12・24尾林芳匡講演「ウォーターPPP批判」



 2023年12月24日、浜松市内で尾林芳匡さんの講演「迫りくる水道民営化 ウォーターPPPとは?」がもたれた。主催は浜松市の水道民営化を考えるネットワークで、オンラインを含め、約80人が参加した。尾林さんはつぎのように話した。
 今政府は「ウォーターPPP」(public private partnership)を宣伝し、水道民営化を狙っている。そこでは長期契約(10年)、性能発注(性能のみ注文し設計などは民間に依頼)、維持管理・更新の一体化、利益の官民配分を謳っている。コンセッションとは歴史用語では租界を意味するように、特権を示すが、水道のコンセッションがすすまない中で、「ウォーターPPP(管理更新一体マネジメント)」が出されてきた。これはコンセッションに段階的に移行させるための手法である。
 地方公営企業として水道事業が行われているのは、水道事業が公衆衛生と生活環境のためにあるからであり、憲法25条では公衆衛生は国の責任とされている。この水道事業を民営化するのがコンセッション方式である。政府はコンセッションを「運営権」と訳すが、ごまかしであり、水道事業を「利権」とするものである。コンセッション推進にむけて、政府は水道事業を厚生労働省の管轄から国土交通省へと移管することにし、2024年4月から移管される。厚生労働省の職員のなかには「命の水を守ろう」とする責任感をもち、水道民営化を拒む人たちもいるから、政府は移管を考えたとみられる。
 この間、PFIが推進されてきたが、会計検査院がPFI26事業で2300件の契約違反の事例を指摘した。刑務所にもPFIが導入されていたが、食事への異物混入や私物の紛失があったという。自治体がPFIを止める動きもある。世界では再公営化の動きがみられる。それにより、財政支出の削減、労働条件の向上、透明性・民主的コントロールの向上、気候危機への積極艇対応などの評価が出ている。浜松は、反対運動の形成、情報公開での成果により、水道民営化を中止させ、命の水を守る先進地である。PPPの動きを警戒し、運動をすすめよう。
 この後、質問や意見が出された。

 この12月、浜松市の上下水道部は「下水道利用料金設定割合の変更について」というチラシを水道料金通知とともに配布した。浜松市の下水料料金は上水道使用に従って課金されている。下水量の料金は使用料と利用料金に分けられているが、そのうち利用料金は民営化された浜松ウォーターシンフォニーに支払われる仕組みだ。チラシによれば、この使用料と利用料金の割合を23.7%から27.6%に変更すると記されていた。支払金額は変らないという。ちょっと読んだだけではわからない。
 要するに.下水道料金を浜松ウォーターシンフォニーが3.8%増額するというのである。その根拠はといえば、コンセッション導入時の契約に、5年で見直すとあるからだ。では3.8%はいくらか。上下水道部によれば3ヶ月で1億5000万円という。12ヶ月で6億円だ。浜松ウォーターシンフォニーが費用が増加したといえば、はいはいと、割合を変更し、浜松市が支援するというわけだが、それは市の資金を民間会社に有利なように手渡すと言うことだ。
 チラシには「いただく金額は変りません」「単価はいままでと変更ありません」とあるが、市民の財産を基礎とする上下水道部の資金が1年で6億、10年で60億円、それが浜松ウォーターシンフォニーに流出するという訳だ。このような下水料金の割合設定の変更が、コンセッション導入利権のひとつとして組み込まれていたわけだ。
 ところで浜松市は上水道が赤字、例えば2023年度は4.7億円の赤字であり、19.9%の値上げが必要とする。だが、このように下水での利用料金の浜松ウォーターシンフォニーヘの流出を止め、それを上水道赤字にに補填すれば、赤字ではなくなることになる。
 導入の際には、民間経営のノウハウで安価な経営になると宣伝していたが、それは嘘だったということだ。上水道料金が上がれば、浜松ウォーターシンフォニーの下水量利用料金の収入も増える。その収入の実態、そして利権の仕組みはヤミの中だ。                                                     (T)