2・14 札幌・派兵反対全国交流集会報告

 ●札幌での集会

2004年2月14日、サッポロ(札幌)でイラク派兵に反対する全国交流会がもたれた。

 千歳の飛行場につくと雪が見えた。気温は3度、それほど寒くはない。札幌の周辺の大地は雪に覆われているが、札幌の街中の雪は少なかった。旭川の積雪は去年の半分という。

 集会はイラク派兵に反対するなかで結成された「ほっかいどうピースネット」が主催した。北九州・呉・名古屋・浜松・横須賀・福生・東京などからの参加者があり、北海道は函館・小樽・十勝・札幌・室蘭などから反戦平和を求める人々が参加した。

 集会での発言は、北海道各地での運動、世界社会フォーラムの報告、全国各地から発言で構成されていた。集会後札幌の街を平和行進、その後、今後の平和運動に向けての討論会を持った。

 以下、昼の集会と夜の討論会での発言を構成してひとつの文章の形にして記したい。

●北海道の動き

北海道のイラク反戦の動きをみてみよう。札幌ではさまざまなグループが連合して、「さっぽろピースアクション」が結成され、12月に札幌の陸自基地を囲む「人間の鎖」をおこなった。小樽では子どもたちがピースウォークに参加するようになった。

 帯広では陸自38人の派兵が報道されているが、派兵に反対して黄色いリボン運動に反対の抗議行動を展開した。釧路の矢臼別での軍事訓練は実際の戦争の訓練となってきている。室蘭では派兵賛成派が1月24日付「室蘭新報」に「任務を全うし無事帰国を!」という意見広告を出したが、呉・横須賀の反対運動と連携して18日の「おおすみ」・「むらさめ」の入港に対して抗議の船を2隻用意した。

 旭川での自衛隊派兵時の隊列行進や日の丸を振るなどのセレモニーは戦前と同じである。黄色いハンカチキャンペーンは派兵の本質をごまかすものである。侵略に加担しておいて無事を願うとはどういうことなのか。そこにはイラクの民衆への思いがなく、自国中心の思考があるだけだ。報道される自衛隊員の発言には、自己の生存に対して自己の良心に従って考え発言する姿勢がない。戦争動員のやり口はそんなに変わってはいない。黄色いハンカチの動きは「善意」の名に寄る思考の停止を強いるものである。心に自由を勝ちとることが大切だ。教育現場を見ても、処分と労働強化の車輪の下敷きとなり上から言われたことをストレートにおこなう教育となっているが、教育現場以外での活動が必要である。教育基本法や憲法の改悪を止めていこう。また拉致事件を口実にナショナリズムが煽られている。かつての強制連行の歴史を踏まえて対応すべきであるし、経済制裁や軍拡による威嚇をすすめてはならない。

●世界・全国の動き

2004年のムンバイでの世界社会フォーラムの動きを見ると、反戦平和が主要な軸となり資本のグローバリゼーションに対抗し「もうひとつの社会は可能だ」の声が沸きあがってきていることがわかる。「何かが起きている」という実感がする。アメリカが基地の概念を拡張し一国の空間そのものを基地として使用する動きに対して、「平和と正義」を基調としての反米軍基地の世界的なネットワークが結成されてきている。全世界的反米軍基地行動の設定がすすめられている。

 日本の派兵がすすめられていく中で、「人道支援だからいい」「自衛隊に敬意と感謝を」の運動がすすめられている。派兵はアメリカによる石油利権獲得のための侵略戦争への加担であるという視点、侵略とその占領への批判を忘れてはならない。派兵がすすめられる中で本当に多くの人たちが怒り悶々としていることが、沖縄から北海道の全国各地から意見広告にむけて賛同金が送られてきたことでわかる。潜在的な力を認識し、そのような人たちとどうつながっていくのかが課題だ。

 横田では空自が米軍の輸送を担うようになった。自衛隊3軍を統合してのイラク派兵がすすんでいる。呉・横須賀では海上自衛隊による陸自の物資を運んでの派兵が始まろうとしている。今日呉から「おおすみ」が出港し室蘭に向かう。また今日呉からインド洋に向けての派兵もあり、同時に2つの作戦が展開されていく。小牧からは1月に空自の本隊が派兵反対の声の中を出て行った。空自の場合、小牧を中心に、那覇・美保・春日・浜松・小松・千歳他全国からの派兵となっている。陸自でも北海道の旭川・名寄・留萌・遠軽・上富良野・幌別・千歳・帯広・札幌などを中心に富士学校からも幹部が1人というように各地から派兵されている。また、イラクの暫定司令部、フロリダ、カタールの前線基地への派兵もすでに行われている。各地での派兵情報を集めていくことも課題である。

 政府は「イラク復興支援」の10年計画を立てているという。イラク特措法は4年の時限立法、自衛隊の派遣計画は1年だが、派兵反対・撤兵をもとめる活動は長期にわたることになるかもしれない。

