2006. 12月10日
前田哲男講演会  「集団的自衛権と憲法9条」
会場 浜松市青年女性センター主催 浜松憲法9条の会

20061210日、浜松市内で前田哲男講演会がもたれ、120人が参加した。主催は浜松憲法9条の会。

前田さんは次のようなことを語った(文責人権平和浜松)。

1986年の日米共同宣言以来20年、小泉政権がこの5年間でおこなったことは「自民党をぶっ壊す」ことではなく、「憲法をぶっ壊す」ことだった。米軍再編は改憲と一体になった再編であり、海外派兵国家へのシナリオの下にある。

9.11以後、テロ特措法で海自をインド洋へ派兵し、イラク特措法で陸自を派兵し、今でも空自が物資輸送を継続している。武力攻撃事態法などの有事法も制定された。また、200510272829日は原子力空母横須賀配備、自民党新憲法草案、在日米軍再編中間報告合意が次々に公表された。それは「9条虐殺の3日間」であった。

自民党の憲法案は前文から不戦の決意を削り、戦争の放棄を安全保障とし、自衛軍保持を掲げ、軍事裁判所も設立し、国民の責務や公益を強調するものだった。

米軍再編は日米同盟の「変革」であり、横須賀に海軍、座間に陸軍、横田に空軍の日米共同司令部を置き、辺野古と岩国の基地の強化を柱とするものだった。それは、首都圏の米軍基地内に陸海空の共同司令部を置き、ミサイル防衛を含めて米軍主導の戦時指揮所とするというものだ。

自衛隊員のパソコンから流出した資料を見れば、海自は米軍の空母戦闘群の周辺機器とされ、後方地域支援と洋上臨検を担う。自衛隊は米軍が仕掛ける「対朝鮮・中国戦争」の不可欠の一部となっている。

このように日米の軍事的一体化がすすんでいるわけだが、EUの安全保障の流れは、この動きとは異なる。冷戦後のドイツは駐留米軍を5分の1に減らし、地位協定に国内法優位原則を盛り込んだ。スペインイタリアも基地を削減し、フランスとドイツはイラク派兵を拒否した。

覇権的な一国の安全保障から共通の安全保障へとすすみ、法の支配による非覇権的安全保障へと転換している。「安全保障は軍事的優位では達成できない」「共通の安全保障では軍備削減と質的制限が必要」という理解がすすんでいる。さらに国家主導から人間の安全保障へと議論がすすみ、憲法9条のように政府が戦争を禁止する決議を求める動きもある。スペインのカナリア諸島のアスパルマスのテルベ市には日本の憲法9条を刻んだモニュメントまである。この島はスペイン内戦の時には共和派の砦となった島という。

安倍内閣は小泉政権より危険な性格である。「北朝鮮の核実験」への過剰反応ではなく、平和条約の締結に向かう態度が求められる。

防衛省昇格法案の省への看板の架け替えのように宣伝されているが、自衛隊法第3条の任務に海外派兵を加えるものであり、その本質は海外派兵法案である。これに続いて海外派兵恒久法が狙われている。

改憲と再編の中で当面取り組むことをあげれば、反再編自治体連合などの結成による米軍再編での基地配備の拒否、横田・座間・横須賀での岩国のような住民投票、差別的な日米協定を改定し国内法の優位原則を確立する、憲法9条維持による安全保障策を提示する、東アジアに非核地帯と共通の安全保障を定着させる、自衛隊の縮小、などがあげられる。

憲法前文には、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占めたい、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに共存する権利を有することを確認する、とある。これこそ人間の安全保障を60年前に先取りしたものといえる。

富の偏在や独裁や言論抑圧などの戦争の原因をなくしていくことが大切である。最近「北朝鮮の核」によって経済制裁論や圧力が強められているが、過去日本はそのような圧力によって戦争へ突入した。圧力だけでは解決にはならないことを日本は自らの歴史から学ぶべきだ。

(以上発言要約)

浜松憲法9条の会への賛同者は2006109日現在630人ほどである。

読者の参加を呼びかける。