郵政の職場は今                 2007128                                      

● 郵政事業の沿革と民営化政策

はじめに郵政事業の歴史をみます。1871年4月に郵便創業、1885年12月に逓信省設立、戦後の1949年6月に郵政省ができます。民営化の動きのなか、2001年1月郵政事業庁ができ、2003年4月に日本郵政公社となりました。

小泉政権は2001年4月に発足しました。かれの政策スローガンは「小さな政府」「官の独占市場を民間に開放せよ」でした。このなかで「公務員は民間に比べて楽すぎる」「公務員の数など減らしてしまえ」という公務員バッシングがおこなわれました。この政権が郵政の民営化をすすめ、200510月には郵政民営化法案を成立させました。

200710月には民営・分社化がおこなわれます。5つの会社・日本郵政株式会社(持株会社)・貯金銀行(株式会社ゆうちょ銀行)・保険会社(株式会社かんぽ生命保険)・郵便局株式会社(窓口業務、貯金銀行・保険会社から業務委託され販売等を行う)・郵便事業株式会社(郵便関係の仕事・集配など)に分割されます。

しかし、「公」から「民」への急激な移行を強行すれば、公的部門ゆえに維持することができた労働条件やモラルの水準が、利益追求を最優先に掲げる民間企業並みに引き下げられます。

 

● 民営化の問題点1 

地域の切捨て、合理化・人員削減と非常勤の増加

 

 民営化によって、地域の切捨てが進行します。まず、集配拠点再編計画によって、過疎地を中心とした郵便局の仕分けや配達の集配業務をなくし、窓口業務のみにして都市部の郵便局に集約させることになります。全国で4700の配達局のうち1048局を窓口業務のみとするのです。たとえば静岡県西部では、下阿多古局、上阿多古局、横山局が天竜局へ、都田局が浜松北局へ、舘山寺局が伊左地局へ再編されます。さらに、ポストの廃止・撤去がすすみ、ポストから郵便物回収の回数を減少していきます。また、ATMの設置基準の見直しもおこなわれます。

また、民営化によって合理化がすすみ人員の削減がすすんでいます。2003年度からの4年間で30,000人を削減し、252,000人体制にしようとしています。20073月の勧奨退職が14,000人に及びます。

その一方で、ゆうメイト(非常勤職員)の増加がすすみ、非常勤職員のゆうメイトの人数は2005年度では8時間換算で116,904人です。延べ人数は14万から16万人とも言われています。この人々は使い捨て・切り捨ての労働力であり、非常に不安定な雇用状況にあります。民営化で解雇され再雇用となるわけです。

 

● 民営化の問題点2

 職場の人権侵害

 

職場での第1の問題点は2003年度から導入された人事評価制度です。70点以下にはパワーアップ研修がおこなわれます。この制度によって降格と給与カットがなされます。人事評価は不透明な制度であり、それは賃金カットという切り札で脅迫し、言われるままに働く職員をつくることです。そして、それについていけない職員を退職に追い込みます。3年連続で70点以下は降任・降格とされ、月4から5万円の減収になってしますのです。

2JPS(ジャパン・ポスト・システム)の導入です。これはトヨタ方式を郵政現場に導入し、コスト削減、作業方法の見直しをすすめるというものです。それにより、集配関係の局内作業で、今までいすを使用していた作業がすべて立ち作業に変更され、ひざの痛みや腰痛の原因となっています。計画的な製造業の工程と毎日の取扱量が一定していないサービス業の違いを無視しての導入です。

3に人事交流という名の不当配転がおこなわれるようになりました。これは組合の弱体化が目的であり、労組役員がねらいうちにあっています。この異動によって集配関係の職員の場合、配達区域を最初から覚えなくてはなりません。

4に深夜勤(ふかやきん)の導入が職場での労働強化になりました。拘束時間11時間、仮眠時間なしの10時間勤務がおこなわれるようになりました。局・担務により出勤時間の前後はあるのですが、午後9時〜翌日の朝8時までの深夜勤務となります。このような深夜勤務を連続3〜4日間を勤務しなくてはならないときもあるのです。これは労働者の健康を破壊しています。

5にノルマ達成の圧力が強まりました。郵便関係では小包・年賀ハガキ、小包は年間200から1000個、年賀ハガキは1万枚がノルマです。このノルマを達成するために自腹をきることを「自爆」と呼んでいます。自分で金券ショップへ行き売りさばくわけです。貯金関係では投資信託・定期貯金・定額貯金の募集、保険関係では簡易保険・郵便年金の募集があります。貯金・保険とも局の目標を個人に割り振るため、それがノルマとなります。局にもよりますが、成績の悪い職員は管理者から圧力を受けることになり、それによる病気や自殺もあります。

 

● 今後の課題

このような郵政民営化を推し進めた原動力のひとつに、マスコミを使っての公務員バッシングがあります。「国鉄分割・民営化」のときと同じです。グローバリゼーションの中で、民間企業の経営理念に近い行政管理システムの導入が進められ、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)という徹底した競争原理を公的部門に取り入れようとしています。駐車違反取締りの民間委託もそのひとつであり、現業部門の民営化がすすめられます。公務員や自治体の価値観を民間企業と同じにし、非正規や派遣、請負社員を増加させていきます。

これに対しどう対抗するかですが、まずは現実を知ることです。そして一人ひとりが個人として自立しつつ闘い、団結することしかありません。郵政の4.28解雇撤回闘争のように、しぶとくかつ展望を持って闘い続ければ、未来を切り開いていけると思います。

                (近藤・20071月人権平和浜松集会での報告)