2004年8月29日集会 午後1時〜5時
ふしみやビル4F(静岡市青葉公園よこ)
●午後1時〜午後4時
      講演:塩沢忠和弁護士(違憲裁判静岡弁護団)
          「全国の違憲裁判と静岡訴訟」
      各地からの報告
          山梨から:「派兵は決定的違憲」山梨市民訴訟の会
●午後4時〜静岡市内平和行進


 8月29日、静岡市・ふしみやビルにおいて、イラク自衛隊派兵違憲訴訟裁判の会・静岡の主催で、「8・29市民平和集会」が開催され、約50名が参加しました。桜井規順さん主催者あいさつの後、事務局長の森さんから「イラク侵略戦争の現在」について、サマワの復興支援は民間パワーによるものであり、自衛隊の存在はかえって治安を不安にしている。との基調報告がありました。続いて、違憲裁判静岡弁護団の塩沢弁護士より、裁判は、「出来る限り幅広く、楽しく、生き生きと」やり、たとえば、原告側意見陳述に現地イラク人を採用したり、原告でイラク現地に赴くなど、工夫が必要。裁判所はいかに早く結審させようとしていることに対して様々な対応をすべきである。など、わかりやすい説明がありました。
 引き続き、山梨訴訟原告・甲府平和を語る会・田中さんより連帯あいさつ。中川・静岡原告団決意表明の後、雨のなか、ピースウォークを行い、「米軍、自衛隊はイラクから撤退せよ」「沖縄ヘリ墜落事故弾劾」などを市民にアピールしました。

   10月1日第1回弁論 
   原告の主張

1.本件イラク派兵の違憲・違法性について。
 まず、本件イラク派兵は、日本国憲法第9条に違反。
日本国憲法第9条は、その第1項において、「戦争を放棄」し、戦争に至らない「武力行使」「武力による威嚇」をも禁じている。そして、第2項では、第1項でかかげた戦争をしないという目的のために、国が「陸海空軍その他の戦力」を保持しないこと、交戦権をも認めないことを規定し、国に対し、戦争のための実力を持つこと、戦争を行う法的権利が認められないことを規定している。
 この憲法第9条の解釈に関して、これまで、歴代内閣は、「自衛」のための「必要最小限度の実力」を持つことは、憲法第9条に違反しないとの解釈をとってきた。しかし、本件イラク派兵は、他国による日本への武力攻撃、侵略行為がないのにもかかわらず、自衛隊が自ら外国の領土に出向いて行って、「武力の行使」をする結果となるもので、自衛の範囲を超える点で、憲法第9条に違反することは明白。

2.次に、政府は、本件のイラク派兵は、「国際協力」「復興支援」を行うものであるから、「武力の行使」に該当せず、憲法第9条に違反しないと主張している。
 イラク派兵の目的そのものが「人道復興支援活動」であったとしても、その人道復興援活動を行っている際に起こりうる「武器の使用」も武力行使に該当することは明らか。こ点、政府は、憲法が禁ずる「武力行使」と正当防衛による武器使用は異なると主張するが、この区別は実際には曖昧で、区別することは不可能だ。自衛隊による部隊としての武器使用の可能性を認めた派遣である限り、それは憲法の禁じる武力行使に該当することは明らか。

3.さらに、本件イラク派兵は、憲法の禁止する「交戦権の行使」にも該当する。
 この「交戦権」の意味につき、政府自身は「相手国の領土の占領、そこにおける占領行政」に加担することも交戦権の行使に当たると説明。そして、本件イラク派兵において、自衛隊はイラクでCPAの指揮下に入り、占領軍の一員として、占領支配の一翼を担い、イラクの領土の占領行政に加担している。本件イラク派兵が交戦権の行使に該当し、憲法第9条2項に違反することは明らか。

4.本件イラク派兵は、国連憲章に違反し、憲法第9条の趣旨にも違反している。
 国連憲章は、言語に絶する悲哀を人類に与えた二度にわたる世界大戦を始めとする戦争の惨害から、将来の世代を救うという決意を宣言し、国連加盟国に対し、如何なる方法による武力の威嚇、行使を慎むべきことを命じている。この例外として認められるのは、国連憲章第7条による集団措置としてなされる武力行使と「武力攻撃が発生した場合」の個別的・集団的自衛権の行使としての武力行使の二つの場合に限られる。
 しかし、この度の米英によるイラク攻撃は、安全保障理事会の決定に基づいておらずまた、米英等に対するイラクの武力攻撃に対する自衛権の行使にも当たらず、武力行使が許される二つの例外的場合に該当しないことは明白。したがって、この度の米英等によるイラクの軍事占領は、国際法上達法な「侵略行為」に当たり、その米英主導のCPA指揮下で、軍事占領に加担する自衛隊の行為それ自体も「侵略行為」「占領」に他ならない。憲法第9条は、このような国際憲章の理念
を具現化したもので、この理念に反する本件イラク派兵が塞法第9条の趣旨に反することは明らか。国連加盟国の内、フランス、ドイツ、ロシア、中国等、圧倒的多数の国がイラク占領に加担しない立場に立っており、こられの国々と同じ立場に立って、暴力による支配の過ちを訴えてゆくことこそ、日本が国連憲章を尊重し、国際協調主義のもと、真の国際貢献と国際平和のために進むべき道と言えるのではないか?


