2000年9月の動向
資料 浜松市による野宿者排除への抗議と排除中止の要求
全国の皆様
浜松市による田町駐輪場からの野宿者排除に対する抗議と中止要請へのお願い
マウス・ウニダス、エスペランサ(浜松市)
野宿者のための静岡パトロール(静岡市)
わたしたちはそれぞれ浜松市、静岡市内で野宿者の支援活動を行っているグループです。
9月19日、浜松市土木管理課は、田町駐輪場で野宿する10名ほどの方に対して、警察立ち会いのもと、強制排除を行おうとしています。これは野宿者に対する憲法に違反した著しい人権侵害に他なりません。浜松市は野宿者に対して憲法および生活保護法上義務づけられている最低生活保障の責務を果たそうとしないばかりか、生きるために最低限欠かせない寝場所からさえ、野宿者を強制的に追い出そうとしているのです。わたしたちは9月13日(水)10時より浜松市土木管理課に対して、野宿者の人権を著しく侵害する強制排除を中止するよう要請に行きます。
浜松市による田町駐輪場からの野宿者強制排除への抗議と排除中止の意見表明に是非ご協力ください。
事実経過
田町駐輪場は、現在24時間出入り自由となっており、午後10時過ぎから午前6時まで、約10名の野宿者が寝泊まりしています。ところが先日、9月6日付けで、浜松市役所土木管理課が田町駐輪場に「警告書」および「駐輪場利用者の皆様へ」(と称するお知らせ)を掲示しました。
「警告書」には、「田町駐輪場で寝起きしている方は直ちに退去するとともに所有荷物を撤去するよう警告します」と記載されており、また「駐輪場利用者の皆様へ」には、「管理の都合により、9月19日から当分の間、開場時間を午後7時から午後10時までとさせてただきます。午後10時から翌朝7時までは出入りできなくなりますので、ご注意ください」と記載されていました。
野宿者排除の動きは今年6月にもあり、「警告書」が一方的に、当事者に何の説明もなく張り出され、退去を命じられました。そこで当事者3名と支援者2名で浜松市土木管理課に対して、野宿者の窮状を訴え、強制排除を中止するよう要請し、寝泊まりを続けることへの理解を求めました。それによって6月の排除は中止されたのですが、今回また排除を企ててきたのです。
浜松の支援者が7日朝、土木管理課に電話をして排除の件について話し合いを求めたところ、課長補佐Nは「話をする必要はない」「建造物不法侵入にも当たる。19日には、警察にも立ち会ってもらい、撤去を行う」と言いました。これに対し、支援者が土木管理課に「駐輪場から出されても行くところがないので、寝泊まりできる場を提供してほしい」と野宿者の希望を伝えましたが、「その件は生活福祉課に相談を」というだけでした。
生活福祉課課長は「寝泊まりできる場所の提供は」無理だと、自らの義務を全く持って履行しようとしない無責任な態度をとっています。
わたしたちの見解
憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しており、生活保護法は生活に困窮する人々に無差別平等に必要な保護を与える義務を国に課しています。
特に住むところも無く、日々の食事にも事欠く野宿状態は、生活保護法25条が定める「急迫した状況」であって、行政は「すみやかに、職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない」はずです。
にもかかわらず、行政は住むところもないほど困窮している野宿者に対しては、生活保護を申請させずに追い払い保護から排除するといったことすら日常的に行っています。これは生活保護法が定める生活保護申請権を侵害し、無差別平等の原則に明確に違反するものです(生活保護法2条)。
住む家も無く野宿をせざるを得ない人々がいるということ自体、行政の憲法や生活保護法に違反する不作為によって作り出されているものなのです。
行政が住居を保障しないからこそ、やむなく公園や路上など公共施設で野宿せざるを得ないでいる人々を、ようやく見つけた寝場所からさえ強制的に排除することは、二重の違法行為であるといわざるを得ません。公共施設等での野宿は行政の違法な不作為から自らの権利を守るためにとっている緊急避難であり、民事上も刑事上も免責されるべきものです。
