1 2000年12月・静岡県議会への抗議



抗 議 文
 静岡県議会様

 本日12月19日、静岡県議会は本会議において、「新しい歴史教科書をつくる会」県支部(以下「つ
くる会」が提出した「静岡県における小中学校教科書採択制度の改善についての請願」を、多くの反
対意見や慎重審議を求める県民の声を無視し強行採決した。
 歴史を正視しアジア諸国民衆との真の友好関係を築こうとする私たちは、満腔の怒りをもってこれ
に抗議するものである。
 この間、私たちが指摘してきたように、今回採決された「請願」には、次の二つの重大な問題が含
まれていた。
 一つは、教科書採択に関することがらである。
 「請願」は、「採択すべき教科書を事前にしぼり込むことがないように」とし、採択にあたって、学校
や現場教員の「調査書」提出という方法を排除し、教育委員会による採択を行うよう求めている。
 しかし、教科書の採択にあたっては、日々、生徒児童と接しながら授業に取り組んでいる現場の教
員たちが関与するのは当然のことであり、そのため政府文部省も「教科書採択にあたっては将来的
に学校単位の採択とし、そのためにも、教員がもっと教科書の共同研究ができるようにすること」等
を内容とする方針を閣議決定している(97年2月)、また本県の教育委員会も「現在の教科書採択
制度は公正に行われており問題はない」(00年12月15日「朝日新聞」と言明しているところであっ
た。しかるに、本請願の採決は、現場教師の影響を断つことによって教育行政権力が思うままに教
科書採択を行うことに道を開くものであり、今後「つくる会」は、行政権力にとり入って自分たちの「教
科書」を採択させようと働きかけることは明らかである。
 二つ目は、より本質的な問題である本請願の狙いと実態である。
 「つくる会」は周知の通り、歴史を正視しようとする動きに罵倒をあびせ、「現行」の教科書ですら
「自虐的」と非難し、わが国の犯したアジアへの侵略戦争の犯罪事実を隠し歪めることに汲々として
きた。この団体が編集した「中学校歴史教科書」(扶桑社)には、「韓国併合は合法的だった」「戦争
に善悪はつけられない」「大東亜戦争はアジアの人々に夢と勇気を育んだ」「核兵器廃絶は絶対の
正義か」等々の記述があり、この間、韓国や中国をはじめアジア諸国から轟轟たる非難が寄せられ
ていることは周知の事実であった。この「教科書」が現在、文部省に提出され検定を受けているので
あるが、その史実のあまりの不正確さと偏向ぶりのため、学校現場ではおそらくほとんど見向きもさ
れないであろうことに危機感を持った「つくる会」は、今回、自民党の議員を使って本請願と同様の
動きを全国の府県議会におこなってきているのである。したがって、本請願が「つくる会編集・新しい
教科書」の全国キャンペーンの一環として行われていることは明々白々であった。

 しかしながら、静岡県議会は、こうした私たちの真実の訴えを無視し、本会議でこれを採決した。
 それは、「つくる会編集・新しい教科書」の採択へ向け手を貸したことであり、次代を担う青少年に
不正確な史実と偏向に満ちた歴史観を植え付ける「教科書」採択に道をひらくことにもつながった。
 また同時に、本県が韓国、中国などと結んでいる幾多の友好関係に表される国際化の時代潮流
に逆行するものでもあり、到底容認できるものではない。
 われわれは、ここに強い抗議の意志を表明するものである。

                                2000年12月19日
                                平和と人権のための市民行動
                                映画「侵略」上映委員会
                                静岡靖国問題連絡協議会
                                NO!AWACSの会
2 2000年12月の歴史学者の批判声明

