「立ち上がる人々」 光州マダン劇団シンミョン名古屋公演2007・8・12
マダンとは空き地や庭のことであり、「開かれた空間」をさす言葉である。この劇団シンミョンにとって、マダンとは光州抗争の劇化によって平等と自由と友愛への意思を分かち合う場のことである。
物語は女と男の2人が出会い、その間にイルパルが生まれるところからはじまる。基層民衆からのイルパルの出生が示され、夜学校に通うようになった彼は光州5・18抗争に参加する。彼は最後に道庁に立て籠もり、政府軍との銃撃戦で死んでいく。父母が死者たちの中からイルパルを発見する。最後はイルパルたちが復活し、太鼓の合奏の中で観客へと民主化と解放への意思の共有を提示する。
生命の誕生が2人の滑稽な踊りで表現され、生命の復活と解放へ意思の共有が厳粛な太鼓の合奏で表現されていく。女の背中の、貧困によって作られたこぶから引き出された紙は、最後に死者の復活の炎で燃え上がり、女は観客から災厄を取り払い、誘うように舞う。
劇空間において現代史を描出するなかで、伝統的な打楽器と舞踏を織り込むことで、グローバルな解放感覚を揺さぶることに成功している。光州抗争での被害者の尊厳を回復することによって、事件そのものの悲しみを超え、そのかなたに希望を共有していくという苦闘の先に、この劇がある。
「シンミョンナゲ」とは心の底からうきうきする感覚という。マダンの場を通じての「シンミョンナゲ」を分かとうとする気魄のある演劇である。それは、「思考停止」のこの国の状況に活を入れるものだ。 (T)