4月6日池田五律さんを講師に招いて集会をもった。参加者は20人。 以下、集会での発言を要約する(文責NO!AWACSの会)。
●はじめ カンボジアへのPKO派兵のときにはおおきな反対行動がくまれたのですが、今回の東チモールPKO 派兵への抗議行動への反対の取り組みはおおきなものとはなりませんでした。現在、自衛隊のインド 洋への派兵、ゴラン高原へのPKO派兵、東チモール派兵にみられるように、派兵が日常化しています。 練馬での動きを見ると,隊友会につながる人々が区による自衛隊募集業務の積極化をもとめたり,民間 防衛につながるおそれのある総合防災訓練が企画されたり,朝霞駐屯地に陸自の広報館が開館(4・6) したりの動きがあります。東京都がおこなったビッグレスキューのスローガンは「首都を守れ」であり「都 民を守れ」ではありません。
●有事法制化の現在の動き いま政府は、「武力攻撃事態への対処に関する法制」として、包括法案(首相が対策本部をつくり自治 体に指示を出すなどの法整備と米軍の行動に関するものや民間防衛などのいわゆる第3分類などにか かわる法整備などを今後進める),安全保障会議設置法「改正」案,自衛隊の活動を円滑にするための 自衛隊法「改正」案、などの3法案を準備しています。
●有事概念について 広義の「有事」とは戦争・内乱・天変地異その他の非常事態をさしています。ここには金融危機も含まれ ます。「国家緊急権」概念についてみておけば,非常事態となり平常時の統治機構では対処できず、政府 ・軍が特別な権限を与えられ緊急措置をとる権限をいいます。この制度化については1968年のドイツ の緊急事態憲法が参考になります。この分類にしたがえば、周辺事態法は「同盟事態」,不審船事件は 「部分的緊急事態」にあたるといえるでしょう。 この間,「安全保障」や「危機管理」という概念が盛んに使われてきました。総力戦による戦争ののち,安 全保障概念による防衛論が立てられました。そして「潜在的脅威が存在する」という想定のもとに、19 47年アメリカでは国家安全保障法が制定され、冷戦下,平時でも脅威に備えての危機管理が論じられ るようになりました。こうして、戦時と平時の区別がなくなってきています。
●日本での有事法制研究 自衛隊制服組による先行研究である「三矢研究」では第2次朝鮮戦争を想定し、国家総動員に向けて 必要とされる法案88件を戦争勃発後2週間で成立させるとされていました。ここでは戦前の戒厳令や 総動員のイメージが強かったといえます。 1970年代半ば以降の動きについてみると、75年ころから、政府により正式に有事立法を準備する という線での防衛官僚と制服組との合意が成立し,77年8月、政府は有事法制研究に着手します。こ の動きを受ける形で78年8月栗栖統幕会議議長が自衛隊の超法規的行動についての発言をします。 ちょうど「旧ガイドライン」が結ばれ,日米の共同軍事作戦計画が策定されていく時期です。 81年に有事法制研究の第一次中間報告(第1分類―防衛庁関連),83年に第2次中間報告(第2分 類―運輸等の他の省庁関連)がだされます。第2分類の中間報告では部隊の移動輸送,土地の使用, 構築物の建造,電気通信,火薬類取り扱い,衛生医療,戦死者取り扱い,会計経理などについて、解釈運 用で処理可能なこと,特例措置があらたに必要なもの,今後整備すべきことなどが細かく分類されてい ます。 一方、成田治安立法,大規模地震対策特別措置法などに見られるように,治安・テロ・震災を口実に 有事法制を作っていく動きもあります。 90年代になると,有事に米軍を受け入れる「ホストネーションサポート」の整備をすすめます。また、 日本の海外派兵がすすみます。そして日本国家全体の再編もすすみ、省庁再編や地方分権の名に よる集権化がおこなわれていきます。 冷戦体制の崩壊以後,災害対策を利用しながら国家は権限を強化してきました。自衛隊は災害派遣・ テロ・邦人救出・PKOなど何でもやって生き残りそれを通して権限を獲得してきたともいえます。 9・11以後,テロ対策特措法が制定され,警護出動が新設され機密保護義務も導入されました。さら に先に述べたような形で有事法制化がすすめられています。「有事法の自己増殖」という言葉に見ら れるように、有事立法はさらにあらたな有事立法を必要とします。
●新たな戦争の時代に反戦の運動を 「軍事における革命」といっていいほど、「戦争」形態が変化してきています。総力戦の時代から,社 会の中枢を麻痺させる情報戦の時代となりました。社会の要になるものを破壊して社会を麻痺させ 壊滅させていく戦争がおこなわれています。相手を政府とせずに,個人やグループとし、すべてを危機 管理の対象として、エシュロン・軍事衛星・CIAなどで監視するわけです。そして得た情報を情報評 議会で総合する。宇宙空間から情報により空から攻撃する。地上では特殊部隊が作戦の中心を担 う。「テロ支援国」をも侵略者として攻撃する、このような形の戦争がおこなわれているのです。 この中で利益をあげているのは投資家や軍事産業です。情報管理の中で、非常時であっても非 常時を感じない状況が作られています。自衛隊の輸送に民間フェリーやクロネコヤマトが利用され ている現実もあります。このような状況ですが、「軍隊があるほうが危険である」という論理の展開 が必要であると思います。 東京では有事立法阻止に向けて、連日の行動が計画されています。浜松の皆さんの参加を呼び かけて話を終わります。
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