「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)の人びとがつくった「歴史教科書」(二〇〇二年度から中学校で使用)をめぐって、「強者の論理に終始」、「過去の歴史を歪曲」など、いま、その内容を危惧する声が内外からあがっています。 「つくる会」の人びとは、一九九〇年代半ばから、現行の歴史教科書を「自虐的だ」と非難する運動をおこし、「自国の正史を回復するため良識ある歴史教科書」をつくると宣言してきました。そして、二〇〇〇年四月、自分たちがつくった「教科書」の検定を文部省に申請しました。他方、まだ検定申請中であるにもかかわらず、執筆者や発行元は、いわゆる「白表紙本」をテレビで見せたり、採択を促すために事前の学校訪問をおこなったり、さらに地方議会の決議を求めるなどの運動をおこなってきています。
 私たちは、所定の手続きをへて教科書を発行する権利自体は、誰もがもっていると考えています。しかし、歴史教科書はもとより、いずれの教科の教科書でも、教科書であるならば求められるべき最低の基準があるはずです。それは、少なくとも「教科書に虚偽・虚構があってはならない」ということではないでしょうか。
 一八九〇年前後から一九四五年の敗戦にいたるまでの日本では、国家や軍の機密、あるいは皇室に関することは、たとえ事実であっても、自由に話したり、記録して公表したりすることができませんでした。歴史教育の目的は、天皇に忠義を尽くす「臣民」をつくることであり、歴史教科書は子どもを「臣民」の鋳型にはめるためのものとされました。これに合致しない事実は退けられ、架空の物語が日本の歴史教育の根幹を占めました。こうしてつくりあげられた独善的で排外的な意識や思想にもとづいて、日本と日本人は戦争をくりかえし、内外に多大の犠牲を強い、ついにはあの惨たんたる敗戦を迎えるに至ったのです。私たちは誤った歴史教育がはたしたこの重大な役割を忘れることができません。
 ところが、いままた、架空の物語によって子どもたちを教育しようとする「歴史教科書」が、この日本に登場しようとしているのです。「つくる会」の「歴史教科書」については、新聞などですでに報道されているように、さまざまな批判がおこなわれていますが、私たちは、とりわけつぎの二点について注意を喚起するものです。
 第一は、記紀神話をあたかも歴史的な事実であるかのように記述していることです。たとえば「神武天皇の進んだとされるルート」を地図入りで示すなどして、「神武東征」をあたかも歴史的な事実であるかのように描いています。また、学問的な研究をいっさい無視して、「神武天皇即位の日」を「太陽暦になおしたのが二月十一日の建国記念の日」であるとまで書いているのです。
 全国の学会・個人によって構成されている日本歴史学協会は、一九五二年から今日まで、一貫して「紀元節の復活」に反対しつづけてきていますが、それは学派のいかんを問わず、神話を歴史の事実とすることはできないという歴史研究者・歴史教育者の共通の認識があってのことです。
 第二は、近代日本のあいつぐ戦争を正当化しているばかりでなく、「大東亜戦争」はアジア解放のための戦争だったと描いていることです。日本はイタリアやドイツと同盟を結んではいたが、ムッソリーニのファシズムともヒトラーのナチズムとも違い、人種差別反対を国の方針としていた、「大東亜会議」の際の「大東亜共同宣言」(一九四三年一一月六日)は、一九六〇年の国連総会での植民地独立付与宣言と同じ趣旨のものであった、とまで書いています。
 しかし、大日本帝国が一九四五年の敗戦を前にしても、なお「朝鮮ハ之ヲ我方ニ留保スル」との方針をとり、あくまで朝鮮を植民地として維持しようとしていたことは、日本政府が公表している文書からも明らかです〔一九四五年五月一四日、最高戦争指導会議構成員会議「対ソ交渉方針」(我譲渡範囲)〕。こうした事実を無視して、大日本帝国があたかも「植民地解放の旗手」であったかのように描き出すのは、まさに歴史をゆがめ、「現代の神話」をつくりだすものと言わざるをえません。
 敗戦後の日本の歴史学・歴史教育は、国民を戦争へと導くのに大きな役割をはたした戦前の歴史学・歴史教育のあり方に対する深い反省から出発し、多くの学問的な成果をあげてきました。「つくる会」の「教科書」は、歴史の真実をゆがめるばかりでなく、こうした歴史学・歴史教育の学問的な達成を真っ向から否定する非科学的なものでもあります。
 私たちはこのような「教科書」を日本政府が公許し、それが採択されて、子どもたちの歴史教育に供されることは、まさに敗戦に至る戦前のあの独善的な歴史教育の復活に道をひらくものだと考えます。同時に、教科書検定基準に「国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」との一項を設けた日本の国際的な約束に背くばかりか、平和と民主主義を希求する世界、とくにアジアの世論に挑戦するものであり、日本を国際的な孤立に陥れるきわめて危険なくわだてにほかなりません。
 私たちは、歴史研究者・歴史教育者としての自己の良心にもとづいて、このような「教科書」が登場することに対する深い憂慮を、広く日本の内外に表明するものです。

