中村梧郎「枯葉剤30年」講演会参加記 2007・7.14浜松
リアリズム写真集団による「視点第32回展」
中村さんは枯葉剤取材30年の歴史を振り返り、全米での展覧会がはじまったことを紹介した。そのなかで、ベトとドクの成長やカマオ岬のフン少年の歴史などを例に被害状況を示し、さらにイラク戦争での劣化ウラン弾などの汚染について話し、これまで自身が撮影した写真を紹介した。
印象に残った話のひとつがベトナム人によるアメリカへの賠償要求裁判の話だった。「アメリカはアメリカ兵に対しては補償金を出しているが、ベトナム人には出していない。ベトナム人の提訴は却下している。連邦地裁はアメリカ兵には疫学的データがあるがベトナム人にはないという。また当時は国際法違反ではないとし、アメリカ司法省は受理すれば大統領の戦争遂行権限を脅かすといっている」(発言要約)という。
この点は重要であり、戦争被害者の賠償請求権の確立が国家の戦争遂行権限を停止させるということだ。21世紀は国家の戦争遂行権限を停止させる時代になってほしい。
このほかに印象に残った話としては、ベトとドクが生まれたのはチャーリー山の近くであり、そこは米軍による枯葉剤汚染があり、開拓に入った農民からベトとドクが生まれたこと、全斗煥や盧泰愚がベトナム戦争の最前線でたたかった軍人であり、その後韓国で実権を握り、その時代には被害をうけた韓国兵士はその被害を訴えることができなかったこと、現在アメリカでは30万人に補償がおこなわれていること、憲法9条を変えれば、アメリカはアジア人同士を戦争させるから日本軍が最前線に投入されることになること、などであった。30年余の取材をふまえての映像と講演は21世紀の方向性を示すものであると思う。(竹)