イラク反戦日誌2
2003年9月23日

イラク派兵に関する討論会に参加する機会があった。以下さまざまな報告をもとに、現状と課題についてまとめてみた。                               

1 日本の参戦状況

 すでに日本は参戦しているが、この参戦は01年11月のインド洋への派遣からである。海上自衛隊による洋上給油はアフガン、イラク侵略に使われていった。病気などで自衛官2人が死亡している。小牧の航空自衛隊による米軍物資の輸送もおこなわれた。

 03年3月からのイラク戦争により、有事3法・イラク派兵法が成立し、小牧からC130がPKO法を利用して7月に派兵されていった。9月14日政府はイラクへ調査団を派遣し、3軍1000人の派兵にむけての調査に入った。「非戦闘地域」はなく、派兵の前提をクリアすることは難しい。10月中旬のブッシュの来日は、参戦支援、日本への派兵と資金の要求行動である。
 日本のイラク派兵は航空部隊のC130の派兵から始まり、04年に入って、北海道をはじめとする陸上部隊、呉や横須賀の海上部隊がつづくことになるとみられる。この派兵を空からAWACSが管制することになるだろう。
 政府は集団的自衛権行使を公然とおこない、反朝鮮キャンペーンのなか、「相手基地攻撃力」保有を語る議員らの力が強くなっている。しかし、日本の世論はイラクの派兵への反対が多数である。自衛官自身にも派兵への戸惑いが高まりつつあるといえるだろう。

2 イラク情勢
 イラク攻撃の口実のうそがあきらかになり、占領政策の軍事的、財政的危機が訪れている。攻撃の理由とされた大量破壊兵器は発見されず、イラクによるテロ支援は証明されていない。フセイン政権の崩壊がイラク全土でのゲリラ戦化をもたらし、5・1の戦闘終結宣言以降、米兵の死傷者が増加した。
 またイラク民衆への殺戮、イラクの文化財の略奪、劣化ウランによる被爆状況などが明らかになってきた。ネオコンの理論の破綻とその影響力は低下しつつあり、米家族による兵士の帰還運動も形成されてきた。各国でアメリカの要請による派兵に対し、反対の声が強まっている。米兵の死傷者の増加、占領の長期化による兵士の疲労と経費の増加、早期撤兵要求などイラク占領の継続は、米英政権の危機を生んでいる。

3 有事法・憲法改悪の動き

 9月の臨時国会ではテロ特措法の2年延長が狙われている。それによって派兵されている海上部隊はイージス艦による情報収集と攻撃のための給油をおこなっていくことにもなるだろう。
 選挙後の通常国会には、「国民保護」法制、米軍支援法、自衛隊行動の円滑法、捕虜処遇法、非人道的行為処罰法などの有事関連5法、また恒久派兵法などが提出されようとしている。また、教育基本法の改悪法案や憲法改悪のための国民投票法なども出される方向である。

4 イラク反戦運動
 1000万人に及んだという世界的反戦運動の高揚は21世紀が反戦平和の声が社会的正義を獲得する時代の幕開けであることを実感させた。世界各地で戦争が続いているけれども、アジアでの平和を求めてAPAが結成された。そこでは家父長制と軍事化の関係が問われるなど平和に向けての活発な論議がおこなわれている。
「もうひとつの世界は可能だ」と世界社会フォーラムも開催され、反グローバリゼーションと反戦とが結びつき、ボンベイでの世界平和の会議も予定されている。そこでは反基地の会議ももたれるだろう。さまざまなイニシアによる行動の呼びかけがあり、反米軍基地の世界連合結成についてのものもある。世界的な反基地の思想と運動の潮流が形成されようとしている。社会フォーラムの日本版も求められる。
 韓国ではアメリカに依存し北を敵視してきた人々の意識の歴史的転換がすすんでいる。運動の分散的状況をまとめる枠組みが形成され、韓国社会を揺り動かすようになった。戦争の脅威は北よりアメリカとの認識が共有されてきた。イラク派兵反対運動がつくられ、国会議員の反戦平和のネットも結成された。韓国社会の変革に向けて今年の11月の労働者大会は全国民衆の大会ともなり、3・1独立記念日は平和への万歳の日となっていくだろう。
 このように世界で反戦運動が展開されているが、日本の動きを見ると、金沢の「大東亜聖戦大碑」などに見られるように過去の戦争を賛美する動き、拉致事件を口実に朝鮮排外主義を煽り、軍拡・派兵をすすめる動きが進んでいる。日米共同での陸上部隊のテロ・ゲリラ戦訓練、富士での訓練基地建設など派兵に対応するような動きもすすんでいる。イラク反戦のみならずこのような戦争国家が問われている。イラクでのウラン弾の被爆を含めて被爆60年を問い直すことも必要である。