●反戦平和の声を

 派兵反対の側が「行くな、殺すな、死ぬな」という前に、自衛官が退職したり配置転換を求める形で抵抗している。横須賀で自衛官からアンケートを回収したところ、派兵の反対の声が多かった。「軍隊の中にこそ反戦の思いがある」といえる。憲法9条が自衛官の生命を守ってきたという認識が必要だ。自衛隊はNGOと違い、自己完結型の組織であり、国際協力活動を「ともに作る」という活動はできない。行けば逆に現地の治安を悪くする。またイラクへの強い関心が逆に他地域への極端な無関心を生んでしまうことを恐れる。平時に他地域への関心を持つことも大切だ。

 かつてアルジェリア戦争にフランス兵として派兵された兵士は、「平和を作る」という口実で派兵されたという。派兵されると無邪気な子供を殺すこともできる人間になっていった。「戦争はウソとプロパガンダによっておこなわれていく」ものだ。政府は既成事実を積み上げてあきらめさせようとしている。「国益」を語り、「命令と服従」のシステムを作り、同調主義を広がらせている。派兵されてもそれを認めずに、未来への責任を持って希望の連合をつくろう。世界民衆と手をつなぎ、東アジアの民衆の平和に向けて、国家と民衆との関係を変えていこう。今この瞬間にも生命を奪われている人たちがいる。一人一人の行動で本当の平和をつくろう。各自治体ではイラク派兵反対や慎重の意見書が採択されている。反対の声は広範にある。戦死者が出ると政府はそれを利用し大きなキャンペーンを張るだろう。そのときには派兵中止の声を全国各地であげよう。札幌・名古屋などでの違憲訴訟を支援し、基地現地での反戦平和・派兵反対の活動を積み重ね、3月20日には全国各地で反戦平和を呼びかけよう。

● 感想として

 以上が勝手な要約。翌日、参加者は千歳でピースウォークと平和集会をもった。浜松はは名古屋の仲間と旭川に行き、第2師団に派兵反対の要請をした。また川村アイヌ記念館で館長さんからアイヌの歴史と陸軍基地との関係の話を伺う機会もあった。

 日々の生活でテンションはかなり低くなる。けれど、過去と現在を貫く戦争責任をテーマにフィールドを歩いているとき、軍事基地の前で反戦平和を呼びかけるとき、そして、歌をうたっているときはかなりテンションが高いのではないかと思う。どんな状況でもたとえ根拠がなくても、希望を持ち続けていきたいと思った。

 集会では5分のスピーチ時間があったので、地引浩「プラタナス」の詩を読み、このテンションの話をしながら、横断幕を示して幕の話をして、「では歌でも」と言ったら拍手が起こったので「戦争反対」の歌をうたい、お笑いの場をつくった。

 アイヌ語で砦のことを「チャシ」という。イラク派兵と戦争の時代、世界各地でさまざまな平和のチャシが形づくられている。平和のチャシをつくり、つなげよう。

                                    

〔竹〕
 

 

 

旭川第2師団前での平和行動

2月15日に旭川第2師団前で以下の派兵中止の要請書を手渡す


 2月15日の4時ころに以下の要請をしました。旭川の第2師団の担当者の対応は,門前ではなく、それよりも7〜8メートル前の市道と師団の敷地の境で書類をうけとる、というものであり、内容にも口を出す、という不誠実なものでした。が、誠実に対応することを求め、門の近くで手渡し、反戦の幕についても説明しました。この行動は愛知の仲間とともに行いました。

 北海道のいくつかの市民団体が申し入れをおこなうと聞きたので、それについていったのですが、その団体は抗議行動を主としていたので、別途に要請を行いました。

 広報官は、門にも近寄らせず「敷地内に入るな」「防衛庁長官宛ならいいが司令宛のものは受け取らない」、「司令は反対はできない」等と対応したため、誠実な対応を求めて問答し、愛知と浜松の要請書を手渡すまでに1時間ほどかかりました。

以下要請書


                                    2004年2月15日

日本国首相様 防衛庁長官様               

陸自旭川第2師団司令様 基地内隊員様        NO!AWACSの会浜松

  陸上自衛隊のイラク派兵隊員の撤兵とイラク派兵計画の撤回を求める要請書
 

 2月3日、政府は旭川陸自第2師団の基地建設要員を中心とする施設部隊など約80人を千歳空港から政府専用機で派兵しました。さらに今後の派兵が計画されています。陸自のイラク派兵要員は、第2師団の旭川の施設隊など約150人、名寄の第3普連約150人、留萌の26普連50人、遠軽の第25普連約30人など約500人の規模となります。また、海自は2月中旬に呉から強襲揚陸艦「おおすみ」、横須賀から駆逐艦「むらさめ」を室蘭に入港させ、そこで軍用車両などの兵器を積み込み、20日にはイラクにむけて派兵しようとしています。

 私たちはこの陸自本隊派兵の中止・撤兵と派兵計画の撤回をここに求めます.
 今回の派兵は多くの問題点を抱えています。警備の自衛官が誤って民間人を射殺すれば殺人罪とされます。またイラク国内では裁かれず、治外法権が行使されます。イラクで自衛官が射殺されても「戦死」ではなく、事故死として扱われます。自衛官の安全対策も撤退基準も示されてはいません。米の占領政策に加担しての派兵が、自衛隊員の生命を危険なものにし、イラクの市民に銃口をむけざるを得ない状況に追い込んでいます。

