因果関係があることを立証し、被害の否定を許さず、東電の責任を認めさせ、恒久救済の仕組みを作らせることが、裁判の意義であることを説明した。 

 海渡さんは最後に、避難者埼玉訴訟の弁護団からの報告を紹介した。避難者訴訟における東京電力の裁判態度は、「ひどい」の一言に尽きるものだと。それは、東京電力が加害者であるにもかかわらず、被害者に対して「被害などなかったのだ」「避難するのが間違いなのだ」という、「責任の否定」「被害の事実否定」の主張を裁判の中で繰り広げていることは、まさに「歴史の偽造」が行なわれている。海渡さんは、これを克服するためには東電・その役員個人を含めての国の明確な法的責任を司法的に確定させること。放射線被害の存在を「子ども甲状腺がん訴訟」や「原発事故収束労働に係る労災民事訴訟」など司法の場で確定させていくことを通じて、「事故の被害などなかったのだ」という、とんでもない言説の根拠をなくしていくべきだと訴えた。                            (M)