浜岡プルサーマル計画は危険な「核実験」

 2005・10・15浜松集会山崎久隆さん(たんぽぽ舎)の話の要約

●プルサーマル計画とは  

「プルサーマル」とは造語で、プルトニウム+サーマル=プルサーマルのことです。

プルトニウムを熱中性子炉(サーマルリアクター)つまり一般の原発で燃やすという意味なのです。本来、プルトニウムは「もんじゅ」のような高速中性子炉で燃やすはずだったのですが、1995年のもんじゅの事故により、プルサーマル燃料(略称「MOX燃料」)を使おうとしているわけです。

 MOXとは、プルトニウム・ウラニウム・ミックス・オキサイド燃料、つまりプルトニウムとウラニウムの混合酸化物燃料の意味です。これでは、ほとんど意味がわからないため、モックス燃料と呼ぶようになったのです。それでもやっぱり意味がわからない。単にプルトニウム燃料と言えばよいのです。

 現在世界で進められようとしている「プルサーマル計画」とは、プルトニウム燃焼計画のことです。これは、資源エネルギー的な意味はほとんどなく、核兵器の材料となるプルトニウムを燃焼処分するための「核のゴミ処理計画」に他ならなりません。

米ロは核兵器から取り出した余剰プルトニウムの燃焼処分計画としてプルサーマル計画を進めています。それぞれが、核兵器から分離したプルトニウムを34トンずつ燃やす計画を2002年に決定したのですが、まだ開始されていません。

ここでのポイントは、核兵器から取りだしたプルトニウムをウラニウムと混ぜて原子炉で燃焼させることです。ここでは、再び核兵器用プルトニウムとして分離抽出が不可能となるという点に重点が置かれているのであり、燃やしてエネルギーを取り出すことを目的としてはいないのです。日本の使用済燃料再処理を請け負っている英国では、自らはプルトニウムを使う計画はありません。将来は固化処分か米国のように炉で照射することになるでしょう。

 もともと原発からのプルトニウムは核兵器には向かないのです。プルトニウムとウランを混ぜて燃やす、つまりプルサーマルを行うことが、核不拡散上重要であるということにもならないのです。プルサーマル計画は、安全保障上も百害あって一利なしなのです。

 商業用原発の使用済核燃料を再処理すると必然的に発生するのが分離されたプルトニウムですが、これは国際機関の監視下(IAEAで良いかどうかは議論の余地があるところですが)に置かれるべきものです。日本も毎年、IAEAの数多くの査察を受けていますが、それだけでなく「使うあてのない」プルトニウム抽出を長年行い続け、既に日本帰属のプルトニウムは40トン以上も英仏再処理工場内にたまっているのです。

 プルサーマル計画を進める前に、これ以上余剰プルトニウムを分離しないことが先決です。2006年に六ヶ所再処理工場の操業を開始し、施設を放射能汚染するなかで、プルトニウムを取り出す、などは論外と言わなければならないのです。

●プルサーマル計画の経過

ここでこれまでの経過をみておきます。

199512月に高速憎殖炉「もんじゅ」の事故がおきました。そのため、核燃料サイクルが止まることになりました。そこで1997年1月、原子力委員会がプルサーマル計画推進を決定したのです。出発は政治的な押し付けからです。2月には電気事業連合会が実施計画を公表しました。

1999年6月、関電では福井県知事が高浜原発(関西電力)でのプルサーマル受け入れを表明しますが、9月、BNFL製の高浜3号機用MOX燃料でデータねつ造が発覚しました。10月、さらに高浜原発4号機用のMOX燃料が搬入されますが、12月にはBNFL製高浜4号機用燃料のデータねつ造が発覚し、同月、関西電力はプルサーマル実施を延期せざるをえませんでした。

東電では9月、福島第一原発にMOX燃料搬入されますが、9月、茨城県東海村のJCOで臨界事故がおきます。この事故は高速増殖炉「常陽」の燃料を製造していたときに起きたのです。2001年3月には、東電柏崎刈羽原発にMOX燃料が搬入されますが、5月、新潟県刈羽村でのプルサーマルの是非を問う住民投票で反対が多数を占め、プルサーマルにNO!の意思を示したのです。2002年4月、原子力安全委員会は「ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料加工施設安全審査指針」決定しましたが、8月、東京電力の大規模な事故隠しが発覚、9月にはいると、新潟県、柏崎市、刈羽村はプルサーマル事前了解を取り消し、福島県知事はプルサーマルの白紙撤回を表明したのです。東電も実施ができなくなりました。

新潟県原子力安全対策課HPには、「平成14年8月29日に発覚した東京電力による自主点検不正により、事前了解の前提である信頼関係が著しく損なわれたとして、9月12日、新潟県、柏崎市、刈羽村は事前了解を取り消すこととしました(新潟県、刈羽村は13日付け、柏崎市は18日付けで通知)」とあります。

しかし、プルサーマルにむけての動きは2004年にはいると、3月、福井県知事が高浜原発でのブルサーマル計画再開を了承、5月、四国電力が愛媛県と伊方町に対し伊方原発3号機でプルサーマルを実施するための事前協議申し入れ、と続きます。四国電力の計画では2006年までにMOX燃料の製造を依頼し、2009年までに導入とあります。

2005年9月12日には中国電力が松江市と島根県に、トラブルが相次ぐ島根原発2号機でのプルサーマル導入の申入れを行いました。九州でも動きが見られます。

このようななかで浜岡1号機の配管爆発事故でとまっていた中電のプルサーマル導入の動きがあります。2005年9月13日、中部電力は4号機でのプルサーマル導入方針を静岡県と御前崎市に説明したのです。開始は2010年度からといいます。

●プルサーマル計画の危険性

プルトニウムの燃料としての使用は危険です。それは宣伝されているような「リサイクル」ではありません。再処理では1パーセントのプルトニウムを取り出すだけで、ウランは捨てることになり、再処理費用のほうが割高です。燃料も3年ほどで使えなくなります。MOX燃料は再利用されません。

問題点をあげれば、以下をあげることができます。

[1]核暴走しやすいプルトニウムが大事故の確率を高める

[2]事故発生時(地震や異常な過渡変化時)に制御棒の停止能力が低下する

[3]燃料棒の破損が炉心溶融事故を起こしやすい

[4]原子炉が破壊された場合、ウラン燃料よりも多くの放射性物質を放出する

[5]核分裂生成物や放射性廃棄物の量が増え環境を汚染する

[6]核拡散防止上も大きな問題を引き起こす

[7]輸送事故が起きると大災害となる