5 イラク派兵を止める市民の共同の試みのために

 イラク派兵と戦争を止めるためにできることは何か。いくつかあげてまとめてみよう。
T イラクへの派兵拠点での反派兵アピール
 今回の派兵は1000人規模の3軍の派兵である。派兵基地となる現場での派兵中止の申し入れや抗議行動が必要である。
 イラク戦争は侵略戦争であり、そこに日本が参戦することは憲法違反であり、平和と人道に反する行為である。自衛官への呼びかけも求められる。全国の市民が共同して派兵を止める行動に参加することが望まれる。

U 自治体の平和力を引き出す

  地方自治の本旨は市民の尊厳の尊重と安全の確保であり、そのための平和的自治である。戦争への動員ではなく、平和的自治への方向を示すべきである。新ガイドラインや有事法、イラク戦争に反対・慎重の決議をあげた自治体をおおい。この経過を踏まえ、自治体がイラク派兵や占領に反対する決議や意見書をあげていくことが望まれる。

V 自衛官や家族へのよびかけ

 戦争に動員される自衛官の中には「こんなはずではなかった」「イラクまで行く必要があるのか」「だまされている」「被爆地帯への動員では」「安全であるわけがない」との思いがあるはずである。「戦争に行くな!」「殺すな!」「死ぬな!」の呼びかけをおこない、派兵に反対する市民の思いを伝えるとともに、隊内の人権侵害や家族の相談にもきちんと対応する力がほしい。イラク派兵が非道な侵略戦争への加担であることは日毎にあきらかになってきている。アメリカでは兵士の帰還運動が形成されている。派兵されても粘り強く撤兵を求めていくことができる。 
 さまざまな呼びかけが可能である。イラク攻撃を支持する思考に対し、それを支える骨格が崩れるような問いを発したい。イラクがアメリカを侵略したのか、大量破壊兵器があったのか、9・11テロに参加したイラク人はなかったこと、イラクとアルカイダの関係はないこと、「先制攻撃」とは侵略であること、国際司法裁判による法廷での処罰こそ必要なこと、侵略が戦争犯罪であること、それへの加担もまた犯罪であること、戦争で被害を受けているのはイラクの民衆であること、米軍の戦死者が単婚の母親・移民の子弟・マイノリティーの人種に多いこと、支配者が巧みな言葉で民衆を戦争に動員していること、人道に反する行為に服従する必要はなにもないこと、など反戦平和にむけて語っていくことができる。

W 有事関連5法・憲法改悪を止めるために

 「国民保護」というもののその本質は国民動員である。自治体レベルでもすでに「保護」の先取りの形で避難計画を組み込んでいるところもある。情報交換をすすめ、有事法の増殖を一つ一つ止めていきたい。自治体への現状調査、申し入れなどがもとめられる。改憲反対の広範な署名運動もある。国民投票で改悪を止めることのできる横断的つながりが求められる。国会への共同行動も必要になってくる。

X イラク派兵に反対する意見広告

  全国の派兵反対の声を集め意見広告の形で出す。これまでの動きがあり、全国の市民・市民団体が呼びかけ団体となることでひとつの共同運動となればいい。 

Y 国際的な反基地・反戦の国際的ネットワークの形成
 
 10・25には世界反戦行動の呼びかけがある。それに際し、共同の声明を韓国と日本の市民団体が共同してあげていくこともできる。これまでの交流の蓄積があり、朝鮮を戦場にしない取り組みを含め、日韓の国際的な共同行動も必要である。
 またAPA・JAPANなどの活動などにつながり、メーリングリストを作っていくことも求められる。地域・県レベルでの反戦のネット作り、全国的な共同行動の組織や計画もそれに併行して求められている。

 以上、さまざまの議論から考えたことをまとめてみた。平和に向けて、できることから一つ一つ取り組んでいくことができればと思う。