「韓国・梅香里は今」  講演会の報告

 2000年12月16日、「韓国・梅香里(メヒャンリ)は今」〜すすむ南北統一と反基地運動・梅香里での米軍基地撤去をめぐる動きを中心に〜
と題する講演会をNO!AWACSの会主催で開催した。

 梅香里でのアメリカ軍の爆撃訓練に対する抵抗の闘いは、梅香里だけの闘いではなく、アジア全体の世界全体の平和のための主権の回復の闘いである。そういった点では浜松でのNO!AWACSの闘いも本質は同じである。新ガイドラインは、民間の反対運動を封じ込めるためのものであり、逆に民間にたがをはめなければ、軍事は動かない。私たち自身の生活感=基地への怒り、疑問、不信、必要のないものだという運動がひつようである。また、自衛隊員やその家族の反戦意識は最近高くなってきている。それは、戦争が現実的になってきている現状で、戦争には行きたくないという気持ちが当然出てくるからである。そういった意味では、自衛隊員への働きかけが日常的に行われることが必要である。
 また、浜松基地広報館をみたが、日本では攻撃を受ける立場から見るという姿勢が全くない、だから広報館では子供たちに戦闘服を着せてかっこいいとおもう、思わせるという発想が生れてくる。展示物をみても、全て攻撃をする側からの展示で、攻撃を受ける立場からのものはひとつもない。広報館をなくすという運動は絶対に必要である。などの提起がされた。(講演の詳細に関しては後日報告)
講演会の最後に下記の二つのアピールを採択し、浜松市長には12月18日(月)に直接浜松市役所へおもむき、手渡すことにした。

 12月18日、6人の仲間とともに、市役所を訪れ、市長に空中給油機の導入に反対する市民の署名と集会アピールの受け取りを要請したが、市長は姿をあらわさなかった。すでに、五年もの間、反戦・平和の市民の声を聞いて欲しいと、要請をしつづけてきているが、ここにきても市長本人は全く姿すらだそうとしない。浜松が再び派兵拠点となろうとしている現在、市民の安全を守る立場の市長の反戦への姿勢は重要である。今年9月、空中給油機の導入が計画されていることに対し、市議会が慎重を期すよう意見書を政府・防衛庁に提出したが、市長の立場はまったく明確になっていない。流れの中で事後の対応を考えるのではなく、市民の平和を求める気持ち・声を聞き、先頭にたって平和へのアピールをすることが今求められているはずである。(s)


金大中大統領様
2000年12月16日
NO!AWACSの会・浜松

 私たちは日本の平和団体です。
 私たちは、あなたが朴政権下で殺されそうになったとき“殺すな”と心をあわせました。私たちは今、日米新ガイドラインと浜松基地の強化に反対し、南北の平和的統一と韓国梅香里の反基地平和運動を支持します。私たちは軍事よりも民主・人権を大切にします。
 私たちは梅香里の人々の尊厳が回復されるような統一を望みます。梅香里での反基地運動への弾圧は中止して下さい。平和へのとりくみに警察権力が介入するのを止める力が、弾圧下で民主・人権を求めたあなたにはあるはずです。
 21世紀は軍隊のない社会であってほしいと思います。軍事基地の撤去=非軍事化をすすめる先頭にたって下さい。
 まず梅香里から基地を撤去することで、非軍事化の第一歩とされることを強く要請します。



浜松市長様
2000年12月16日
NO!AWACSの会

集会アピール

 本日私たちは南北朝鮮の統一と梅香里での民衆の米軍基地撤去を求めての運動について学びました。
 平和的統一は日米が軍拡をやめ対話を支持することによってさらにすすみます。浜松基地に配備されたAWACSや導入されるという空中給油機は朝鮮半島での戦争を想定する日米新ガイドラインを象徴する軍用機です。私たちは朝鮮半島での民衆の平和的統一と基地撤去にむけての想いをここに共有します。
 そして、浜松市長がAWACSと空中給油機に反対する意思表示をおこなうことをここに強くもとめます。

12.16集会

韓国 梅香里の反基地運動

12.15 NO!AWACS集会での都裕史さんの話(要約)〜

●はじめに

 私は日本で生れ育った在日2.5世(父は1世、母は2世)です。佐世保で生まれ、今は大阪で生活しています。インターネット上で韓国の反基地の動きを紹介し、ここ半年は梅香里の動きを中心に報告しています。私は中学生のころから祖国に行きたいと思っていましたが、28年めにしてやっと韓国を訪問できました。私は日本で韓国の民主化運動に参加してきました。韓国には今も反共治安立法といえる国家保安法があり、最高刑で死刑で、これによって民主化運動や統一運動、そして米軍問題は大きく制約を受けています。また、いまだに「民主化された」祖国に自由往来できない韓国人も存在しています。