 2000年12月5日

呼びかけ人(五〇音順)
朝尾直弘 甘粕 健 網野善彦 荒井信一 粟屋憲太郎 猪飼隆明 石躍胤央
伊藤康子 井上勝生 入間田宣夫 岩井忠熊 江口圭一 笠原十九司 糟谷憲一
門脇禎二 鹿野政直 木畑洋一 君島和彦 木村茂光 木村 礎 工藤敬一 小沢 浩 小谷汪之 小林昌二 小松 裕 佐々木潤之介 佐藤宗諄 鈴木良 高沢裕一
田港朝昭 堤啓次郎 戸沢充則  直木孝次郎 中塚 明 永原慶二 西川正雄
橋本哲哉 浜林正夫 林 英夫 広川禎秀 藤木久志 古厩忠夫 松尾尊_ 松島榮一 丸山雍成 丸山幸彦 峰岸純夫 宮城公子 宮田節子 宮地正人 村井章介 安井三吉 安丸良夫 弓削 達 吉田晶 吉田伸之 吉見義明 渡辺則文 和田春樹 脇田晴子
                (2月15日現在 賛同者829名)




3 2001年4月5月浜松市教育委員会への要請書

「つくる会」教科書に対する浜松市教育委員会への申し入れ

●2001年4月4日

以下16時30分に申しいれました。

浜松市教委御中                     2001年4月4日  
            声明・要請書           NO!AWACSの会浜松

 2001年4月3日、政府文部科学省は「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を検定合格としまし
た。わたしたちはこれに強く抗議するとともに、市教委がこの教科書を採択しないように強く要請しま
す。
 この教科書は、天皇制を賛美し過去の戦争をアジア解放のためのものと美化し植民地支配を合法と
する姿勢で書かれました。この立場は、戦争に反対することや植民地支配からの独立を求める行為を
犯罪・非合法とするものにほかなりません。「殺すな」「盗むな」「犯すな」などは人道・倫理の原則です。
 植民地支配、侵略戦争、性的奴隷など数々の戦争犯罪は、これらの原則に反します。人道・
倫理に反するこれらの行為を過去、国家は正当化しておこないました。戦争と植民地支配によってアジ
アの人々が持った被害の記憶を消し去ることはできません。また戦争や植民地支配を再び繰り返して
はなりません。
 わたしたちは浜松基地のAWACSに反対し基地の撤去を求め、戦争の準備に反対しています。かっ
て浜松基地はアジアへの空爆拠点でした。また特攻や航空毒ガス戦の拠点でもありました。このアジ
アへの加害・侵略の事実をふまえ、わたしたちは、浜松を再び派兵拠点にするなと活動しています。
 新ガイドライン安保という海外での日米共同作戦体制が進むなか、戦争を肯定する教科書が現れ
たことに対し、わたしたちは危惧を持つとともに抗議の意思をここに示すものです。浜松には多くの在
日外国人がいます。
 この教科書の偏狭なナショナリズムは外国人への排外主義を生み、浜松市民の国際的交流を阻害
するものです。
 わたしたちは市教委がこの教科書を採択することがないようここに要請します。市教委は、国際的
視野を持ち21世紀の平和と人権を担う人間の育成をすすめるべきです。
 こどもたちには生命の尊厳を示すべきであり、戦争を正当化してはならないと考えます。


浜松市教委へ教科書問題で再度要請書を提出!

