陸自幹部と自民党幹部が結託して
改憲案の作成を推進したことに抗議し、
関係者の罷免と防衛庁長官、小泉首相・総裁の辞任を
求める共同声明


 12月5日のマスコミ報道によると、陸上自衛隊幹部が作成した改憲案が自民党の改憲作業をすすめる機関に提出され、その案はすべて自民党の発表した改憲草案大綱に取り入れられていたことが判明しました。現役自衛官(陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班所属二等陸佐)による憲法違反の行動としては、「三矢研究」とよばれた有事法制構想研究・作成事件以来、それに匹敵するほどの極めて重大な問題です。
 自民党憲法調査会(保岡興治会長)の憲法改正案起草委員会(中谷元座長)は11月17日、自衛軍の設置や集団的自衛権の行使および海外での武力行使、国家緊急事態規定、国民の国防の責務などを内容とする「憲法改正草案大綱原案(たたき台)」を公表し、明文改憲にむけて具体的にその一歩を進めました。しかし、天皇の元首規定や愛国心強要などまでも含んだ危険な改憲草案大綱は各界からの厳しい批判を浴びました。また自民党内からも参院自民党が「参院軽視」との批判を出したのをはじめ「策定経過が不透明」などの批判が続出、自民党執行部は4日、この大綱原案を白紙撤回する方針を決め、それに先立つ2日には起草委員会とは別にあらたな草案策定の組織「憲法改正国民運動推進本部」(本部長は小泉総裁か、武部幹事長を予定)を設置する方針だと報道されたばかりです。これら自民党内のあわただしい経過をみると、今回明らかになった事件は、すでに自民党執行部が知っていた可能性があると疑うに十分です。
 報道によれば、10月下旬に中谷座長に提出された陸自幹部の改憲草案は「憲法改正草案」とのタイトルがつけられ、@侵略戦争の否定、A集団安全保障、B軍隊の設置・権限、C国防軍の指揮監督、D国家緊急事態、E司法権、F特別裁判所、G国民の国防義務―の8項目について条文を列記。この草案とは別に、安全保障関連で「盛り込むべき事項」を記載した文書も作成したといわれます。こうした憲法改正作業に現職自衛官幹部が関与したことは、マスコミが指摘する「政治が軍事を監督するシビリアンコントロール(文民統制)違反」はもとより、自衛官の憲法尊重擁護義務違反事件として重大な問題です。
 自衛隊はその憲法上の是非はさておいても、軍事的暴力の行使が自衛隊法などで認められた特別の集団であり、その幹部の政治的発言はとりわけ重大な意味を持っており、課せられた憲法尊重擁護義務は特別に重いものです。改憲案作成作業が公務中であるとないとにかかわらず、このような活動は幹部自衛官にとって断じて許されるべきものではありません。ふりかえれば、現行憲法の平和主義の改定は1963年の三矢作戦計画(統合防衛図上研究実施計画)以来、防衛庁制服組の念願でした。いま、イラクのサマワに陸上自衛隊などが派遣され、多国籍軍に組み入れられたもとで、12月14日の派兵期限切れを前に派兵期間の延長が画策されているときに、こうした事件が暴露されたのは決して偶然ではありません。こともあろうに自衛官出身の元防衛庁長官で自民党幹部の中谷元氏らがこうした自衛官と結託して改憲を企てているということは、一種のクーデター的行為であり、到底容認すべからざるものです。おりしも、来年からの通常国会には与党から改憲のための国会法改定や改憲国民投票法案などの改憲手続き法が提出されようとしており、与党が改憲への動きを強めようとしている矢先です。
 「戦争をしない国」から「戦争をする国」への転換と明文改憲の動きが強まってきている中、制服組と自民党幹部が結託して進めたこうした危険な動きは芽のうちにつみ取る必要があります。
 日本国憲法の平和主義の根幹を揺るがす今回の事件に対し、私たちは心からの怒りを込めて抗議し、関係諸機関と自民党執行部がただちにこの事件の真相を糾明し、公表することを要求します。あわせて日本国憲法第99条の憲法尊重擁護義務違反事件として、同二等陸佐をはじめとする防衛庁関係者の罷免、大野功統防衛庁長官の辞任を要求し、同時にこのような事件を二度と繰り返さないためにも小泉純一郎首相・自民党総裁の責任を問い、辞職を要求するものです。以上、市民団体・個人の連名を以て要求します。
                              2004年12月
許すな!憲法改悪・市民連絡会呼びかけ
賛同
人権平和・浜松
NO!AWACSの会