浜松市が今回野宿する当事者に説明もなく一方的な排除を通告してきたことは、もちろん非難されるべきものです。また、駐輪場の利用者に対して何ら説明なしに一方的に利用時間の制限を行うことも、地域住民の利益を無視したものであって許し難いことです。
浜松市は野宿者に対する強制排除を即刻中止し、野宿者に対して住居を提供するなど法に定められた適切かつ抜本的な対策をとるべきです。
浜松市長 殿
マウス・ウニダス、エスペランサ
野宿者のための静岡パトロール
浜松市は土木管理課名にて、田町駐輪場(以下同駐輪場)に9月6日付けの警告書を掲示し、「田町駐輪場で寝起きしている方は直ちに退去するとともに所有荷物を撤去するよう警告します」と通知し、また同日付け「駐輪場利用者の皆様へ」にて「管理の都合により、9月19日から当分の間、開場時間を午後7時から午後10時までとさせてただきます。午後10時から翌朝7時までは出入りできなくなりますので、ご注意ください」と通知しました。
これは、同駐輪場にて野宿を強いられている人々から寝起きする場所を奪い去る強制排除に他ならず、野宿者の人権を著しく侵害する違憲かつ違法な行為です。即刻、退去強要およ荷物の撤去予定を撤回し、また駐輪場の利用時間の制限を行わないように要望します。
そもそも駐輪場等本来人の住居として適切ではない場所で少なからぬ人々が野宿せざるを得ないのは、憲法および生活保護法により「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障すべき義務を負う浜松市が、その責務を適切に果たしていないからに他なりません。
住むところも無く、日々の食事にも事欠くほど生活に困窮し、野宿をせざるを得ない状態は、生活保護法25条が定める「急迫した状況」であって、保護実施機関は「すみやかに、職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない」はずです。生活保護法は、住居がない生活困窮者には住宅扶助を現金または現物によって行い、住居を保障する義務を保護実施機関に課しています。法により定められた義務を果たさず、多くの人々に野宿を強いているのは、浜松市に他なりません。
これはまさに正当防衛または緊急避難に他なりません(民法720条、刑法37条)。したがって、駐輪場における野宿は民事上も刑事上も免責されるものです。自ら実施すべき義務を履行せずに野宿を強いている人々に対してさらに駐輪場からの排除を行うのは二重の違法行為であるといわざるを得ません。
国が「ホームレス自立支援事業」に着手したのも、野宿する人々を公共施設から強制的に立ち退かせるだけでは、全く問題の解決にならないことを自覚したからに他なりません。日本政府を含む53カ国の全会一致で決定された1993年の国際人権規約委員会決議においても、「強制立ち退き」は人権に対する重大な侵害であることが明記されています。
駐輪場からの野宿者排除の理由については、残念ながらお知らせいただいておりませんが、もし仮にこれが駐輪場利用者の便宜のためということであれば、利用者に何の説明もなく、駐輪場の利用時間を制限するのは全くもって奇異なことです。利用制限の趣旨も明らかでなく、一方的な掲示による実施も手続き上大きな問題があろうかと思います。
駐輪場利用者の便宜を図るのであれば、駐輪場に野宿する人々に適切な保護措置を講じて住居を保障し、自主的に退去できる条件を整備すればよいはずです。憲法および生活保護法が定める無差別平等な最低生活保障を野宿する人々に対して行えば住民の利益も守られることは明らかです。
ところが、今回は、住居も保障せずに野宿者を駐輪場から排除しようというもので、しかも利用者に対しても理由無く利用制限を強いており、野宿者の権利侵害に止まらず利用者の権利侵害を行うものともなっています。
重ねて、田町駐輪場からの野宿者の排除および荷物の撤去方針を撤回し、本来果たすべき野宿者に対する最低生活保障措置、とりわけ生活保護法等による住居の保障を行うことを強く要望します。
なお、本要望書に対する回答は、文書にて9月18日(月)までに行うことを要求します。
要望事項