昭和天皇自然館問題1

                            2004年2月24日

静岡県知事様

浜名湖花博財団代表様                  人権アクション浜松

 

 浜名湖花博での昭和天皇自然館の中止を求める要請書

 

静岡県は2004年2月、浜名湖花博での昭和天皇自然館の展示について、その概要を発表しました。それによれば昭和天皇の標本17点を中心に、映像シアター・標本展示室・天皇の生物研究史・天皇の自然観などを展示するものといいます。展示は県・花博、宮内庁が調整してのものです。

このような展示館が作られると聞き、わたしたちは市民として驚いています。昭和天皇については昨今『天皇は自然を愛した平和主義者であった』とするキャンペーンがはられています。

しかしながら、昭和天皇〔ヒロヒト〕はアジア太平洋戦争期の最高責任者であり、ヒロヒトの統帥する軍隊はアジアで2000万人の人々を殺害しました。またかれが継続した戦争によって自国の兵士・市民300万人が死ぬことにもなりました。沖縄戦は天皇制存続のための戦争でしたが、10万人を超える沖縄住民が生命を失いました。

かれの統帥した戦争によって、緑の大地は破壊され、多くの人々が苦しみました。それゆえ、かれに戦争責任があるとする考えは根強くあります。天皇にすべてを捧げることを歌った『海ゆかば』という曲は当時の人間観をよく示しています。

立川にある昭和記念公園に、昭和天皇記念館がいま建設されていますが、これもヒロヒトを、緑を愛した平和主義者と宣伝するものです。天皇自然館の建設はこの記念館建設の動きとつながっているようにも思われます。

天皇を神とし市民を臣民としたかつての天皇主権の時代は終わりました。現在、市民は主権在民・戦争放棄の憲法の中に暮らしています。

わたしたちは主権者として、天皇を特別視し、自然愛好者として賛美するような展示館はいらないと考えます。自然研究者として評価すべき人物は他にたくさんいます。天皇の戦争指導者としての側面を隠蔽して自然愛好家として描くことは歴史の偽造ともいえます。また行政による天皇の特別視自体が市民の人権を侵していることにもなります。

よって、知事・財団が、ヒロヒトを特別視し賛美することにつながる、天皇自然館の開館計画を中止することを、ここにもとめます。

なお、県知事は2003年の静岡国体を記念して、天皇の歌碑を会場のエコパ〔袋井市〕に建立しようとしています。天皇制を賛美することになるこのような歌碑建立計画はすぐに中止してください。

以上要請します。

以上2点の要請についての回答を文書でお答えください。




        



2                        2004年5月6日

静岡国際園芸博覧会(花博)会長様         NO!AWACSの会浜松

同名誉会長静岡県知事様               人権アクション浜松

   

ブルーインパルスなど自衛隊行事の中止と

花博での昭和天皇自然館の閉鎖を求める要請書

 

花博で5月9日、自衛隊の音楽隊行進とブルーインパルスの展示飛行がおこなわれようとしています。私たちはこの自衛隊の花博での活動の中止を求めます。軍楽も展示飛行も軍事宣伝行動の一環であり、花の博覧会とはまったく趣旨が異なるものです。花博での自衛隊の宣伝活動は必要なく、騒音を出す展示飛行は花の展示の精神に反する行為であると考えます。即中止してください。

また開館した昭和天皇自然館ですが、「平和と緑の昭和天皇」というプロパガンダの一環の中でつくられたものとみられます。静岡新聞社のつくった公式ガイドブックには昭和天皇が「すべてのものに対して分け隔てなく慈しみの心をもたれた」としています。ならばどうして他国に宣戦布告をしたのでしょうか。昭和天皇は戦争を執行した「大元帥」であり、その戦争責任を歴史から消すことはできません。静岡県がかかわり、このような宣伝館をつくったことに対して、わたしたちは浜松市民として深く憂慮しています。館の閉鎖を求めます。

天皇族秋篠を花博の名誉総裁にしていますが、このような組織作りにも問題があります。天皇族を中心とした組織体制を改め、そのような志向を根絶してください。

なお、会長はスズキ自動車の社長として、市民の反対の声に耳をかすことなく、引佐郡の上流に社員用ゴルフ場を作り、市民の水源を破壊しました。また自動車産業自体、環境を破壊してきました。その責任をとることなく、花や緑をかたる資格があるのでしょうか。花を中心とするイベントを主催する会長としての資格に強い疑念を持つものです。

以上要請します。




静岡県知事様 静岡国際園芸博協会会長様            2004年6月27日

                               人権アクション浜松

主権在民と人権平和を尊重する運営および昭和天皇自然館の閉館などを求める要請書

 

