2001年12月13日,浜岡原発事故市民むけ説明会が静岡県小笠郡浜岡町にある中部電力浜岡原子力館でもたれ,40人あまりの市民が参加した。
説明会は会を仲介した国会議員,中電,浜岡原発を考える静岡ネットワークの代表のあいさつではじまり、中電が約30分間にわたり事故の概要を説明,その後1時間30分の間,質疑が持たれた。
参加した市民からは「水素爆発による配管破断の報道があるが本当か」「原因が究明されるまで1・2号機の運転の再開はしないでほしい」「東海地震がおきたとき浜岡原発は本当に大丈夫なのか」「再発防止についての説明がないではないか」「札束で人間の顔をたたくような原発推進はもうたくさんだ」「子育てをしていて放射能が怖い」「芦浜,海山で拒否され浜岡では事故の続発、中電は歴史に学び廃炉の方針を示すべき」「失われた安全性と遅れた連絡による中電への不信を回復するような説明ではない」「自治体からの抗議にこたえるような姿勢が見られない」等の意見や質問がつぎつぎと出された。
浜岡原発での事故については中電に対し周辺自治体からつぎつぎに抗議が寄せられている。11月12日浜岡町議会は抗議の意思を示し通報の遅れを「背信行為」として批判する文書をだし、11月16日には大須賀町と菊川町が報道機関から事故を知る事になった経過から「激憤に耐えない」という文言のはいった要請をおこない,同日、小笠町議会は老朽化による事故ならば「廃炉に」とする要求書を提出した。静岡県や浜岡町は1981年の安全協定締結以来はじめて「安全への県民の信頼を揺るがすもの」として原発内に立ち入り調査をおこなった。今回の説明会は住民への情報の公開や説明会の開催を求めてきた市民の主張にやっと中電がこたえて開催したものである。
事故の続発と連絡遅延により住民の中電への不信感はたかまり、自治体から廃炉の要求や「激憤」が示されるにいたっている。それは静岡県政初めての事態である。このような情勢にありながらも中電は当日おこなわれる予定のプレス発表の内容を市民説明会では示さず,「当社としては原子力発電をできるだけ動かしていきたい」との発言に終始した。今回の事故は原子力行政の転換点となるものである。中電の住民に対する姿勢の転換なくして信頼の回復はありえないといえるだろう。
12月13日の中電市民説明会は課題が明らかになったという意味ではよかったと思います。何回か中電側と話し合う場を持っていければいいと思います。
以下,この間の経過をまとめてみました。
■住民の不信が一気に高まり、自治体が廃炉を求めたり、強い怒りを示すようになったこと。
■そのような地域の怒りが2号機を止めていったこと。
■情報公開の声の高まり。
■それに対して,中電が不誠実に対応しつづけていること。
■とりわけ再発防止については原因究明ができないため言及できていないこと。
■県知事の対応も遅いこと。
■背後に国の原子力肯定の政策があること。
等が見えてきます。
1号機の廃炉については展望があるように思います。
原因究明,再発防止,情報公開をもとめ、当面の間1・2号機の運転を停止させ、廃炉に向けての
意思表示を進めていきましょう。
●浜岡原発1号機事故経過 2001年11〜12月
■11・7 午後5時ころ 一号機、非常用炉心冷却系(高圧注入系)での手動起動試験中に配
管が破断。中電は外部への放射能漏れはなく作業員の被爆はないとする。
午後5時40分ころ 中電火災報知機の作動を報告
午後6時20分手動停止へ
午後9時 配管の破断を通報
午後9時40分 中電記者会見・配管は7年前に交換したものとする
午後10時50分 放射能漏れを通報
国際評価尺度・暫定1
■11・8 1号機、6時完全停止へ
中電、浜岡町へと説明。助役、原因究明と再発防止を求める
現場を記者に公開
消防署、中電に火災報知機がなった段階での通報を指導
県知事、原因究明と再発防止を中電と産業相へ、県職員を現地へと派遣
中電、L字管に水がたまっていたことを示す
自民・公明党、原因究明と安全確保を要請
共産、1・2号機の廃炉、3・4号機の運転中止を要請
■11・9 浜岡町原子力委員会開催
浜岡原発安全等対策協議会(会長浜岡町長)開催、中電に事故調査と安全対策徹底を要請。
朝日新聞社説「古くなった装置の不安」
科学技術省、原因究明発言
浜岡町議会全員協議会で中電陳謝
浜岡原発を考える静岡ネット・浜岡町原発問題を考える会、知事と中電に1号機廃炉・原因究
明・情報提供地震前の原発の停止を要請。 社民党、愛知原発連絡センターなども申し入れ。