 首相は「隊旗授与式」などで「戦争に行くのではない」「イラク人の復興のお手伝いをする」「日本の信頼を高めることになる」「戦闘行為には参加しない」と派兵を正当化し、防衛庁長官は「米英の占領が終わっても自衛隊のイラク駐留を続ける」「テロとの闘いは戦闘行為ではない」と答弁しています。しかし、今回の派兵はイラク戦争への参戦です。それは米軍に加担しての侵略行動であり、西アジアの民衆からの日本への信頼を失うことにもなります。政府の言う「復興支援」は侵略加担のための隠れ蓑にほかなりません。

 政府は世論の根強い派兵反対の声をかわすために、派兵用の軍を『イラク復興支援群』という組織名でごまかしています。政府は「戦争に行くのではない」とうそをついていますが、それは自衛官と市民を愚弄したやり口です。黄色いハンカチを基地やその周辺でふることは、派兵を容認させることになり、真に隊員の生命を守ることではありません。求められているのは派兵計画を中止し、撤兵することです。
 

 150人もの警備要員を派兵する部隊のある、名寄の人口は約2万7千人、自衛官はそのうち1800人といいます。この部隊から派兵される警備用の隊員はもっとも危険な任務を強要される部隊です。名寄神社の絵馬に「派遣が中止になりますように」と記されているといいますが、これは自衛隊員の本音であると思います。地元の『名寄新聞』の社説を見ても、「日米同盟は大切でもこの時期本当に他国で自衛隊員が血を流すような危険を冒さねばならないのか」「別の方法がいくらでもある」と派兵に反対の姿勢を示しています。それは自衛官自身の気持ちといっていいでしょう。

 TVでの自衛官の発言を見ても「イラクではモチベーションがわかない」「何をしに行くのか」「やばい」「本当は・・・」「私にも家族が、相手にも家族がいる」「錬度の高い米兵でさえあれだけ死んでいる」など、緘口令の中にあっても、「いく必要はない」「殺し殺される関係を作りたくはない」という思いが伝わってきます。自衛隊の家族は「口止めされて家族にもいわない」「行きたくないと言葉がのどもとにまで出ても言えない」「本音は反対、トイレで涙するものもある」と言ってもいます。

 旭川市長は「行かないですむなら行ってほしくない」と心情を語り、札幌市長は明確に反対の意思を示しています。国会では強行採決で無理やりに「承認」をすすめていますが、自民党の中でも良識ある人びとが反対の意思を示しています。全日空と日航は陸自先遣隊のイラク派兵要員の輸送を拒否し、そのためノースウェスト航空を利用したことが報道されています。運輸関係の労働者は戦争への協力にNO!の声をはっきりとあげています。

 「規律正しく誠実に任務を担おう」「モットーは前傾姿勢です」といってイラクで活動しても、それが占領政策に加担するものであれば、イラクの民衆からは嫌われるでしょう。首相は「自衛官への国民の声援を」といいますが、わたしたちは、海外派兵された自衛官に「一刻もはやい撤兵を!」「政治家の言葉にだまされてはならない」「派兵は拒否できる」と語り続けます。イラク派兵は、多くの市民・労働者・自衛官・その家族の反対の声、そして憲法を無視して行われています。政府は今すぐに派兵を中止し、その計画を撤回すべきです。

 旭川はかつて戦争と派兵の拠点でした。日ロ戦争では死傷率が1日で75パーセントといわれた旅順戦に投入されました。ノモンハン戦争ではソ連の機甲師団との戦闘に投入され多数の死者を出し、アジア太平洋戦争では、ガダルカナル戦・沖縄戦に投入され全滅を強いられています。当時の軍部は植民地旭川の兵士を美辞麗句で賞賛しながら、侵略戦争で使い捨ててきたのです。今回の派兵は、旭川の自衛官をイラクに送り込み、米軍占領を支援することがねらいであり、再び旭川の隊員が戦争に利用されようとしているのです。  

 世論調査をみると、政府が「復興」を宣伝しても、国民の半数がイラク派兵に反対し、さらに「死傷者が出たら撤退を、首相の政治責任が問われる」とする声は圧倒的多数です。自衛官の生命を守っているのは、『復興』や『平和』を口実に、日の丸をふって派兵をすすめる政治家たちではありません。皆さんの生命はこの国の憲法9条と戦争と派兵に反対している市民によって守られてきたのです。

 イラク戦争の口実とされた大量破壊兵器は発見されませんでした。うそと間違った戦争を支援する必要はまったくありません。米軍の撤退とイラク人自身の政権の確立から戦後の復興がはじまります。自衛隊員がイラクに行く必要はまったくありません。拒否しても国民である自衛官には人権があり、不当に処罰することはできないのです。処罰されるべきは憲法を蹂躙し、市民にうそをついている首相ほか政府関係者です。   

 よって以下を要請します。

● 政府は派兵計画を撤回すること ●司令は派兵の中止を上申すること

● 自衛官は派兵を拒むこと ●自衛隊員は戦争と派兵に反対する市民とともに歩もう