デジタル教育・デジタル社会を問う
●9・29デジタル社会を問う日弁連のシンポ
2022年9月29日、日本弁護士連合会が旭川市で人権擁護大会を開いた。そこで、「デジタル社会の光と影」と題したシンポジウムがもたれた。オンラインで延々5時間半に及ぶものであった。つぎの発言が印象に残った。
○台湾でも保険証はデジタルになっているが、日本との決定的な違いは必ず複数の選択肢がもうけられており、保険証に関しても従来の保険証も使うことができる。デジタル大臣のタン氏は週3回デジタルを使えない人と話に行く。弱者を大切にしているようだ。
○教育に関して、オンライン授業は大変大きなビジネスである。ブルックリンの貧しい子供たちが通う学校ではオンライン授業が行われており、金持ちの子供たちが通う学校では対面授業である。「なぜ、私たち貧しい家の子供だけがデジタル教育を強制されるのか」と、声をあげている。
○最近、日本でも「デジタル教育は脳の発達に悪い影響を与える」という研究発表がなされている(川島隆太氏、難波博孝氏)。2015年OECDでも同様の研究発表がなされている。
○自己情報コントロール権がない日本の法制度はアメリカ、ヨーロッパから遅れている。昨年のJR東日本の大阪駅顔認証システムの設置について、JR東日本は事前に個人情報保護委員会に打診し、保護委員会は承諾した。しかし、その後、外部からの反対により、カメラ設置は中止となった。保護委員会はプライバシー保護の議論が足りない。
デジタルは日本の在り様を大きく変えるが、多くの問題がある。日本では、デジタル社会を批判的にとらえた報道が少ないことが気にかかる。
● 10・18浜松市にデジタル教育に対して再質問書
10月18日、スーパーシティを考える会は浜松市に対してデジタル教育に関する再質問書を出した。内容は以下である。
私たちの会においても、いろいろな意見があり、議論を重ねてきました。そのような中で、そもそも「デジタルを使って教育することが、子どもたちの脳の発達についてよい効果を与えるのか?」という疑問がますます強くなりました。
東北大学の川島隆太教授は多くのデータを分析し、デジタルは決して脳の発達に良い効果を与えないという報告をしています。広島大学大学院の難波博孝教授は、広島県内の小学校で調査して、「文章に没入し、深く読む読解力の育成には(デジタルよりも)紙の方が適している可能性がある」と話しています。同調査の「本を読むなら紙とデジタルのどちらが良いか」という問いに対して、児童は6割以上が紙を選択、学年が上がるほど増加し、高学年では8割以上が紙を選んだという報告をしています。
2015年にOECD(経済協力開発機構)のPISA(国際的な学習到達度調査)調査委員会がまとめた加盟国の学校でのICT活用と教育効果に関する報告書では、読解力、数学、科学の3領域でコンピューターの利用時間が長いほど学力は低下している。ICT教育を推進すればするほど学力は低下すると報告しています。
以下の質問にお答えください。
1デジタルを活用した教育が脳の発達に良い影響を与えるという科学的事実があれば教えてください。(※事務処理などでデジタルの活用が大いに役立つことは承知しています。)2デジタルで教育するために、年度毎に掛かる経費を項目ごとに教えてください。
(池谷)