静岡県土地収用委員会各委員様      20061216

                     人権平和浜松

         県土地収用委員会全委員の辞任要求書

 わたしたちは浜松地域で活動する市民グループである。当会の会員には空港共有地権者がおり、当会はこの空港建設決定の出鱈目さと強制収用という人権侵害の視点から、静岡空港建設に反対してきた。

 昨日、収用委員会は周辺部の審理をたった3回で打ち切るという暴挙をおこなった。この決定にわたしたちは強く抗議する。

 この間、当会会員の何人かはこの収用委員会審理に参加してきたが、その過程での収用委員会のありようは、公正中立ではなく、静岡県行政に隷属するものであり、権利者の権利を侵害するという県の圧制に加担するものであることがあきらかになった。

その理由として以下の4点をあげることができる。

@     委員は自ら裁定書を書いていないとみられる。書いているのは県職員でもある収用委員会事務局であり、県行政の意向を受けて文書が作成されているといわざるをえない。たとえば本体部分の裁定に関してみれば、その裁定決定は1日の数時間でおこなわれた。委員自身が書いた文書をつき合わせて十分な議論がおこなわれていたとは思われない。委員がきちんと分析して議論を交わして数日討論したというような形跡がまったくないのである。

A     収用委員会の日程は、県の土地収用日程に合わせてすすめられてきた。権利者の意向を踏まえその権利を尊重するような事前の協議にはほとんど応じなかった。収用委員会事務局員の権利者への対応は極めて高圧的であり、民を見下すような対応がしばしばあった。日程は県の意向を受けての収用委員会事務局の意思で進行してきたといわざるをえない。また、強圧的な運営に権利者が抗議する動きを想定し、ガードマンを雇用して配置するなど、権利者を監視対象とする対応に終始した。主権者を愚弄するがごとき対応である。

B     収用委員全員での空港現地の調査をおこなわなかった。現地を訪問し、双方からの事情収集をふまえて裁定がなされるものだが、それをおこなわずに審理での文書と発言だけで判断しようとしている。全員による現場検証なき裁定が、権利者の権利の侵害となっている。裁定書には審理の発言や資料を十分に分析した形跡もみられない。時間を少し与え少しだけ言わせてやったというようなやり方である。

C     公開審理の場で収用委員はただ座っているだけであり、会長以外はほとんど発言しない。まるでひな壇の飾り物であり、収用委員会を公開して発言を聞いたという実績を作るためにそこに居るに過ぎない。委員長の審理の進行は先に結論ありのやり口であり、県の意向を受けての議事進行である。発言の機会のないまま、一方的に審議が打ち切る事も数多く見られた。

このように収用委員会では、県の意思に従属し、公正中立な運営がおこなってこなかった。

このような委員会が、土地収用を是とする裁定がおこなうということは、政治暴力を肯定することであり、土地の売買を拒否してきた権利者やオオタカトラストの権利者を犯罪者とみなすということである。それは20年余にわたり、この出鱈目な用地決定と政治暴力に抗し、利権に屈せず正義の信念に生きてきた人々を犯罪人とすることにほかならない。わたしたちはそのような裁定を絶対に認めることはできない。

かつて足尾銅山の鉱毒に抗議する民衆は治安警察法によって弾圧されたが、今では民衆の行動と正義は高く評価され、弾圧した側の国家の犯罪性が語り伝えられている。後の世において、県収用委員会もまた同様に断罪されることになるであろう。

静岡空港が、政治空港、赤字ゼネコン空港、自然破壊空港であることは審理で多くの権利者が指摘したとおりである。審理では、その決定自体の瑕疵や空港建設キャンペーンでの瑕疵、権利者への説明なき一方的な収用がおこなわれようとしていることの瑕疵などが明らかにされてきたのである。

委員にもし良心・良識があるのならば、辞任することでその誠意を示すべきである。収用委員のなかには弁護士も多く含まれているのであるが、現場の検証やその事件の成立について十分な調査がなく、また自ら文書を記さずして、どうして人間の弁護ができるのだろうか。良心があるのなら、このような公正中立の精神なき県収用委員会の職は放棄すべきである。それが収用委員になっている人々自身の名誉の回復となるだろう。このような収用委員会はいったんその審理を停止すべきであり、新たな公正中立な組織をつくって問題を再審理すべきである。

よって、わたしたちはここに、全収用委員の辞任を強く要求するものである。