2000年カーティスウイルバー問題(中止)
静岡県知事様 2000年10月25日
清水市長様 NO!AWACSの会・浜松
米第七艦隊イージス艦カーティスウィルバーの
清水港への寄港拒否を求める要請書
私たちは浜松基地へのAWACSと空中給油機導入に反対し、平和運動をすすめている市民団体です。
新ガイドラインのもとで、米軍が日本全土を戦争の訓練場とする動きが強まっています。強引な発着訓練に抗議して三沢市や大和市では米と友好関係を中断する動きがあり、小樽市長はキティホークの入港は認めたものの巡洋艦ビンセンスの接岸は断固拒否しています。
清水の軍港化の動きは98年の米軍艦カッシングの入港、99年、海自のマリンフェスタの名による大量の軍艦の入港、そして今回のカーティスウィルバーの入港にみられるようにすすんでいます。港湾の管理権限は地方自治体にあります。これは港湾の軍事利用をはばむことができる民主的な権利です。この権利の大切さを自覚し、積極的に活用してほしく思います。
カーティスウィルバーはイージスシステムを導入した艦でイージス艦とよばれる最強のハイテク攻撃指揮艦です。単なる駆逐艦ではありません。英文の文字どおり「デストロイヤー」なのです。レーダーで多数の目標をとらえ、対潜、対空、対艦ミサイルをもち、核を用いることができる対地攻撃用のトマホークミサイルもそなえています。また、核・生物・化学戦防御システムもそなえています。カーティスウィルバーは高い侵略的能力をもつ軍艦なのです。
カーティスウィルバーは1992年に完成し、1994年カリフォルニアのサンディエゴ基地に配備され、夏にはリムパック94に参加し、対空指揮を担っています。1995年にはペルシャ湾岸に派遣され、イラク監視の一翼を担い、第5艦隊の一員として、対空・対艦・対潜の防衛指揮と攻撃戦の指揮をとっています。イージス艦はコマンド(指揮)能力があるのです。AWACSが空の司令塔であるならイージス艦は海の司令塔であり、相互にリンクしているのです。
カーティスウィルバーは1996年にはサンディエゴから日本の米軍横須賀基地へと移り、第七艦隊に編入され、1997年には最も活躍した艦のひとつとされています。
1998年には、南太平洋で対潜訓練をおこない、下田での黒船祭に参加。さらに新たな通信情報システムを装備し、フォーイーグル98では韓国軍と共同訓練をおこなっています。
1999年には米第七艦隊キティホークなどとペルシャ湾岸へと派遣され、第5艦隊の下でイラク監視作戦を担っていいます。カーティスウィルバーは、ペルシャ湾岸で米軍によるイラク監視作戦に参加、イラクに飛行禁止区域を強制し、イラク制裁の支援、サウジアラビア軍との共同訓練やアラビア海北部での訓練などをおこなってきました。
新ガイドラインのもとで米軍は港湾を事前に使用する訓練をすすめています。現在では日本各地の港に米艦が入港するようになりました。今回のカーティスウィルバーの清水寄港と米兵の上陸はその一環です。ペルシャ湾岸まで行って米軍のイラクへの制圧戦争を担う米イージス艦の清水への入港に私たちは断固として抗議します。
港湾は平和産業のためにあります。港を戦争の準備に使うことは静岡県や清水市の市民の多くが反対していると思います。米艦が清水港に入れば、タグボート・汚物処理・給水などの民間労働者や自治体の職員も動員されることになります。それは戦争に労働者を動員するための事前の訓練です。そのような戦争のための事前訓練に私たちは抗議します。
カーティスウィルバーはアメリカのアジア覇権戦略に活用されている「デストロイヤー」です。知事や市長はそのような軍艦の清水港への入港を許可してはいけません。
今すぐに入港と米兵の上陸の許可を取り消し、入港に反対してください。NO!ということが県民・市民の生命を守ることにつながります。
以上、強く要請します。
◎清水の仲間からの記事
新ガイドライン下で日常化する自治体・民間協力
清水港への米軍艦入港の動きに労働者・市民が反撃
●最近の新ガイドライン下での動き
1999年5月に国会で強行成立された「周辺事態法」の施行後、最近の米空母「キティホーク」の小樽港寄港など、民間空港や港湾の米軍利用は増大し、米軍機が民間空港に勝手に離着陸するなどの事態も発生しています。また、政府は7月25日に周辺事態法9条の解説をまとめ、「自治体・民間協力」についての手続きなどを明らかにしました。
