「東アジアの平和一軍拡・戦争ではない歩みのために」

2006730浜松での渡辺健樹さんの話から

 

浜松のみなさん、こんにちは。日韓ネットの渡辺です。今日は、最近の北朝鮮のミサイル発射問題を中心に、戦争や軍拡ではない形での朝鮮半島の平和、東アジアの平和の実現について話をしたいと思います。

 

●北朝鮮ミサイル発射実験をめぐって

 

 まず今回の北朝鮮のミサイル実験の実相ですが、75日未明から夕方にかけて7発が発射されました。そのうちの一発はいわゆる「テポドン2」とされていますが、これは基地から15キロ圏内で爆発したとの米軍情報の報道がなされています。当初のロシア沖に落下情報と共に、「失敗」説と最初から設定されていた「予定通り」説もありますが、真偽はわかりません。他のミサイルは、いずれも日本海のロシア側公海に落下しました。

報道によると、日米当局は、北朝鮮が前日に落下予定水域に船舶立ち入り制限区域を設定し、さらに同水域で北朝鮮の「監視船」が電波を発信しながら航行していたことも把握していました。TVで、ある軍事評論家が珍しく冷静に「マスコミが、弾頭も着けていないミサイル実験に『着弾』と表現し煽っている」と述べていましたが、巷間言われているような“突然日本に向けてミサイルを撃ってきたというのとも、かなり違うようです。

軍事力に対し軍事力で対応するという論理は否定すべきですし、私たちも強い憂慮を表明していますが、朝鮮半島問題については歴史的・構造的な視点から見ることが大切です。

 今回の北朝鮮のミサイル発射実験の背景の一つに、米軍の先制攻撃態勢の強化と日米軍事同盟の再編・強化、とりわけミサイル防衛(MD)がすすめられ、さらにこの時期リムパックなどの大規模軍事演習が行われていることがあります。これらに北朝鮮側が脅威を感じても不思議ではありません。これに対する北朝鮮側の軍事力誇示という点があったでしょう。

もう一つは、よく言われることですが米朝直接対話への北朝鮮側からの対米アピールという点です。現在、米国の「金融制裁」により6カ国協議の進展がみられない状況があります。直接対話を拒否し、6カ国協議で時間を稼ぎ、北朝鮮の自動崩壊を待つという戦略ですが、米国内ですらブッシュ政権の「直接対話拒否」に対して、かえって事態を悪化させたとの批判が強まっています。民主・共和の党派を超えて対話拒否を「無策の典型」とする厳しい批判が広がっており、その間隙を北朝鮮側が突いて見せたとの分析もあります(「日経新聞」7/6春原編集委員)。

 日米の対応ですが、今回、日本が前面に出て軍事行動まで可能とする国連憲章第7章にこだわった国連制裁決議案を出しましたが、中国・ロシアの抵抗で第7章については削除された決議が採択されました。

経済制裁がすすめば、有志連合による北朝鮮船舶への臨検などの事態が起こることも否定できません。経済制裁は軍事行動とリンクしたものです。日本国内では政権中枢にいる安部や麻生が敵基地攻撃論を語るにいたっています。マスメディアも危機を煽動しています。テレビの司会者が先頭に立って煽っているものもあります。このような動きには監視が求められます。

特に、米国の「金融制裁」に乗っかり、日本が現在の「制裁」をすすめ金融制裁に入るとなると、危険な分岐点になるかも知れません。米国の「金融制裁」を何らかの形で終わらせ、米朝対話をどう実現するかが焦点となっているわけですから、日本がこのように動けばそれに逆行することになります。

今後どうなるのかについては予断を許しませんが、日本支配層のなかには旧来の冷戦対決型と、グローバリゼーションの立場から「取り込み」を狙う動きもあり、その力が小泉の訪朝をもたらしました。東アジアの経済統合で日本が主導権をとる上で、日朝対立はデメリットというわけです。ただ、日本の対応はアメリカの動きに左右されています。事態はアメリカの動きによって急変することも考えられます。

 

●東アジアの平和の実現のために

 

問題の根源は、米朝が朝鮮戦争以後も準戦時体制のままであること、南北が分断されていることにあります。1994年に米朝は、核問題の解決と米朝関係正常化にまで至る包括的な合意に至りました。2000年に

は南北首脳会談で南北の和解と平和・統一の方向も合意されました。しかし、2002年日朝ピョンヤン宣言が出された直後、米国は新たな「ウラン濃縮疑惑」を持ち出し、ジュネーブ合意を反故にしてしまいました。その後、米国は直接対話を拒否し続け、北朝鮮側は核保有を宣言するに至ったわけですが、北朝鮮側は、米国の敵視政策が変わりさえすれば、検証可能な形で核を放棄すると繰り返し明確にしてきました。

6カ国協議に場を移すことになりましたが、2005年の919日に6カ国共同声明が出されるに至りました。

6カ国共同声明にはジュネーブ合意と同様、核問題の検証可能な形での解決とともに、米朝国交正常化、日朝国交正常化についても明記され、恒久的平和体制に向けた協議についても盛り込まれました。そして互いの約束に基づき行動し、意見が一致したことを段階的にすすめることが記されています。それ自体評価すべき合意がなされたのです。しかし、米国は「偽ドル疑惑」を出して金融制裁を行い、米朝直接対話の道を閉ざしています。

 朝鮮半島問題については包括的な解決が求められていると考えています。米朝ジュネーブ合意も6カ国共同声明も、単に「非核化」だけではなく包括的な解決案が盛られたことは偶然ではありません。周辺諸国も(米国さえも)、そのことは百も承知だからです。私たちは、6カ国共同声明の履行を強く求めるべきだと思います。

その上で、朝鮮半島の非核化からさらに東北アジア非核地帯化をすすめるべきでしょう。朝鮮半島の南・北、在韓米軍の検証可能な非核化とともに、日本では非核三原則の法制化、核燃サイクルの廃止なども必要でしょう。これらの前提の上に非核地帯条約の締結が求められます。もちろん、周辺核大国がこの非核地帯を核攻撃しないことを約束させることが前提です。

 また、朝鮮戦争の公式な終結が必要です。それは、米朝の停戦状態から恒久的な平和協定の締結をすすめることです。ここでは、在韓国連軍の解体や駐韓米軍の扱いをどうするかが焦点になるのではないでしょうか。

そして、米朝と日朝の国交を正常化すべきです。

 日本による過去の清算も必要です。朝鮮人強制労働にともなう遺骨問題の解決も求められます。

東アジアの民衆レベルでの連帯の形成も課題です。これは「6カ国協議を将来的な地域安保協議機構へ」という論議とは異なり、新自由主義・グローバリズムに基づく地域統合や大国間のパワーポリテックスに対抗し、民衆の側からの平和の追求とグローバリズムに対する共同対処をめざすものとして構想されるべきだと思います。

今後についていえば、歴史を踏まえて現在の構造をどう理解するかにかかっているといえるでしょう。

 

※この問題提起を受け、経済制裁批判、日本の支配層内部の対立関係、メディア批判、米国内の対立関係、主体の危機、ミサイル批判の論点、5030作戦計画の現在などさまざまな視点から議論がおこなわれました。