イラク反戦日誌9
米艦の港湾利用とミサイル軍拡

                        

●リンカーン空母群の日本寄港

米軍再配置は東アジアでは朝鮮北部を占領し中国を封じ込めるかたちですすんでいる。この再配置は二〇〇六年に入って日本各地への米艦の寄港の増加とミサイル防衛の進行、米軍再編の日米合意の提示の形となってあらわれている。

リンカーン空母群は三月末に米韓共同訓練をおこない、五月下旬日本各地に寄港した。佐世保にはリンカーンが、横須賀にモービルベイ、宿毛にラッセルが、清水港にシャウプがそれぞれ寄港した。

今回佐世保では抗議船団に警備艇が銃口を向けて威嚇し、自衛隊の艦船が抗議船団を妨害するように割り込んできた。

「親善」を口実に入港し、清水では海岸の清掃などもおこなったが、宿毛でのラッセルの艦長が言うように、入港はアメリカの東アジアへの「コミット」を示すものであり、それは日本とともに「オペレーション」(作戦)することである。ここでは米韓共同訓練で示されたように朝鮮での戦争が想定されている。

●浜松基地のAWACSの動きとPAC3配備計画

静岡県中部にある清水港には日米ガイドライン安保にともない一九九〇年代末から米艦が入港するようになった。県東部にある御殿場の東富士演習場では日米共同訓練がおこなわれ、米海兵隊による沖縄一〇四訓練も繰り返しおこなわれてきた。御殿場の陸自はイラクへも派兵された。

県西部の航空自衛隊浜松基地には一九九八年・九九年に空中警戒管制機(AWACS)が計四機配備され、二〇〇〇年にはAWACSが日米共同訓練に参加し、その後グアムやアラスカに派兵されて共同訓練をおこなうようになった。またAWACSは米軍空中給油機から日本の軍用機への給油訓練を管制し、朝鮮有事の監視にも使われるようになった。AWACSからの情報から戦争がすすめられることになる。AWACSは日米の軍事的共同作戦を象徴している。浜松基地からのイラクへの派兵も一〇数次にわたっておこなわれてきた。

米軍再配置では横田基地での日米の空の軍事的共同作戦司令部の設置がねらわれている。この軍事統合は「ミサイル防衛」をテコにすすんでいる。浜松基地にも教育整備用にPAC3が配備されようとしている。この配備を防衛庁側は「PAC2の改良」と自治体側に説明している。かつてAWACSを配備するときに、防衛庁は「AWACSに武装はない」と記したが、このような詭弁がここでも使われている。

アメリカのミサイル防衛に日本を組み込んでいくため、青森への]バンドレーダーの配備、米軍嘉手納基地へのPAC3配備、イージス艦のSM3実験などがすすめられている。ミサイル防衛(MD)はアメリカの侵略戦争(先制攻撃)の盾であり、このMD構築はアジアでのミサイル軍拡を生んでいく。アメリカの宇宙空間を支配しての戦争とミサイル網に日本が組み込まれることが、宇宙の平和利用や憲法の平和主義の否定につながっていく。

●朝鮮のミサイルと経済制裁

 このような米艦船群の日本寄港とミサイル配備がすすむなかで、七月五日に朝鮮側は弾道ミサイルなどを発射し、それを契機に日本側は「経済制裁」を発動した。この経済制裁は戦争を前提とするものであり、特に在日朝鮮人への人権侵害を招くことにつながる。この相互のミサイル軍拡はアジアの平和を求める民衆運動の積み重ねに反するものである。

二〇〇〇年に入っての南北統一の動きの中で、日本は日朝の国交回復に動いたが、アメリカは核問題を出してこの動きを牽制し、日本の親米右派は過去の精算問題を反故にし、拉致問題を利用して国交正常化をすすめようとはしなかった。ブッシュ政権の誕生による戦争政策と軍拡のなかで、中国・朝鮮への敵対政策が強められ、日本では有事法制定がすすめられた。この戦争策動の結果が今回のミサイル発射と経済制裁の発動である。

ミサイルを口実にPAC3の配備も早められるという。報道にはないが、浜松のAWACSの朝鮮監視活動も強化されているだろう。ミサイルの発射された七月五日の夜、十一時五〇分ころ、浜松基地周辺にAWACSの逆噴射音が響いた。

わたしはこの音を、戦争への警鐘としてとらえなおしたい。憎しみを煽り、アジア人同士を殺しあわせ、利権を得てきた歴史を変えたいと思う。日本での朝鮮像は、日本の歴史認識の状況を鮮明に映しだしている。今ある戦争宣伝を読み解き、人間の尊厳の地平から、反軍・平和につながる表現を創っていきたいと思う。

                                                     (竹内)