中電、大東町で町議・自治会長らに説明。
午後3時 1号機格納容器からの漏水発見。
午後11時30分 漏水を県自治体へと報告(8時間後)、国へは13時間後報告
■11・10 9時半、中電 漏水について記者会見。
小笠町で中電説明。町議ら、撤去が住民の声、プルサーマルをつづけるのか等と批判。
原子力安全・保安院調査チーム、県・浜岡原発へ。記者会見、破断は重大事故、
漏水については早い連絡を。
中電、浜岡町へと説明。
午後11時中電、名古屋本社で記者会見。
■11・11 保安院チーム浜岡町訪問、方針説明。町は中電への指導を要請、保安院は随時事
故説明を約束
■11・12 県立ち入り調査へ、81年の安全協定締結以来初めて。安全への県民の信頼を揺る
がすものとし、中電に点検を要請。
民主党県連、原子力安全委員会を設置、 社民党中電に申し入れ。
中電、相良町で説明会。
中電、浜岡町内会長会議で説明、現地佐倉をはじめ、安全性、効率追及の中電の姿勢に批判
の声。
浜岡町議会 原因究明・再発防止・総合点検実施などを要請、強く抗議し、通報の遅れを背信
行為として批判。
浜岡原発を考える静岡ネット,事故に対する質問状提出。
■11・13 浜岡町広報号外を発行
中電、漏水のVTRを公開
中電2号機の停止し点検へ(14日停止)
御前崎町、中電へと原因究明・点検を要請。
佐倉地区対策協議会、中電へ要請。
自民党国会議員視察
中電 配管を切断し事故調査へ(メーカー東芝とともに)
■11・14 共産・民主党国会議員視察
反原発きのこ会中電へと申し入れ 情報公開や脱原発スケジュール作成要求
浜岡原発1号機と同じ配管構造のもの、全国に14機あることが判明
■11・15 菊川町、原因究明・再発防止・周辺5町並みの通報連絡体制確立などを中電に要
請。
7月ころから、漏水もれの可能性、異常値の記録。
中電、2号機の配管の点検へ。
■11・16 浜岡町長ら事故現場の視察、協定締結以来初めて。助役、中電は信頼回復に向け
た努力を、と発言。
保安院,漏水もれの調査,記者会見で中規模の事故とする。
保安院、原研での配管の検査へ。
中電、富士川以西の全市町村にチラシ折込。
大須賀町菊川町、要請書で、貴社の本町に対する考え方を見せつけられた思いで激憤に耐え
ない、とする。事故を報道機関から知ることになったため。
小笠町議会、要求書。老朽化の場合は廃炉にとし、30日までの回答を要求。議長は絶対安全
でなければ廃炉にと発言。製茶への風評被害への懸念の声が地域にあり。
■11・17 中電、圧力容器の上蓋をあけて調査へ。全燃料の取り出しへ(18日)。
■11・18 三重海山町での原発誘致投票で反対派勝利。
■11・20 中電副社長、部品交換で予防保全をしていることを理由に廃炉を否定
保安院調査で配管に多数の亀裂判明
保安院、中電に配管の水の除去を指示。
中電、日本燃料開発に破断調査を委託
■11・26 中電、漏水は台管溶接部の亀裂と発表(写真公表)。
浜岡町原発問題を考える会,会報NO44発行,事故批判
■11・27 漏水個所溶接部にインコネル182合金の使用が判明
中電、配管の破片を一つ発見(ビニールシートに下に)。翌日公表。
県知事、記者会見で初めて事故に言及。
社民党国会議員団視察、1号機の廃炉を要求。
■11・28 県知事、現場視察。
国原子力委員長、全国での緊急点検の必要はなしと発言。
国会院内集会開催
反原発グループ,保安院へと申し入れ
■11・29 中電、周辺環境への放射能汚染はないのチラシを配布。
■11・30 静岡県中部地区労働会議,大会で情報公開と廃炉を決議
■12・1 浜岡で反原発・市民集会(講演小村浩夫)、集会後浜岡原発へと要請行動
原発入口を警察と機動隊が警備,原子力館内で私服刑事が行動参加者をチェック。
■12・3 県と周辺5町、事故の公表基準の検討にむけ初会合。県は専門知識のある職員の配
置へ
■12・5 県知事、安全協定の見直しを否定
■12・6 保安院、内部爆発による延性破壊と発表
中電,破断面観察の調査結果発表、延性破壊・ディンプル模様確認。水素爆発かウオーター
ハンマー現象によるとする。
現地報告集会東京
■12・9 浜岡原発ネット、静岡・沼津で講演会(明石昇二郎)
■12・13 中電,市民向け公開説明会,40人参加 ,批判の声相次ぐ。
中電,記者会見で水素爆発の可能性を発表、弁の設置へ。60キロの鉄扉が吹き飛ばされてい
たことも判明,2号機は1月中に再開を想定。3号機は12月中に稼動か。
市民は原因究明前の再開を批判