1 天皇族の名誉総裁の件

国際園芸家協会(オランダ)は1960年代から博覧会をはじめ、アジアでは1990年に大阪でおこなわれ、フィリッピン、中国(昆明)を経て、2000年に淡路で、2002年に韓国(安眠島)でおこなわれてきました。大阪の花博では皇太子を名誉総裁とし、2004年の浜名湖花博(静岡国際園芸博)では秋篠宮文仁を名誉総裁としています。また5月に花博会場でひらかれたジャパンフラワーフェスでは高松宮妃久子を開会式に呼んでいます。博覧会において天皇族を名誉総裁とする組織編制や式に呼び寄せる運営方法は、主権在民の視点から中止すべきと考えます。天皇制を博覧会行事に利用する行為の根底には天皇制賛美があり、それは市民に主権意識ではなく臣民意識・奴隷根性を再生産することになります。このような組織・運営は、現憲法の主権在民の精神に反するものです。

           記

 秋篠を名誉総裁とした経過を提示すること。

会期中天皇族への出費があるのならば、その額を提示すること。

 天皇族を頂点とする運営は主権在民に反するものであり、秋篠は辞任すること。

 今後の花博開催において天皇族を役員としないよう規定すること。

 

2 昭和天皇自然館の件

花博会場に昭和天皇自然館が、生物学者として前天皇裕仁の「功績」と「自然を愛しすべてを慈しんだ」行為をしめすものとして建設されました。

 自然館は7つの宮を示す7角形をしています。入り口は閉ざされ、約15分ごとに開けられて、7分の立ち見の「生物学者昭和天皇」の映像が流されます。その映像では裕仁が10代から研究をはじめ、公務以外をすべて研究に捧げ、かれは慈愛の精神を持ち、「世の中に雑草はない」と語った人物として描かれています。

展示のはじめには、少年時の4コレクションの写真と実物1点(「御親筆」という解説がなされる)があり、つぎに研究史、裕仁が愛した伊豆、黒船関係展示、採集植物のコレクションなどがあり、裕仁の作ったという短歌が大きく展示されています。

 「生物学者」としての研究史が示されていますが、よく見るとアジア太平洋戦争から敗戦にかけての1941年1月から1948年3月までは空白です。また裕仁を「学者」としていますが、採集をしたことが示されてはいても、その分析をして発表しているのはおおくが御用学者です。日本の生物学研究の実績を示す館が建設されたならば、博物館としての価値は十分あります。しかし、この館は裕仁の趣味としての研究を示していますが、日本の生物学におけるさまざまな人々の研究成果は示されてはいません。学習院初等科入学頃や老年の研究姿の大きな写真が示されていますが、壮年期のかれの公務上の軍服姿はまったく示されていません。年譜には「崩御」と記され、かれは神として扱われています。

「昭和天皇と生物学のご研究」というコーナーには「東宮御学問所」で教育を受け、「陸海軍を統率する大元帥としての教育が目的でしたが」、幅広い教養を深める中で「博物」に関心を持ったとしています。ヒドロ虫やシダ植物などの生物学の研究をおこない、「エコロジスト昭和天皇」とよばれもしたと記しています。

かれの大元帥としての行動・精神についてはまったく触れることなく、生物学に関心を持つ「エコロジスト」として形象する記述は、天皇裕仁の賛美のみならず歴史の偽造です。かれの公務としての戦争指導は、自国の民衆を兵士として動員して死に追いやり、アジアの民衆2千万人に死を強いたのです。その戦争責任については晩年においても「文学」の問題とかれは公言し、その無責任を貫きました。

その行為のどこに生物学者としての慈愛があるというのでしょうか。生物学者がもつ慈愛やエコロジーの精神は、かれにおいては趣味の領域に押し込められ、決して現実の行動としては示されることはなかったとみるべきでしょう。他者による「エコロジスト」の形容を持ち出して、裕仁を「自然を愛した緑の平和主義者」と認識させていこうとする記述は姑息なものです。

展示は、公務外の生物学研究の一面を強調し、かれの「神」としての戦争指導などの統治の責任を捨象しています。それは過去の抹殺であり、形を変えた「天皇陛下万歳」の展示です。このように示されるべきものが示されないという歴史の偽造と天皇裕仁の賛美は、見るものに誤った認識と新たな奴隷根性を植えつけるものといわざるをえません。裕仁が神として統治していた時代は、治安維持の名による政治弾圧・人権侵害・侵略戦争・貴族制度による差別の再生産がおこなわれていました。「生物学者昭和天皇」のコンセプトはこのような歴史的事実とその教訓を覆い隠すものです。そのような天皇制の賛美と歴史偽造にかかわる館を建設した県・協会の責任は大きいと考えます。それは裕仁の戦争指導の下で死や悲しみを強いられた人々に、再びそれを繰り返していることにもなります。

