03・5.24集会 米朝関係と平和運動の課題 報告

イラクにも朝鮮にも平和を

渡辺健樹さんの話(文責:NO!AWACSの会)

 私は5年前にNO!AWACS全国集会に参加しました。朝鮮で戦争になれば浜松基地・AWACSの役割も増すと思います。父は静岡県西部出身で、親戚もあります。今回はなしをする機会を得て、うれしく思います。

●1990年代の米朝関係

 湾岸戦争と朝鮮の核疑惑とは相関関係にあります。湾岸戦争は冷戦後の西側同盟の再結束の側面を持っていましたが、東アジアではアメリカは核疑惑問題を日朝正常化交渉の開始、南北合意などにぶつける形で出してきました。

 朝鮮半島の94年の核危機は寧辺への空爆を含め戦争発動寸前までいっていたことはクリントンの証言などでもあきらかです。このときのピョンヤン占領まで想定した「作戦5027」は毎年更新されて現在に至っています。

 この危機はカーターの訪朝をへて94年10月、米朝枠組み合意(ジュネーブ合意)となり、朝鮮は核を凍結し、アメリカは軽水炉建設・重油提供を約束しました。ここで重要なのはアメリカが核威嚇や攻撃をしない保障や経済制裁の緩和、国交の正常化への努力も合意の柱だったことです。2000年6月には南北首脳会談がおこなわれ、10月には朝鮮のナンバー3の趙明禄とオルブライト国務長官(当時)の米朝相互訪問が実現し、関係正常化寸前にまで進みますが、ブッシュ政権が登場したのです。

 ブッシュ政権は出発当初から合意を破ってきました。最初からジュネーブ合意の破棄が狙われてきたといえます。

 日米関係を見ると、核危機の中で1900項目に及ぶ米軍支援要求が出され、これを基礎に安保再定義、新ガイドライン、周辺事態法制定と続き、現在その最後の仕上げの形で、有事法制が出されているわけです。これらは「朝鮮有事」とセットになってきたことは明らかです。日本の戦争ができる国づくりが進み、集団自衛権の行使へと進みつつあります。 韓国内では、90年代後半から反米軍基地運動がたかまっています。これまでは国家保安法により利敵行為とみなされていた反米闘争が女子中学生の死亡事故にたいする闘争に見られるように大衆的な運動となってきました。この世論の中で盧新政権が生まれたのです。史上初めての全民族的な抗米闘争の段階に入ったともいえます。

●ブッシュ政権成立後の米朝関係

 ブッシュ政権による悪の枢軸規定、そして先制攻撃論は新たな核危機をうみました。ブッシュは朝鮮の通常戦力の削減要求まで持ち出し、米朝交渉は暗礁に乗り上げました。

 第2次核危機はつくられたものです。ケリー国務次官補が02年10月に訪朝し、朝鮮側が「核開発を認めた」とされていますが、その証拠は示されていません。これを境にアメリカは12月分からの重油供給を停止し、IAEAは核査察を要求します。これに対抗して朝鮮側は寧辺の核施設を再稼動、IAEAの査察官の追放、03年1月にはNPT脱退を宣言へと至りました。03年4月の米朝中の3国協議でケリーは「朝鮮が核保有を認めた」といいますが、中国側は公式の場で核保有発言はなかったとしています。

 私はもちろん朝鮮が核武装することに反対ですし、NPTの不平等性とその是正の努力の必要性を踏まえた上でのことですが、NPTに復帰すべきだと考えています。ただその場合、米語句が朝鮮に対して攻撃をしない保障など包括的な関係改善と<一括妥協>すべきです。

●平和運動の課題として、朝鮮反戦運動を

 最悪の動きとして、アメリカは経済制裁から限定空爆の可能性があります。03年5月の盧大統領訪米で、平和解決を外交により求めるけれども、場合によっては「追加的措置」もとるとされ、アメリカは武力行使を含む選択肢を固持しています。小泉の訪米では、さらに場合によっては「強行措置をとる」ことで合意されています。

 拉致事件は朝鮮による国家犯罪ですが、人道的・平和的に解決すべきであり、交渉によってのみ可能です。帰国被害者に対しては日朝両政府とも自由往来を保障することが必要だと考えます。この中で「金正日体制打倒」を意図する右翼的な動きは、ブッシュに依存、戦後補償無視、南北和解に逆行するものです。そしてこれに同調する昨今の一方的な朝鮮バッシング報道は危険です。求められているのは、事実と根拠による公正な判断です。

 私たちは過去の植民地支配の清算、日本にも責任がある朝鮮半島の南北分断の現実、そして民族自主と南北和解、平和的統一の努力にどう寄与していくのか、朝鮮半島をめぐる基本的な問題を知る事が必要です。日本の戦争国家化に反対し、ピョンヤンに照準を合わせている米軍基地を韓国、沖縄・日本からなくすことももとめられています。

 朝鮮の体制に対する評価はいろいろあってしかるべきですが、過去の侵略・植民地支配の清算と「その国の体制はその国の人々が決定する」という原則をあらためて確認すべきだと思います。いまだに過去清算もせず、国交すらない関係は是正すべきです。

 「大量破壊兵器」を口実とした米英のイラク攻撃は、その証拠も見つからないまま「独裁からの解放戦争」へとすりかわっていきました。最悪の場合、朝鮮半島もイラクのような状況になるかもしれません。韓国民衆の反戦平和の闘いと連帯し、朝鮮での戦争に反対する取り組みを強めていこうではありませんか。AWACSが朝鮮への攻撃に向けて使用されないためにも。