 5月16日、NO!AWACSの会浜松が、浜松市教育委員会に「つくる会」教科書採択
について再度要請書を市教委・指導課に提出しました。

浜松市教育委員会御中                            2001年5月16日

               教科書採択についての要請書

 4月4日 教科書採択についての要請をしましたが、ここに再度要請します。
 わたしたちは5月2日最近の教科書問題についての学習会を持ちました。
 そのなかで、扶桑社版の教科書の問題点を確認しました。
 扶桑社版歴史教科書では過去の戦争が正当化されアジアに対する植民地支配や侵略
の史実が記されていません。また神話が史実のように描かれています。
 扶桑社版公民教科書では国益や国防の義務が強調され、民主・人権・平和の価値意識
が軽視されています。
 過去の戦争を正当化し、現憲法の理念を軽視し、声明の大切さや他国との友好の観点
に欠ける教科書の出現に、わたしたちはとても憂慮しています。なぜなら、この教科書は
子供たちを戦場へと誘導するもののようだからです。排外的なナショナリズムの強調は地
域での在日外国人との交流の妨げにもなります。
 わたしたちは今回の教科書採択に当たって、このような問題のある教科書を採択するこ
とがないようここに申し入れます。
 なお参考資料として、韓国政府による修正要求資料、日本の近現代研究者による扶桑社
版の誤りの指摘、の2点を添付します。
 採択関係者の皆さんがこの資料をお読みになり、この教科書の問題点を理解されること
を望みます。
 浜松市は先の戦争による市への空襲で3500人余りの市民が命を失いました。
 または浜松の軍事基地からは中国を始めアジア各地へと空襲に出かけ多くの人々の命
を奪いました。このような歴史を繰り返してはいけません。

4 新聞県内版に意見広告


「つくる会」教科書を採択させないための「意見広告」

「天皇中心神の国、戦争美化、平和憲法否定」の教科書を、
子供たちの手に渡してはいけません!


