2010・3 富山第2次不二越訴訟控訴審判決                   

201038日、第2次不二越訴訟の控訴審判決が名古屋高裁金沢支部であった。判決は原告の賠償請求を棄却するものであり、原告らは裁判所内外で激しく抗議、「真の謝罪と補償がなされるまで、命の限り闘う」と宣言した。

富山市に本社工場がある不二越は、戦時下の1944年から1945年にかけて、朝鮮人の女子勤労挺身隊と徴用工、計1600人ほどを強制連行した。第1次訴訟は、1992年に被害者3人が原告となって、不二越に対して賠償を求めておこされた。地裁、高裁と原告の請求は棄却されたが、2000年に最高裁段階で、原告やカリフォルニアで提訴を予定していた被害者らに不二越が「解決金」(金額は非公表だが4千万円以下という)を支払うことで「和解」した。不二越はその際、謝罪をしなかった。

2002年、不二越に他の被害者が未払い金などを求めたところ、不二越側は「解決済み」と対応したため、2003年に23人が原告となり、第2次訴訟がはじまった。第2次訴訟では国の被告として加えている。2007年に地裁は原告の請求を棄却した。原告は控訴し、今回の判決となったわけである。判決は日韓請求権協定により裁判上請求する権能がないとして控訴を棄却するものであるが、他方、国の国家無答責を採用せず、国と不二越の共同不法行為を認定し、不二越の債務不履行も認定するというものだった。

判決の翌日の39日には、富山の不二越正門前で抗議集会がもたれた。吹き荒れる雪の中、原告たちは正門前に座り込み、不二越による事実認定と謝罪・賠償を求めるアピールをおこなった。また、抗議集会後には南門などでの抗議行動もおこなった。

抗議集会では、参加した原告の自己紹介がなされた。原告は次々に発言し、「とんでもない判決!」「裁判官の資格はない!」「抗議したら手足を持って排除された」「死ぬまで闘う!」など、最後まで闘っていくという強い意志を示した。

       

連帯のアピールでは、石川県七尾での中国人強制連行裁判の原告も参加し、不二越の門前で闘うみなさんの姿に感銘を受けた、勝利に向けて共に闘いをすすめると決意を述べた。さらに、これまで朝鮮人女子勤労挺身隊訴訟に関わってきた東京、名古屋、福岡、静岡の仲間が挨拶をおこない、大阪の関西生コン労組は労働運動弾圧の経験をふまえてアピールした。

その後の報告では、原告と支援は東京に行き、312日に国会要請・院内集会と不二越東京本社への要請行動をおこなった。しかし、不二越は面会を拒否するという対応だったという。    

不二越裁判については、第1次訴訟の裁判記録『不二越訴訟裁判記録』(3)が発行されている。それを見ると、不二越には供託金明細書などの供託金関係資料、朝鮮人労務者調書や従業員名簿などが残存していることがわかる。それらの資料は日本政府に提示され、日本から真相糾明をすすめている韓国政府へと渡されるべきものである。

また、2008年に発見された大蔵省の『経済協力 韓国105 労働省調査 朝鮮人に対する賃金未払債務調』という文書には、富山県の軍需工場関係の朝鮮人の供託金や未供託金の状態が記されている。その史料には、不二越鋼材をはじめ、日本鋼管富山、日本高周波、扶桑(住友)金属工業、保土ヶ谷化学、日本海船渠、日本マグネシウム、燐化学工業、立山重工、日本カーボン、日本曹達高岡、日本カーバイト魚津、日本人造黒鉛、日通富山支店、伏木海陸運送などの富山の事業所もある。これらの事業所を含め、富山の工業地帯での朝鮮人強制労働の実態についての解明も求められている。

以下は、第2次不二越訴訟原告団の判決への怒りの声明文である。ここには、門前に座り込み、勝利にむけて死ぬまで闘うという強い想いがあふれている。

声 明      

本日の高裁「棄却」判決を徹底弾劾する。

提訴から7年。我々の決意は、もはやいささかも揺るがない。植民地支配・企業の戦争責任を追及して闘い続けることを宣言する。明日の富山不二越行動は、その第一弾である。

歴史の真実を覆い隠すことはできない。皇民化教育によって本名も言葉も奪った。「勉強できる」とだまして連れてきて、軍需工場で重労働を強いた。これらは、ほかならぬ日帝と不二越が、我々に対して犯した戦争犯罪である。

すでに4人の仲間が亡くなった。居直り続けるなら、我々は未来永劫不二越を許さない。そして、韓国はもとより、世界がその門から、反省なき戦犯企業を閉め出すであろう。未来への扉は固く閉ざされ、二度と不二越のために開かれることはない。おまえたちこそが歴史によって裁かれるのだ。

我々は、真の謝罪と補償がなされるまで、命の限り闘う。民族の怒りと恨を胸に、何度でも門前に立つ。

不二越は歴史を直視し、真摯に反省せよ! 

2010年3月8日 第2次不二越訴訟原告団