今年は南北統一にむけての動きが高まった年でしたが、日本の植民地支配とその後の米軍統治と分断は20世紀朝鮮の受難の歴史でした。沖縄差別と同様、日本からはそれがみえないのですが韓国からはよくみえます。浜松でAWACS、安保と軍事がみえても他からはなかなかみえないように、日本は平和ボケというよりも豊かさボケの状態だと思います。

●在韓米軍と犯罪・軍事文化

 韓国内には3万7千人の米軍が駐留しその中心は陸軍で、ソウルに司令部があります。旧日本軍の基地を中心に全国96ヶ所に米軍専用施設があります。韓米駐屯軍地位協定(SOFA)は完全な不平等条約です。米軍犯罪、その多くは交通事故ですが、1日平均5件おきています(沖縄では1日4件)、この前の殺人犯である米軍に対する判決では売春婦の殺害に対し6年刑でした。それも、1審8年の刑から「大韓民国の国土防衛に貢献した」という理由で米軍人の刑を減刑したのです。米軍は韓国で特権をもち、米軍犯罪に対しては殆ど泣きね入りの状態が続いています。ちょうど沖縄と似通った状態です。

 米軍(軍隊)がいると、そこに必ず犯罪がおきます。現場の兵士は人を殺し、物を壊すことが仕事です。発想が軍事文化のなかで粗野になりがちです。まじめに暮らしていくという根拠が兵士には乏しいのです。金がなくなると犯罪をおこすため、米軍は兵士に2週間に1度給料をわたすようにしています。一度に渡すとすぐに使ってしまう。そして無くなると犯罪を犯すようになると言うわけです。

 浜松基地の空自広報館を今日案内されて見ましたが、軍事文化に子どもをそめていくところです。戦闘機シュミレーションやビデオ映像を通しては、武器を撃つ側から見て、撃たれる側からみることができなくなるのです。

●梅香里の米軍基地

 梅香里は京畿道華城郡にあり、ソウルから約60キロほどの村です。陸上射撃場と海上爆撃場があり、米軍の国際爆撃場としてF15・A10(対戦車攻撃)などが訓練をおこなっています。1951年に法的根拠もなく設置され拡張されてきました。地上すれすれに爆撃機が飛び、24時間の爆撃訓練、1週間余の夜間訓練もおこなわれます。

 攻撃機のキーンという騒音は住民に異常なストレスを与えます。人間の神経を破壊し、人間の中の大切なものを喪失させます。現地・梅香里住民被害対策委員長の全晩奎さんの父は謎の自殺をしました。全さんは祖父の代からの住居を売り払ってまで闘争を継続し、いまは公民館の一室を借りて親子5人で生活しながら、13年間孤立無援のたたかいをすすめてきました。地域では家畜の異常分娩、子どもたちの非行率の増加、ストレスによる自殺の増加などがおきています。なかには米軍の実弾演習で臨月の妻を撃ち殺され、その後に基地の警備員として雇用を得たが、ストレスと酒で自殺した人もいます。住民が眼下にいると、パイロットは緊張感を高めることができる。つまり、梅香里は米軍にとって爆撃のシュミレーションができるAランクの爆撃場であるというわけです。梅香里には砲弾のカラがゴロゴロところがっています。重金属による地域汚染の深刻な問題もあります。

●梅香里での反基地闘争

 2000年5月8日、米軍機が事故のため爆弾6ケを投下する事件がおきました。韓米の合同調査団は6月1日「直接被害なし」の報告をおこないました。翌日住民の闘いがはじまり、今日のビデオにあったように全晩奎さんは基地内に入り、オレンジの旗を引きさいて連行されました。全国から人々が結集し、汎国民対策委が結成され、梅香里での反基地運動がたかまりました。7月、私も梅香里へ行き、連帯のアピールをしました。そのとき、闘いのビデオを見て、約20分に編集してもらって日本語文をつけ配布しています。8月18日に、陸上の射撃演習と海上での実弾射撃を中止させました。9月には機動隊が梅香里への道路を封鎖するなか闘争がおこなわれました。鉄条網をひきちぎり、内へと突入した人々もいました。グッズをつくったり、中学生を案内したりする活動もすすめています。黙認耕作地もあります。ただしその土地は、元々住民のものであったのを廉価で挑発され、今は逆に賃貸料を支払って工作している状態です。