●最終で、賛同人525人、賛同費933350円が集まりました。

 
 去る4月3日、文部科学省は、内外から厳しい批判を無視し、「新しい歴史教科書をつ
くる会」(省略して「つくる会」)編集執筆の「中学校歴史・公民」教科書を検定合格させま
した。この検定で137箇所の修正がされましたが、この教科書の基本姿勢に何ら変るこ
とはありません。
 第一に、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼び、それが侵略戦争であったことを認
めず、アジア解放のための戦争であったとの立場がつらぬかれる一方で、韓国(朝群)の
歴史を侮蔑的差別的に記述し、「韓国併合」は”日本の安全と権益のためにおこなった”
としています。
 侵略戦争と植民地支配への反省は全くなく、むしろこれらを正当化・美化する記述とな
っています。
 また「従軍慰安婦」「強制連行」「皇国臣民化政策」、「731部隊」等の侵略の歴史事実
は全く無視され、南京大虐殺についても否定論の立場を一方的に記述しています。
 第二に、神話をあたかも史実のごとく記述し、「神武天皇の東征」地図を戦前の教科書
「国史」からそのまま掲載。古代から現代に至るまで、国民の中心に天皇が存在し、その
権威によって日本の歴史が動かされているとしています。
 戦後の歴史学の成果を全く無視し、まさに「天皇を中心とした神の国」の歴史観(皇国
史観)そのものになっています。
 第三に、戦後の国会によって廃止・失効となった大日本帝国憲法や教育勅語が礼讃さ
れ、大日本帝国憲法下で、いかに自由と人権が抑圧されたかの記述は全くありません。
 その一方で、日本国憲法9条を敵視し、「憲法改正」論を基調とした国防の義務・国家
への奉仕を強調しています。
 第四に、日本人行方不明事件を、何の根拠もないまま「北朝鮮による拉致問題」と断定
し、写真入りで一頁を使って掲載。「北」の脅成を煽る一方で、「日の丸・君が代」は歌って
当然、そうでなければまるで「非国民」であるかのごとき記述をしています。
 『公民教科書』も『歴史教科書』と共に排外主義と国家主義に貫かれています。
 まるで、戦前の国定教科書を思わせるようなこうした危険な教科書が、堂々と文部科学
省の検定を合格したこと自体、異常なことであり、まさに重大な事態と言わねばなりません。
 そして、現在、この教科書が他の7社の教科書とともに、来年度使用に向け全国各地の
教育委員会による採択委員会にかけられる運びとなっています。
 静岡県においても、この5月から7月にかけて13の採択区で採択委員会が持たれ教科
書選定が行われます。すでに、昨年12月県議会では、「つくる会」の請願(現場教員の声を
排除し、教育委員会主導の採択を求める趣旨)が採決されており、今後、「つくる会」が有
力政治家を使っての猛烈な採択活動を展開してくることが予想されます。
 この教科書が、子ともたちの手に渡ったら一体どうなるのか…在日朝鮮人、韓国人・中国
人の子どもたちが、この教科書で教わることとなったら一体どうなるのか…考えただけでも
暗たんたる気持ちになります。
 すでに、在日アジア人だけでなく、他の多くのアジア諸国からの人々がこの国に暮らして
おり、また日本の多くの若者たちもアジアヘ出かけ、さまざまな友好親善の輪を広げていま
す。
 こうした国際社会の中にあって、このような「つくる会」教科書が学校現場こ持ち込まれ、
独善的、排外的な教育がされるとすれば、アジアとの友好と信頼は損なわれ日本は再びア
ジアにおいて孤立することは避けられません。
 以上の思いから、私たちは、”「つくる会」教科書を子どもたちの手に渡さないため”の新聞
(静岡全県)への意見広告を出し、広く世論に訴え、この教科書を採択させないための運動
を進めていきたいと思います。
 ぜひ多くの皆様のご賛同と、「意見広告基金」へのご協力をお願いする次第です。

【呼びかけ人一同】
●「意見広告運動」の取組み
 ■「会」の名称…「つくる会」教科書を子どもたちに渡さないための意見広告の会
            略称として「意見広告の会」
 ■「呼びかけ人」の集約…前回の「声明呼びかけ人」を中心に集約しました。
 ■新聞への意見広告6月26日(火)の朝日新聞朝刊(静岡県版)に掲載。

5  6月浜松での市教委交渉・集会

教科書問題で浜松市教委交渉 6.20

 6月20日、市教委を訪れ、教科書問題で交渉した。
対応したのは市教委学校教育指導課副参事の内崎氏。申し入れ文を読み、説明した
あと、行動を共にした劉徳相さんが発言。

「韓国では教育者は尊敬されている。知識があり、良心的であるからだ。この状況
は日本でもかわらないと思う。歴史教育は事実を述べて後世に伝えるもの。誤りが
あれば是正して直すものだ。今回の歴史歪曲問題では、日本が自らの手で歴史を創
作し歪曲していることを危惧している。それは次世代にとって望ましくないことだ。

 過去にも歪曲問題があったが、今回は質的にちがうと考える。日本の侵略戦争は
アジア民衆2千万人を殺した侵略行為であった。日本政府はそれを反省せず今度は
歪曲している。日本が侵略戦争を美化することは美化にとどまらず、戦争の再発に
つながっている。

 日本人も戦争再発は望まないだろう。正しい方向に是正されることをここにもと
める。

 韓国民衆はとても憤慨している。なかには1965年の韓日条約を破棄し、国交
断絶をという人もいる。他国のNGOとも連携し、韓国内だけではなく、国際的な抗議
行動が始まった。6月12日には71カ国の日本大使館前で抗議行動がおこなわれたが、
これははじまりにすぎず、この動きはもっと広がるだろう。

