NO!静岡空港 11・22第8回反空港全国集会・静岡
●静岡空港の開港を阻む立ち木
航空需要が減少し、世界不況が到来するなかで、航空業界のクローバルな再編・統合がさらにすすもうとしている。国内の地方空港の経営赤字も増加する一方である。
このなかで静岡県は100万人の需要予測を宣伝し、静岡空港の建設を見直すことなく、2009年3月の開港を宣伝してきた。しかし、滑走路正面にあたる「西側制限表面部」にある立ち木が、この開港を延期させている。
経過をみれば、2006年末に土地強制収用をめぐる委員会審理が一方的に打ち切られた。私も共有地権者として陳述したが、県収用委員会の審理の進行は「強制収用認定の結論ありき」だった。反対地権者は収用範囲を示すように県に対し要求し、県は現地でのくい打ち作業をすすめたが、そのなかで審理は打ち切られた。
07年3月末には県空港部が行政代執行手続きを県建設部に申請し、9月には県建設部が戒告書を地権者に送達、10月になり、反対してきた地権者は自主伐採を強いられた。その間、地権者側は県の示した境界外に、飛行の障害になる立ち木が存在することに気付いた。実際に収用範囲の立ち木を伐採してみると、収用から漏れた土地に数十本の大きな立ち木が、滑走路の正面で飛行を阻止するように存在していたのだった。
静岡空港をめぐっては、反対派県民が事業認定の取消訴訟と土地収用の取消訴訟の2つを闘っている。08年2月の土地収用裁判で原告側がこの立ち木について指摘したが、県はその存在を認めようとせず、9月の事業認定訴訟の中で国がその存在を認め、それが報道されると、県はやっとその立ち木の存在を認めることになった。県が立ち木の存在を認めることができなかった理由は、裁判が係争中であり、県の収用での瑕疵を認めることになり、県の事業能力の欠落を示すことになるからであった。
結局、県は10月末に開港の延期を表明、滑走路を短縮して運用する方針をとり、1億1千万円で追加工事をおこなうことになった。これまで2009年3月の開港を宣伝してきたが、3月開港と書かれたポスターの上にはシールが貼られた。
静岡空港は1987年末に、地域住民の同意のないまま、当時の斉藤知事と与党自民党の談合で決定された政治空港であり、地域民衆にとっては政治暴力そのものであった。それが土地の強制収用へとつながり、それに対する抗議行動が測量ミスをもたらし、今回の立ち木の事態となったのである。
●静岡での第8回反空港全国集会
このような状況のなかで、11月22日、第8回反空港全国集会
集会での基調報告では、路線・運賃の自由化をすすめる「オープンスカイ協定」がすすむ中、日本の空は大きな転機にあること、そのなかで非効率的な空港の廃港と鉄道の整備がすすむこと、日本の空港の統廃合もすすむが、静岡空港はその中で最も不要なものであること、さらに空港の軍事利用も狙われていることなどが示された。そして、行政と官僚の癒着を糾弾し、大赤字の民衆への押し付けを阻止していくことを呼びかけた。
全国各地からは、関西、中部、羽田、成田、新石垣島からの現地報告がなされ、各地の空港の現状と反空港の闘いが紹介され、福岡からの報告も代読された。そこでは、過大な重要予測、周辺への騒音被害、すすむ拡張工事、いい加減なアセスメント、搭乗率の低下と本数の減少、環境破壊、住民に対する約束の反故、責任を民衆に転嫁するやり口などが数多く報告された。
三里塚の加瀬さんは、反対闘争のなかで命を失った彼らの意思の上に我々は立っている。襟をただし決意を新たにし新しい時代を築くために奮闘しよう、という熱いメッセージを寄せた。
静岡からの報告では、静岡空港の訴訟を担う阿部弁護士は、地元の意向を無視して空港を建設し、いい加減な需要予測を立て、さらに測量のミスまで起こす県には事業能力がないことなどを、これまでの経過を紹介しながら示した。
地権者の大井さんは、07年の1月ころにはこの立ち木の問題を県に伝えたが、県は問題を明らかにすることなく地すべり対策で対応してきたこと、県知事は11月21日に形式的な「謝罪会見」をしたが、収用委員会はまだ謝罪しようとはしていないことなどを語った。地権者の松本さんは、石雲院のご神木も管制の邪魔になっていることが最近わかったが、県はそれを支障物件として認めようとしないことなどを示し、県が住民を人としてみなさず、モノ扱いして事業をすすめていることを批判した。
空港周辺住民の島野さんからは民主主義にも経済合理性にも反する静岡空港の廃港に向けて闘って行く決意が示した。元県議の松谷さんは静岡空港反対の運動を日本の航空行政そのものを転換させる闘いとすることの意義を語った。
集会では最後に、地域住民の生活と権利を守り、軍事利用を許さず廃港をもとめるという趣旨の集会宣言を採択した。
静岡には新幹線が通る。静岡空港は地方空港であり、大阪・東京便もない。開港しても利用者は年40万人に満たないとみられる。一時は便数があってもすぐに運休となるだろう。軍事利用されるという声もある。赤字は県民が税で負担することになる。主権者県民の政治的力量が問われている。 (竹)