5・28再審と冤罪を考える浜松集会
2022年5月28日、浜松市内で浜松・袴田厳さんを救う市民の会の主催による再審と冤罪を考える集会がもたれ、30人が参加した。
集会でははじめに袴田弁護団の小川秀世弁護士が、現状と展望を話した。
2014年3月、静岡地裁は、証拠の着衣は警察によるねつ造とみなし、再審を決定、袴田厳さんを釈放した。しかし、2018年東京高裁は着衣はねつ造ではないとし、再審請求を棄却、けれども、厳さんの釈放は取り消されなかった。この高裁決定に対し、最高裁は2020年12月、高裁決定を取り消して、差し戻しを決定した。
現在、差し戻し審が行われているが、争点は味噌樽にあった着衣の血が1年経つと赤いままなのか、黒くなるのかということである。検察はあれこれと味噌づけ実験をおこない、赤いままであることを示そうとしている。今後、今年の7月から8月に証人尋問がなされ、その後、再審するか否かの決定がなされることになる。
つづいて滋賀県の日野町事件の再審にかかわる伊賀興一弁護士が、事件の概要と再審審理の状況を話した。日野町事件は1984年に起きた殺人事件であり、無期懲役とされた被告は再審請求中の2011年に亡くなっている。2018年、大津地裁で再審が決定し、2022年、大阪高裁での審理が終った状態である。
弁護団は「作られた自白」の信用性の打破をめざし、事件性と犯人性の解明をすすめた。金庫発見現場での引当見分時のネガや自白状況報告書を、あらたに証拠として取り調べさせた。ネガからは帰路の際に往路の演技をさせていることも判明した。日野町事件は虚偽の自白により、事実が構成され、冤罪が作られた事例である。
集会では、天竜林業高校事件の北川さんが、警察による証拠の隠蔽・ねつ造を問い、贈賄事件とするために、警察によって当時の中谷市長に供述誘導がなされたことを示した。また、中谷市長の弁護人からは、証拠開示により、中谷市長から北川校長に贈賄がなされたとされる時刻に、中谷が銀行で打ち合わせをしていた事があきらかになったことを話した。これも天竜林業高校での贈賄事件がでっちあげである証拠である。
集会では最後に、袴田さんの再審開始を求めるアピールが採択された。
以下、集会アピール
昨日27日で袴田さんが帰郷して8年が経過しました。
袴田さんは1980年12月の死刑確定数年後から精神的変調を抱えるようになり、現在もその状況から脱していません。袴田さんの抱えている世界は「事件も裁判もない」というものです。この言葉は、警察や検察の事件をデッチ上げによって、死刑囚にさせられ死刑執行の恐怖を排除しようとする意志があるように思います。
このような袴田さんの状況は、初動捜査を誤り袴田さんをデッチ上げた警察官、デッチ上げを是認した検察官、警察、検察の犯罪的行為を見抜けず誤った判断をした裁判官により、袴田さんを冤罪死刑囚とした残酷な結果です。
袴田さんは、1983年8月に再審請求に際し意見書を作成しています。その中で、「本件裁判の以前のある日であった。その場で私は真犯人でないことをはっきり申し上げた。(中略)それは代用監獄でのすべての拷問、精神的肉体的苦痛からやっと解放されたから真実が言えたものである。(中略)吉村検事は右調書作成にあたり刑事二人を取調室の入口外側に座らせていた。つまり代用監獄を悪用した、警察による徹底した不法不当をバックに調書を捻出したものであり、任意性、真実性はない。」、また「本件全証拠の合理的総合判断により私の無実であることは決定的である。確定判決の認定は根本に不合理があり有罪は到底是認できない。従って本件再審請求にはその理由があり、速やかなる開始決定が当裁判所において下されるべきである。」と、無実を訴え再審開始を求めています。
高裁審理で7月、8月には弁護、検察双方の鑑定人尋問が行われる予定です。
袴田さんの無実は明白であり、高裁はいたずらな時間稼ぎを行っている検察の意見を退け、ゆがんだ司法の正義を糺し、袴田さんの無実の訴えを受けとめ、今すぐ再審開始を決定すべきです。
2022年5月28日