イスラエル大使館領事様                  2006年8月6日

イスラエルの民衆の皆様                 人権平和・浜松

 

イスラエルによる戦争と占領の停止を求める要請書

 

みなさんはベルリンの歩道に刻まれている収容所で死を強いられた人の名前を、ミュージアムの沈黙と追憶の場に流されている人の名前を、強制収容所跡に残されている名前を、蜂起して捕らえられ写真に残された少女の名前を、聞いたことがあると思います。

戦争によって非業の死を強いられた人々の名前は、いまを生きる人々に継承されなければなりません。人種差別によって600万という死を強いられたユダヤの民衆のことも。その一人ひとりが人間であり可能性をもち愛された民であったことも語り伝えねばなりません。その差別と虐殺を繰り返さないためにも。

それから60年、シオニズムのもとに新たな人種主義が煽動され、イスラエル国家はパレスチナの民衆を壁の中に追いやっています。それはあらたなアパルトヘイトでありゲットーの建設です。いま、レバノンの民衆を無差別爆撃しています。それはゲルニカであり重慶です。かつて行われた人種差別と戦争犯罪を、その被害者であったものたちの末裔である皆さんがくりかえしています。レバノンの歩道には多くの死体が並んでいます。かれらの名前は世界に向けて、永遠に刻まれねばなりません。被害者は加害者にもなるのです。

だからこそ、何度でも無数の名前を今も語らねばなりません。みなさんの尊厳のために、みなさんが戦争をやめるために、それができると確信している世界の良心を示すために。かつて領事館で諜報活動をおこなっていたものも、良心に目覚めて救済のビザを記しました。かつて利権だけに生きてきたものも、虐殺を前に自分が救済できるものたちのリストを作りました。かつて虐殺に加担していたものも、最後には抵抗を組織しました。人間は戦争と破壊を止めるために、それぞれできることを実行することができます。人間が殺戮のマシーンに組み込まれたなかでのレジスタンスこそ、皆さまのなかに復権されねばなりません。

領事にはできることがあります。兵士にもできることがあります。その地に住む一人ひとりにできることがあります。パレスチナ・レバノンの大地は東西が交流した場であり、文明の発祥地です。ここで生まれた民族を超えての隣人愛の思想は世界平和の第1歩です。国境と民族と宗教を超えた共同世界に向けての箱舟こそ創造されねばなりません。この混乱の地からしか、平和の具体的関係は形成できないのです。その新たなオルタナティブな平和形成力は新しい文化の夜明けになるでしょう。

いますぐ、空爆と占領はやめ、壁を撤去しなければなりません。互いの尊厳を認めての対話を粘り強くすすめねばなりません。軍事的強化によって圧倒することで優位を保とうとする精神志向を変革しなければなりません。これ以上、殺戮の銃を取らせてはなりません。平和と共存の大地の記憶こそ想起されねばなりません。

戦争と占領の停止にむけての努力をすすめることをここに強く要請します。日本・浜松の太平洋の風吹く街から愛をこめて。