 韓国では26ヶ月間の徴兵制があり、軍隊から戦闘警察へと派遣され、住民や学生らを強く弾圧しないと上官にリンチをうけることもあるそうです。けれども機動隊員が運動側にカンパをわたすこともあると聞きました。梅香里の管理はロッキード社がおこない、抗議しても米軍は直接住民の前に出てきません。

 2月、ソウルの米軍基地から漢江へとホルムアルデヒドの流出事件がおき、内部告発されました。これまで一度も韓国民に謝罪したことのない米第8軍司令官が、広報官に読ませる形で謝罪しました。

 朝鮮戦争下、米軍による韓国民の大量虐殺事件(老斤里など)も明らかにされました。50年間言えなかったことが言えるようになったのです。米軍は虐殺を認めましたが、上官の命令によるものではないとしています。

 10年前では考えられなかった韓国民衆によるたたかいが生まれてきています。梅香里の反基地、ホルムアルデヒド流出事件、朝鮮戦争下での住民虐殺、この3つから、米軍が自分たちにとってどういうものであるのかが南北統一の流れと一体になってみえてきたのです。

 米国防省は反米感情が高まり、駐屯上のリスクが発生する場合、日本の岩国基地をのこし、それ以外から撤退することも視野に入れているといいます。かつて駐留は天国でしたが、今はいいことがあまりない状況においこまれています。

●地域からの主権の回復とネットワークを

 先日、小樽、函館へ行きました。現地では非核条例運動がすすんでいます。米軍の民間港への入港を止めようと市民が立ち上がっています。キティホークなどの空母は数十階建てのビルの大きさであり、そこに数千人が居住しているわけですから、その入港は1つの基地が入ってくることなのです。自治体・民間の協力なくして空母は動けないのです。キティホークが入ると港湾のタグボートのみならず外出用にNTTの専用電話まで使われるのです。日本の不沈空母化がねらわれ、新ガイドライン下、周辺事態法が制定され、有事立法の準備もすすんでいます。

 しかし、政府は主権者である住民を恐れています。市民運動のネットワークがこわいのです。現実は永田町からではなく地方からかわります。非核神戸方式は力を持っています。自治体が港湾の権限をもつことは米軍の軍事機能をマヒさせることにつながります。防衛庁も気を使わざるをえません。

 浜松基地の周辺に最近目かくしの白いボードが貼られているのをみました。何をかくそうというのでしょうか。皆さんのねばり強い活動が力です。市民の声を防衛庁は恐れています。

 平和のための市民による主権の回復をめざす具体的な運動と連帯が戦争の道を阻むと思います。

 米軍基地による環境汚染についていえば、基地内の土壌を採取してみると鉛・PCB・ヒ素などの汚染があります。日本の基地も同様だと考えられます。

 今自衛隊員はいつ戦場に送られるかもしれないわけです。反戦意識は強いわけですから、自衛隊員に話し働きかけることも大切です。

 軍隊・基地は基本的に横暴なものです。軍隊は住民を守らない。犯罪は必ずついてくる。“生まれは偶然、愛は選択、殺人は仕事”これが駐韓米軍の「標語」になっています。軍隊の発想です。土壌をはじめ環境汚染がすすみます。生命と土を守ることは民衆の権利です。

 日本は軍事大国となっています。侵される側から考える視点が大切です。差別される側からみると真相がみえます。アジアの人々は日本人を信用していない。相手の足を踏みながら握手をしているからです。戦後処理をせず心から謝罪をしていません。さらに軍備強化もすすめています。

 平和を求めて地域ではいつくばって活動している人々とのつながりをつくっていくこと、AWACSや空中給油機に反対する人々との交流と信頼関係の形成はできます。

 地獄にむかう「日本丸」という船の進路を変える力をもちましょう。自分たちの子どもたちをこのままこの日本においておくことはできません。“戦争があれば景気がよくなるのに”と飲み屋でオジサンが平気で語る時代に入りました。

 “テポドン”“拉致”などのマインドコントロールに日本の民衆は馴らされ、異常がすすんでいるのがみえない。

 この状況に勝つには地域での血のにじむ取りくみがなければと思います。

(文責:NO!AWACSの会)