やっと風穴をあけた
しかし、きわめて不当
9.15鉄建公団訴訟判決
9月15日、東京地裁前には「鉄建公団訴訟」判決に注目して朝から多くの人々がつめかけていた。12時45分の傍聴券抽選のころにはその数は500人ほどにふくれ上がっていた。公判開廷予定は13時30分。正門を取り囲むようにして報告を待つ人々。緊張した時間が過ぎる。
14時少し前、酒井原告団長が弁護士とともに出てきた。手にした垂れ幕が下ろされる。「折衷案判決」文字が読み取れる。どういうこと、勝ったの、負けたの? 説明を求めるざわめきが続く。宣伝カーのスピーカーから弁護士の声が流れる。
「採用者名簿に登載しなかったという不当労働行為は認定したものの、90年解雇は適法としたうえで、採用期待権を損なわれたとして慰謝料一人500万円というきわめて折衷的な判決です」
人々に怒りが広がる。「シュプレッヒコールだ、シュプレッヒコールをやろう!」あちこちで声が上がる。判決を糾弾するシュプレッヒコールが始まった。
この日の判決を整理する次のようになる。
@ 87年の採用差別・JR不採用については全国各地の労働委員会命令を踏襲し不当労働行為として認定。被告側が主張した時効論については2003年12月22日が起算点として時効は成立しないとしりぞけた
A JR発足までの不当労働行為とされるものについて責任は旧国鉄にあり、すでに時効が成立している
B 同じく旧清算事業団での不当労働行為も3年の時効が成立している
C 旧清算事業団からの90年の解雇も時限立法である「再雇用促進特別措置法」に基づくものであり適法
D 地元JR採用についてはJRに努力義務はあったかもしれないが法的義務はなかった
としたうえで
不当労働行為がなかったとしても九州・北海道の地元JRに採用されたかどうかは立証されていず判断できないが、採用に対する「期待権」はあった。その「期待権」に対する慰謝料として一人500万円の支払い(ただし採用基準外の5名を除外)を被告に命じた。
判決全体からいえば、不当労働行為の認定をJR「採用時」のみに限定し、他は時効論を採用して原告の訴えをしりぞけたきわめて不当なものだ。
ヤミ・カラ攻撃から始まった国労解体攻撃は国鉄・清算事業団・JRを通して現在に至るまで一貫して行われた一連のもので連続した因果関係にある。これを意図的に無視することを基本に判決は論理構成された。しかしさすがの東京地裁も全国各地の労働委員会命令は否定できず、不当労働行為の認定を無理やり最小限に留めることで政府の顔をたて賠償金額を小額に抑える政治的配慮のうえで判決を作文した。しかも採用問題でも中央労働委員会命令を足がかりに「採用されたかどうかまで判断できない」として「期待権」なるものを登場させ、その期待権としては異例の高額という500万円ということで決着点を提示した。
15日夜の報告集会には800人近くが集まった。この日の判決について弁護団の報告を受け、一部にせよ不当労働行為を認定させたことは闘いの成果としつつも、きわめて政治的で不当なものとして控訴していく方向を確認し納得いく解決まで戦い続けることが提起された。
国労組織内部からの激しい妨害をはねのけ鉄建公団を相手に訴訟にたちあがた297名の闘争団員・家族の苦闘がやっと風穴をあけた。これを反撃の足がかりとして国労本体の再生ができるか否か、すべての国労組合員に問われている。
(門奈 ) 2005.9.16記