2006・6
日本国首相様 2006年5月9日
人権平和・浜松
「教育基本法改正案」の廃案を求める要請書
4月28日、日本政府は教育基本法の改正案を閣議決定し、衆院に提出しました。私たちは、この改正案は主権者国民が国家権力を規制するという近代法理念に反し、人間の尊厳への理解にかけ、国家による教育支配をいっそう強め、日本の戦争国家化と憲法改悪をすすめるものであると考えます。それゆえ、改正案を廃案にすることを強く要請します。
教育基本法は主権者国民が国家権力に縛りをかけるという近代法の理念に拠り、「教育勅語」の下での戦争教育を反省し、憲法の平和主義を受けてできた法律です。基本法は国家による不当な支配を廃し、個人の尊厳や自由を重点に置いて制定されたのです。
しかし、改正案はこの近代法理念に反して国家が重視され、人間の尊厳が軽視され、道徳・規律・「愛国心」を国民に教化する内容となっています。このような改正案が出された背景には、日本が新たな戦争に参加し、その戦争に服従するような人づくりを狙っているからであるといわざるをえません。
改正によって、個人の尊厳よりも国益が重視され、教育への国家の介入がおこなわれることになります。それにより、教職員への管理が強化され、差別や選別がいっそうすすめられ、教育の機会均等が失われていくことにもなります。「君が代」処分や格差社会化の形で今起きていることが、正当化されるようになるのです。
大切なことは、人間の尊厳の理念の実現であり、国家による教育への介入ではありません。学校で事件が起きるとその責任を教育基本法のせいにするような政治家に発言は間違っています。教育支配と戦争によって多くの人間を死に追いやった歴史を反省し、今おこなわれている戦争を止めることが、社会正義の実現であり、生命を尊重するという教育的行為です。
以上の理由から、戦争国家化をすすめることになる教育基本法改正案の廃案をここに強く要請します。