こうした中で、11月2日から18日にかけて日米共同統合実動演習が全国規模で行われ、「周辺事態法」を想定して捜索救助活動と在外邦人輸送、対ゲリラ訓練などを実施するとしています。また陸上自衛隊は、滋賀県あいば野演習場、宮城県王城寺原演習場で米軍と共同演習をすることを明らかにしています。さらには、東京の米軍横田基地では災害救助活動を想定した自治体・民間協力にかかわる演習も予定されています。
このように新ガイドラインのもとで、米軍が日本全土を戦争の訓練場とする動きが強まっています。しかし一方では、強引な発着訓練に抗議して三沢市や大和市では米と友好関係を中断する動きも出ており、小樽市長はキティホークの入港は認めたものの巡洋艦リンセンスの接岸を拒否しました。
●米軍艦の清水港への入港騒ぎ
静岡県当局は10月19日、米海軍の駆逐艦「カーティスウィルバー」(9,100トン、乗員228人)が11月1日から5日まで、接岸せず清水港の沖合に停泊すると発表しました。
県清水港管理局によると、日米地位協定に基づき、在日米軍側が清水海上保安庁部を通じて12日に入港を通知してきたと言う。県知事や清水市長は、「入港目的が日米地域協定に基づく通常入港で、外務省から核持ち込みがないことは疑いを有しないとの回答を受け取ったので、問題ないと判断した」との、いつもの型どおりのコメント発表です。
そして入港する理由は、水や食料の補給、乗組員の休憩のためだと言う。なぜ、沖合に停泊する事になったかと言えば、寄港する時期に接岸可能な深さの岸壁に民間の船舶が係留する予定がもう決まっていたからである。
しかしこの「カーティスウィルバー」という軍艦は、神奈川県の横須賀基地を母港としており、今回は韓国の仁川を出港して清水港に寄港するとの事。清水から横須賀は目と鼻の先で、仁川から帰ってくる軍艦がわざわざ清水に入港して5日間も補給・休憩を取る必要がどれほどあるのか?まったく疑問です。
また、外務省はいつものパターンで「非核3原則を堅持している。日米安保条約に基づく事前協議が行われない以上、核持ち込みはない」との見解を発表しています。しかし過去の米軍関係文書や元米軍高官の発言でも明らかのように、軍事紛争地域の最前線に配置されている巡航ミサイルトマホークの搭載が可能な最新鋭軍艦が核兵器を搭載しているのは軍事的常識だと言えます。政府・外務省の見解こそがまさに非常識であり、説得力がありません。
なぜ米軍艦は接岸も出来ないのに入港するのか?常識的に考えて入港する理由がありません。あるとすれば、入港したという実績を残す事と清水港湾内の調査が出来るため、と言うことになります。これは新ガイドラインを意識した軍事行動だと判断できます。
清水の軍港化の動きは、98年に戦後初めて米軍艦のカッシングが入港したこと、99年に海上自衛隊のマリンフェスタの名による大量の軍艦の入港、そして今回のカーティスウィルバーの入港にみられるようにすすんでいます。
●突然の入港中止
こうした米軍艦の入港を知った県内の反戦市民グループや労働組合は、入港に抗議するために立ち上がり、「米軍艦の清水港入港に抗議する実行委員会」を結成し、行動をスタートさせました。
具体的には、10月27日午前に静岡県知事に対して入港を拒否するよう「要請文」を提出し、午後には清水市長にも同じように要請行動を展開しました。また、入港当日の1日朝7時には、清水港沖に停泊する予定近くの三保真崎海岸で抗議行動を取り組む計画を立てていました。
今回の入港騒ぎの中で、共産党も社民党も素早く反応して、それぞれの大衆団体で県知事に抗議する、また1日の入港時にも真崎海岸で抗議行動を展開する計画を発表していました。最近の反戦運動では珍しく、三者団体が同じ場所で抗議行動を展開することになりました。
ところが、10月30日に突然県当局は、在日米海軍司令部から海上保安庁を通じて「米艦カーティスウィルバーの清水寄港にかかる通告についてこれを取りやめる」との連絡があったと発表しました。
その後、新聞で読めばこの米軍艦カーティスウィルバーは急きょ10月31日から博多港に補給や休憩のため入港すると発表しています。その米海軍の博多入港の通知が前日の30日にあったとのことで、さすがに福岡県当局もそれには強く抗議したようです。
今回のこの騒ぎを通じて感じたことは、私たち日本の社会は米軍の支配下におかれ思い通りに動かされている事、地方自治体にはまったく主体的能力がない事、こうした状況下で新ガイドラインの戦争体制が着々と進んでいる事、こうした事を痛感させられた10日間でした。
(清水E)