 良心的教育者が先頭にたって日本の教科書の歪曲を正してほしい。とくに浜松の
教育者が先頭にたってほしい。

 ドイツでは55年前の戦争犯罪を今も追及し処罰している。このため韓国の人々は
ナチスを憎むがドイツ国民を憎まない。日本もそうあってほしい。

 この発言をふまえ、対応した市教委に私たちは「過去の日本の戦争はまちがって
いたと考えるのか」を質問した。

 内崎氏は「はっきいいえない」「そのときの状況は理解していない」「知らない
から」と答えた。

 戦争全般は「よくない」としながら、日本の過去の戦争について善悪の評価をお
こなわない姿勢を市教委幹部はしめした。「韓国への植民地支配についてはどう考
えるか」と追及するとこれに対しては韓国人を前に「まちがっていた」とやっと答
えた。

 このような市教委の姿勢は「つくる会」の日本の戦争を肯定しアジア解放のもの
とする考えを容認することになる。

 私たちは指導課に再度、過去の日本の戦争についての価値判断を示すよう要求し
た。

 劉さんは最後につぎのように発言した。
「福岡の教委を訪れたとき問題はあるが、日本人も良心的な人がいると思った。し
かし、浜松では大変失望した。戦争は特定の人々が特定の目的をもっておこすもの。
それにより、破壊と民衆の犠牲が生まれる。戦争をおこすことは許せないことだ。
 市教委は日本の戦争について責任ある発言をしない。とても残念だ。憤りを感じ
ている。韓国には反日感情が大きくあったが、良心的な人々の努力で文化開放にす
すんできているのに。国際化のなかでは正しい歴史認識による国際理解・友好が必
要なのだ。

 今解決しておかなければ収拾できないことがあるのだ行動しない良心は良心では
ない。行動する良心を持ってほしい。

 劉さんは怒りを抑えながら、日本の過去の戦争をまちがいと認めない市教委幹部
に対しこのように発言した。 日本の侵略戦争はアジアの人々に対し「殺し、奪い、
犯す」ものであった。「慰安婦」問題は、侵略戦争の犯罪性を象徴している。

 「日本の戦争はまちがっていた」の一言がいえず、スマイルで対応している市教
委幹部の対応は教委への市民の不信感を増幅させるばかりである。 映画『プライ
ド』をかつて市教委が推薦したように市教委内部には過去の戦争を肯定する勢力が
根をはっているように思われた。


歴史歪曲NO!韓国民衆の声
劉徳相さんの話

6.20集会での発言(文責:NOAWACSの会)

●軍拡のなかでの歪曲教科書の登場

 さきほど浜松基地を案内されAWACS・広報館などの軍拡の状況について学び、市教委への
申し入れにも参加した。

 ここでは教科書問題をテーマに発言する。

 歴史は小説のように創作するものではない。歪曲された歴史を学生に伝える教科書は望ま
ない。なぜ誤った記述で教育させるのか、その背景を考えることが大切だ。

 日本は過去にアジアを侵略し、2千万人の犠牲者を生んだ。日本人も300万人死んだ。
朝鮮戦争でも300万人が死んだ。戦争は人類の一番の悲劇だ。けれども日本は謝罪や賠償
をせず、歪曲をはじめた。それは戦争の美化であり、再び戦争をおこすことにつながる。日
本に来てたくさんの人と会ったが、再び戦争のおきることへのおそれからいまの運動がある
ように思う。

●民衆の記憶に残る侵略

 日本は1905年に保護条約を強制し、1907年に軍事権を奪い、1910年に併合条
約をデッチあげた。「植民地支配でよいことをした」というが、それなら反対運動はおきな
いだろう。
1919年の3.1独立運動では1万5千人余が殺され、投獄は3万余に及び、
多くの建物が破壊された。日本の支配に我慢できず、抵抗運動がつづいた。
 慰安婦問題を
みれば、これは女性を連行し性的虐待を与えた残酷なしうちだ。3年前、国連人権委員会は
日本政府に慰安婦問題の解決を公式に要求したが、日本は解決しようとせず、今度は教科書
から削除した。