            記

 天皇自然館設立までの経過を明らかにすること。特にその発案経過と展示内容の決定過程について明らかにすること。

 この館の建設にかかった費用と会期中に館の運営にかかわる費用を明らかにすること。

 天皇裕仁を賛美するこの館を閉鎖すること。

当面、「大元帥としての教育が目的でしたが」とする記述を、「大元帥としての教育が目的であり、その教育を受けて戦争を指導した」と書き直すこと。「エコロジスト昭和天皇」と呼ばれたとする記述を消し、天皇の戦争責任を問う声があったことを記すこと。裕仁を「崩御」と神として扱う記述をやめること。その他「御親筆」等過度の敬語についてはすべて書き改めること。

 この館は会期終了にともない撤去すること

 

3 自衛隊の軍楽隊の行進について

 花博では5月9日に「航空自衛隊の日」として浜松基地の軍楽隊が行進し、ブルーインパルスの飛行をおこないました。6月12日には陸自富士学校、13日には海自横須賀の軍楽隊が行進しました。26日には再び空自の軍楽隊が行進しました。イラク戦争やイラクへの自衛隊派兵、多国籍軍への参加問題に見られるように戦争は花や緑の破壊です。軍楽隊は戦闘行動への志気を高揚させるための軍事組織です。私たちは、そのような軍事組織は花博に必要ないと考えます。

       記

 航空自衛隊の日を設定した理由を明らかにすること。発案責任者を示すこと。

 ブルーインパルスの飛行依頼経過を明らかにすること。

 3自衛隊の軍楽隊の行進を設定した理由を示すこと。

 今後は自衛隊関係の企画を設定しないこと

 

4 宗教団体との関係について

4月下旬から5月はじめにかけて花博で、創価学会名誉会長の池田大作が撮った花の写真展がおこなわれました。これについて公共の場での創価学会の布教につながり、宗教的人格権を侵害しているという批判が市民から出されました。8月にもこの展示が予定されているといいます。

 また、会場内を4月25日26日とPL静岡、5月30日天理教愛町分教会の楽団がマーチングしています。天理教に関しては6月6日には天理教付属高校のマーチングもおこなわれました。宗教団体の行進は布教をかねたものであると考えられます。花博協会には、宗教団体についての憲法第20条の政教分離の視点に基づく運営上の了解が存在していないようにみられます。特定の宗教団体と花博が関係するとみられる企画は中止すべきと考えます。 

 なお、昨年度、県立高校や浜松市内の小中学校へと遠足等で花博への参加を強制する指示が出されました。このような指示は撤回してください。  

          記

 池田大作展問題への見解をあきらかにすること、8月の展示は中止すること。

 天理教、PLの行進についてその出場経過を明らかにすること。

 花博協会は政教分離について運営上の見解を示すこと。

 学校への強制動員の指示を撤回すること

 

 以上、4項目で主権と人権に関する要請をおこないます。回答については文書で、当日もしくは前日までにください。会見して市民としての意見を示すために7月11日13時頃に花博の協会本部へと伺いますので、会見時間と場所を設定してください。

また車3台で訪問する予定ですので駐車の便を計ってください。回答と会見の手配のほどよろしくお願いします。

静岡県知事様                         2004年7月1日

静岡国際園芸博覧会協会会長様                 人権アクション浜松 

 

 4


 7月11日(日)13時からの要請会見拒否処分の撤回を求める要請書

 

7月1日付で協会総務課長から、11日(土ママ)は多忙であり応対はできない、7月下旬の平日に再設定すること、という回答がありました。当会は6月25日、協会広報課長に事前の折衝をおこない、7月11日に会見が可能かどうかを聞き、可能であるからペーパーを出してほしい、との話により、26日付で要請書を送付したところです。

この要請は県にも出しており、また協会は県が出資する財団でもあり公的な機関として、主権者である市民からの要請については、県と協議の上、請願法を前提に誠実に対応すべきものであると考えます。当日は職員が在会しており対応は可能であると考えます。

課長名による会見の拒否処分については不当な拒否であり、曜日を間違えての返答はどこまで真剣に対応を考えたのかを疑わせる不誠実なものであると考えます。

よって、当会としましては、再度7月11日13時からの会見を求めます。6月26日付の書面に対し、会見期日の拒否回答を5日後におこなう対応も遅いと考えます。当会としましては、11日に会場に行く計画でいます。協会事務所で少し待つことになってもかまいませんので、協会内で責任ある方が対応できるようにしてください。

なお車1台のみでくるようにとも、回答の中にありますが、乗り切れませんので3台ほどになります。協会に用件があり、事前に台数まで打診しているにもかかわらず、その台数まで規制する権限は課長にはないと考えます。

また、花博の内容に関する要請項目については、11日までに、県と協会の協議の上での文書での誠実な回答を求めます。