11・30「被害者が生きているうちに解決を! 今こそ謝り、つぐなうとき」集会報告

 2022年11月30日、東京の衆議院第1議員会館で、「被害者が生きているうちに解決を! 今こそ謝り、つぐなうとき」集会がもたれた。主催は強制動員問題解決と過去清算のための共同行動であり、日韓両政府が「徴用工問題」の解決に向けて協議をすすめるなかでの企画である。

韓国側は、2018年韓国大法院徴用工判決により日本企業が動員被害者に支払うべき賠償金を、日帝強制動員被害者支援財団が基金を設立して、代わりに支払うという案を出している(「並存的債務引受」)。それに際し日本側の「誠意ある呼応」(謝罪と基金への拠出)を求めている。他方、日本側には強制労働の存在自体を否定し、謝罪を拒む動きがある。

このような動きをふまえ、主催者は基調報告で、動員被害者が動員企業に賠償を求めるという民事訴訟に日本政府が介入してきたことを批判、1998年日韓パートナーシップ宣言の精神などを生かし、日本が植民地支配によって多大の苦痛と損害を与えた事実を自覚し反省すべきとした。そして日本政府が「解決済み」の立場を改め、日本企業が謝罪と賠償をすすめることを呼びかけた。

集会では、外村大さん(強制連行研究者)が、戦時の植民地での労務動員では法的な根拠もなく、指示に従わせる形で強制的に動員した実態があり、「徴用工」というのではなく、「強制動員」とすべきと説明した。そして、日本政府は公的な調査をおこなうべきであり、労働問題としてとらえるとともに動員被害の歴史に学ぶべきとした。

中沢けいさん(小説家)は被害者との対話が隣国と対等に付き合うことの始まりとし、そのような対話の相手があることに感謝すべきとした。そして日本では1970年代、80年代、90年代と強制労働調査の積み上げがあり、それらの資料を保存し、アーカイブとするだけでも価値がある。安倍政権の対応に問題があったのであり、最高裁判決に素直に従えばいいと語った。

東郷和彦さん(元外交官)は、外交官は相手の主張がわかる立場にあり、手の打ちどころをつかみ、互譲の精神を持ち、一歩譲って解決することが大切、日韓は双方が軌道修正し、徴用工問題を突破口に良い関係をつくるべきである、今がチャンスであると話した。

五味洋治さん(東京新聞記者)は、韓国側は支援財団による「並存的債務引受」の方法で肩代わりする案をだしているが、日本側に「誠意(=真正、真情)ある呼応」、つまり被告企業の謝罪と基金参加を求めている。それがあれば、韓国側は最終案をまとめていくだろう。日本側の歩み寄りがなければ、解決の機会を失うと解説した。

鳥井一平さん(労働運動活動者)は、外国人技能実習生制度は実際には外国からの労働者受入制度であり、その実態は「やめる自由のない、奴隷労働」であると批判した。そして、このような人身売買や奴隷労働の根絶なくして民主主義はない、共生社会の実現には過去の植民地支配での強制労働、その歴史の反省、謝罪と清算が欠かせないと訴えた。

平野啓一郎さん(小説家)は、相手の主張を知ることから始めるべきであるが、韓国大法院の判決文を読むことなく、韓国は嘘つき、約束を守らないと罵声をあびせる状況を批判した。そして、判決文にあるように騙されて過酷な現場に動員されたのであり、その被害者の痛み、その傷を癒したいという気持ちに共感する。これは被害者の人権問題であり、企業の活動にも過去の清算が必要であると話した。

集会では、集会基調をふまえてさまざまな立場から問題解決への思いが語られた。強制動員被害の問題解決において被害者の尊厳の回復は欠かせない。それなしの政治的「決着」であってはならない。まず、日本政府と企業が強制動員・強制労働の事実を認めるべきである。また、企業は被害者との協議を始めるときである。そして、政府間で、強制動員被害の包括的な解決に向けて案を練るべきである。(竹)

 

   

強制動員問題解決に向けての共同声明

「被害者が生きているうちに解決を! 今こそ謝り、つぐなうとき」

 

2018年秋、韓国最高裁(大法院)は、強制動員の被害事実を認め、日本企業に賠償を命じる判決を出しました。しかし、日本政府はこの判決を1965年の日韓請求権協定で「解決済み」であり「国際法違反」と決めつけ、韓国に対して経済報復をしました。判決から4年が経過しましたが、判決は履行されていません。

現在、韓国政府は問題解決に向け、被害者側の意見を聞き取りつつ、解決策を検討しています。関係財団に基金を設置し賠償支払いを「肩代わり」させる案も示されていますが、日本側に「片手で拍手はできない」と「誠意ある呼応」を求めています。韓国側が求めている呼応とは、日本の企業の謝罪と「財団」(基金)への出資です。しかし、日本政府はそれに応答する姿勢を示していません。2021年には歴史教科書から朝鮮人強制連行、強制労働の事実を削除するに及んでいます。このような対応では問題は解決しません。

ところで、日本の政権は1995年の村山談話以後、朝鮮植民地支配に対する反省と謝罪を表明してきました。1989年3月、竹下登首相も国会で「日本政府及び日本国民は、過去における我が国の行為が近隣諸国の国民に多大の苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚して、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を今日まで歩んできた」。「そのような自覚と反省は、歴史的にも地理的にも我が国と最も近接しております朝鮮半島との関係においても、とりわけ銘記さるべきもの」と述べています。過去の朝鮮人強制連行訴訟では日本製鉄、日本鋼管、不二越などの企業が被害者と和解し、金銭を支払った事例もあります。

過去、日本が朝鮮半島の人びとに与えた苦痛と損害、その歴史事実を自覚し、反省するという立場に立てば、韓国側の求めに応ずることは、困難なことではないでしょう。

2022年9月、三菱重工訴訟原告の梁錦徳(ヤン・クンドク)さんは次のように書いています。「お金が目的だったら、私はとっくの昔に諦めていたでしょう。私は日本から謝罪を受ける前に、死んでも死に切れません」。同月、日本製鉄訴訟の原告である李春植(イ・チュンシク)さんも次のように語っています。「補償を受けられなかったため、裁判をしたが、結果だけを受け取った。生きているうちに問題が解決することを望む」と。このような強制動員被害者の声を受け止め、誠実に行動すべきです。

私たちは日本政府、関係企業に訴えます。植民地支配下での強制動員の歴史を自覚し、反省すべきです。「解決済み」の姿勢を改め、韓国の判決を受け入れ、被害者の救済に向け、謝り、つぐなうべきです。

 

    2022年11月30日

        〔呼びかけ〕 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

mail: 181030jk@gmail.com

                URL:https://181030.jimdofree.com/