 私たちはこどものころから父や老人たちから生々しい記憶を聞かされてきた。裏山には抗
日運動メンバーの所在を吐けと訊問され、殺された人々の跡があったりする。家庭から銅の
箸・お椀を日本軍の武器作りのために持っていかれた。韓国社会での日本の印象は悪かった
が、時代とともに交流は深まり、文化開放がさかんになった。

国際的拡がりをもつ抗議運動

 韓国の市民団体は結集して歪曲教科書の是正問題をしている。なかには日韓条約を破棄し、
国交断絶も辞さないという意見もある。韓国での運動は一時的なものではなく、国際的連帯
をもって全世界的にすすめられていくだろう。先日も71カ国の日本大使館前で一斉抗議行
動がとられた。

 韓国内では、ドイツ政府がナチスの戦犯処罰を現在もおこなっていることから、ナチスは
憎むがドイツ国民を憎みはしない。現在の日本の歴史歪曲は特定の人々によるものであり、
日本の良心的な人々の是正運動の存在も知っている。

●歪曲の背後にある軍事戦略

 なぜ歪曲するのか、その背景について考えたい。
 歪曲は日本の軍国主義化、平和憲法の改悪の動き、米軍事戦略の展開のなかでおきている。

 米の軍事戦略をみれば、5月にミサイル防衛戦略を示し、軍拡をすすめようとしている。
米は南進戦略をすすめ、新たな軍事基地建設をねらっている。日本と韓国を前進基地とし、
フィリピンやベトナムにも基地をえようとしている。

 それを実行するために米韓日の軍事協力が必要になっている。そのために、日本の平和憲
法をかえ、新ガイドラインにより、日本の正規軍が海外で共同の軍事行動ができるようにし
ようとしている。米は日本へと海外作戦の可能な兵器の購入をもとめ(たとえば空中給油機)
共同軍事訓練を拡大させ、国連の平和維持活動での軍事参加をもとめている。

 韓国の民衆運動は韓国内での軍事費、米の国防費縮小や、基地撤去を求めている。
 日本は経済危機にあり、浜松でも学んだが、たくさんの野宿者を生んでいるのに、かれらを
救わず、米の高価な武器を購入しようとしている。

 歴史歪曲の背景として以上のことも考えるべきだ。

●右傾化のなかでの連帯を

 最近韓国内で民主労総や民衆連帯を名ざしし「左翼が国をおびやかしている」という発言が
あった。米ブッシュ政権成立直後、イラク攻撃がおこなわれた。改憲を掲げる小泉首相への高
支持率も問題だ。歪曲教科書をすすめるグループは権力と癒着している。米日韓に右傾化の流
れがある。

 今日、市教委に申入れし、学校教育部指導課の担当者と話をした。かれは一般的な戦争はよ
くないといったが、過去の日本の戦争について善悪の判断はしなかった。だれもが平和を愛し
戦争に反対するというが、正しい歴史を教えることが戦争への道を止めることになるのに。

 いまこそ正しい歴史教育による日韓の友好・交流をこれまで以上にすすめよう。多くの努力
が必要だ。

 日本の良心的な人々は国際的な未来をもつ人々だ。皆さんとともにがんばれば、歪曲をただ
すことができると考える。

*集会では浜松・静岡の現場教員の発言、元兵士からの「政府にあやつられず平和を守ろう」
とのアピールがあった。つくる会(民間右翼)が政府内部に根をはり、一体となって歪曲をす
すめている現実、県教委内にも「つくる会」支持者が存在することなども明らかにされた。

 アピール採択ののち、韓国の民衆抵抗歌「朝露」「ソウルからピョンヤンまで」「あなたの
ための行進曲」を
NO!NO!Bandの演奏で合唱し、集会はおわった。


2001年静岡県では「つくる会」の教科書の採択はありませんでした。