5.次いで、本件イラク派兵が、イラク特措法に違反している点について述べる。イラク特措法第2条3項は「現に戦闘が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域においてのみ、自衛隊の活動を実施できる旨定めている。
 しかし、すでにイラク国内全土が戦闘状態にあることは公知の事実。自衛隊の駐留するサマワも、オランダ軍と民兵組織との交戦が行われる等しており、その例外ではない。したがって、憲法第9条違反はさて置くとしても、本件イラク派兵は、その法的根拠となっているイラク特措法に規定される「非戦闘地域」の要件を充足しておらず、その違法性は明白。

  国側「答弁書」
「平和的生存権」を「争訴性なし」と全面否定!

 10月1日、第一回法廷(口頭弁論)に際して、国側から「答弁書」が提出された。5月26日提出した私たちの「訴状」に対する「回答」である。全80ページの内おおよそ2/3が、自分に都合のよい判例(平和的生存権を否定した過去の判決)を証拠として提示し、残り1/3でそれらを説明(主張)するというものであり、当然ではあるが、名古屋、札幌をはじめ他地域の答弁書とほとんど同じ内容となっている。以下その内容を要約して報告する。なお、12月10日の第二回法廷で、原告側弁護団によるこの答弁書への「反論書」が提出される

■国側の主張は要約すると次の2点である。

一点は、「原告らの『自衛隊派遣によって、戦争や武力行使をしない平和な日本に生存する権利=平和的生存権が侵害された』との主張は、裁判に値する具体的・法律的な争訟性=紛争性がないので却下されるべきである」つまり『門前払い』すべきである。
二点は、「賠償請求するには、現実に損害が発生していなければならないのに、自衛隊イラク派遣はそれ自体原告に向けられたものではないので、原告の利益を損害することはありえない」。したがって、損害賠償請求自体『失当』である。

1.原告の訴えは「争訟性なし」という点について。

 裁判所が審判することができる場合は、当事者間(原告と被告)に具体的な権利義務や法律関係の存否に関する紛争があって、かつ法令の適用により終局的に解決することができるもの、つまり、法律上の争訴性があるものに限られる。

@しかし、イラク自衛隊派遣は、原告たちに向けてなされたものではなく、具体的な権利義務や法律関係の存否になんら影響を与えおらず、原告個人の権利ないし、法律上の利益に直接の影響を及ぼしていない。
A裁判上で救済が得られる権利は、具体的・個別的権利でなければならないが、原告の主張する「平和的生存権」は、学説(二人の学者の著書を紹介)や判例(いくつかの判例と6個の判例を証拠提示)によっても、その権利は抽象的・不明確・不明瞭であり、きわめてあいまいなものである。「平和的生存権」の「平和」とは、理念ないし目的としての抽象的概念であって、その具体的な意味・内容を直接憲法前文から引き出すことは不可能である。それが、具体的訴訟での違法性の判断基準になるとは考えられず、「平和的生存権」は、ただ政治の面において平和理念の尊重が要請されることを意味するのみである。

2.損害賠償請求自体が「失当である」という点について。

@「平和的生存権」は、前記のとおり国民に保障された具体的な権利とは認められずまた、国家賠償法上保護された利益でもない。
A自衛隊イラク派遣はそれ自体原告に向けられたものではない。原告の利益を損害することはありえない。
B国家賠償法の損害賠償請求では、原告の利益が現実に侵害されたことが必要であり、侵害の危険性が発生しただけでは足りないところ、原告らは、現実に侵害が発生したことについて何ら主張していない。以上から主張自体失当である。
 以上がまず出された国側の主張である。総じて“争訟性なし”のこのハードルを私たちも何とかクリアーしなければならない。弁護団は今、この論理を打ち崩すべ「法理論的」立場から反論書を準備している。
 私たちは私たち原告のそれぞれの立場から“人間論的”肉声でもって大反論を行なっていこうと考えています。ぜひ反論・異論を寄せてください。