2006・5 小出裕章さんの浜松での話

「原子力が抱える危険〜お金と引き換えに売り渡すもの」

2006年513日(土)浜松市のアクトシティで「原発震災を防ぐにはPART2」小出裕章さん〔京都大〕「原子力が抱える危険」古本宗充さん〔名古屋大〕「東海・南海地震による地震動と津波」の講演がもたれ70人が参加した。主催は子供たちの生命と健康を守る会。中電にも講師として出席を求めたが、中電は参加を断った。

古本宗充さんは講演で地震の際に激しい地震波を出す部分(アスペリティー)が浜岡の近くにまで広がっているとみる研究状況を紹介し、津波が起きれば6メートル程度まで海面が上昇し、その後では6メートル程度下がるという状況になるとした。原発はこのアスペリティや海面の上昇下降に耐えられる構造であるべきという。小出裕章さんは原子力の成り立ちと問題点を提示し、原子力と引き換えに平和に生きようとする心を失っていく現状を批判した。

 ここでは小出裕章さんの話「原子力が抱える危険〜お金と引き換えに売り渡すもの」を中心にまとめておきたい。なお、小出さんたちの研究は原子力安全研究グループのHPhttp://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/ に紹介されている。

以下は浜松での講演の要約である。

●原子力と死の灰

 原子力とは難しいようですが、お湯を沸かしている装置なのです。その湯気でタービンを回し、発電するのです。原子力の燃料を燃やすと核分裂生成物〔死の灰〕ができます。死の灰を出さずに核分裂はできません。ここに原子力が抱える危険の根源があります。100万キロワットの原発では年間約1トンのウランを燃やします。広島原爆でのウランが800グラムでしたから、100発分を超えるのです。それだけ死の灰が出るのです。

 ●破局的な事故被害

 日本は世界有数の地震国です。兵庫県南部地震はマグ二チュード73でしたが、これは広島原爆82発分のエネルギーに相当します。東海地震ではマグニチュード8から8・5と推定されていますが、そのエネルギーは広島原爆の9205200発に相当します。この東海地震の想定震源域に浜岡原発があります。国も電力会社も安全といいますが、これまで事故があると「予想を超えた事態」と言ってきました。

 チェルノブイリの事故をみると被害は破局的です。放出されたセシウム137の量は広島原爆の800発分になります。本州の6倍の面積となる145000キロ平方メートルが放射線の管理指定区域にしなければならないほどの汚染です。そのうち特に汚染の激しい地域〔15キューリー/平方キロメートル〕では40万人を超える人々が避難しました。ほかの危険地域の500万人はまだ避難していないのです。

 浜岡で事故があれば、放射能の雲が東京などの人口集中地域を襲った場合には、人々が一週間以内に汚染地域から避難できたとしても190万人がガンで死ぬことになります。5年後に避難するとすれば510万人もの人々が犠牲になります。

 ●増加する死の灰

 破局的な事故が起きないとしても、核分裂生成物の量はこの40年間で広島原爆が撒き散らした量の100万発分に匹敵します。このごみは100万年間隔離しなければなりません。地底に100万年も閉じ込めておくことができるでしょうか。ウランは石油や石炭と比べて貧弱な資源です。このウランは100年ほどでなくなるとみられます。それを使っての発電によって出る廃棄物は100万年も管理しなければならないのです。

 ●原子力の正体

アメリカはマンハッタン計画という原爆製造計画をすすめました。天然ウランの中には核分裂性のウラン〔ウラン235〕はわずか07パーセントしかありません。そのために濃縮が必要です。そのために多大なエネルギーが必要となるため、プルトニウムを材料としての原爆製作がすすめられました。原子炉でウランを燃やすと発生した中性子が燃えないウラン〔ウラン238〕に衝突しプルトニウム239となります。このプルトニウムを再処理して取りだし原爆に使おうというのです。もともと原子炉はプルトニウムを取り出すために作られたのです。濃縮や再処理も原爆製造用に開発されてきました。

 最近アメリカはイランや朝鮮の核開発を非難していますが、アメリカ自身が世界最大の核兵器保有国であり、日本も非核兵器保有国で唯一原子炉・濃縮・再処理を備えています。

 ●再処理とプルサーマルの危険

使用済み核燃料には燃え残りのウラン、核分裂生成物、プルトニウムが渾然一体になっていますが、ここからプルト二ウムを分離するのが再処理工場です。六ケ所村で始められた再処理工場では年間800トン分の使用済み燃料を処理する計画です。それは原発約30基が1年間に生み出す量に当たります。

もともとウラン資源は貧弱ですから、プルト二ウムを利用しないと原子力はエネルギー資源になりません。しかし高速増殖炉もんじゅは事故で止まっています。日本にはプルト二ウムが43トンもあります。これは長崎型原爆が2000発以上作れる量です。ですから日本はこのプルト二ウムを始末しなければならなくなり、プルサーマルをはじめようとしています。しかし経済合理性がなく、環境汚染をもたらします。破綻するでしょう。

現在では日本では電力の30パーセントを原子力が供給していますが、原発の稼働率を上げ火力をほとんど停止させてのことです。火力で電力の供給はでき、原子力を廃絶しても電力に困らないのです。

●原子力を利用して失っていく平和の心

原子力がすすめられていく理由には、1個別電力会社の利益、2産業総体の利益〔三菱・日立・東芝など〕、3国家の意思〔核技術や核開発〕、4補助金交付をあてにする地方自治体 などがあるでしょう。金儲け、利潤、交付金などと引き換えに、わたしたちは巨大事故の恐怖と放射能のごみを引き受けることになるのです。また世界の平和を失います。なによりも自立して平和に真っ当に生きようとする心を失うのです。

 

 

                      文責 人権平和浜松