2007年9月、防衛省への公開質問と回答
(核とミサイル防衛にNO!キャンペーンの資料から作成)
公開質問状
防衛大臣 様
●戦時体制を押しつける迎撃ミサイルPAC3の都心への移動展開演習の中止を求めます
報道によれば、防衛省は航空自衛隊入間基地に配備したミサイル防衛(MD)用迎撃ミサイルパトリオット3(PAC3)の都心への移動展開演習を9月中にも実施するといいます。部隊の展開候補地として、市ヶ谷駐屯地(新宿区)や練馬駐屯地(練馬区)の他、代々木公園(渋谷区)、晴海ふ頭公園(中央区)、明治公園(新宿区・渋谷区)が想定されており、高村防衛相も公園が検討対象であると認めています(9月4日、朝日)。
そもそも「ミサイル防衛」(MD)は米国の先制攻撃(予防戦争)戦略の不可欠の一部として構想されており、相手の反撃を封じ込めることで先制攻撃をし易くする極めて攻撃的な兵器システムです。また、憲法9条が明確に禁止しているとされる集団的自衛権の行使に踏み込むものでもあり
ます。
米国によるMDの東欧配備は、予定地であるチェコ、ポーランドでの反対世論の高揚をもたらし、チェコでは住民投票により圧倒的な反対の民意が示されています。またロシアは新型ミサイル開発などの軍拡で対抗しています。東北アジアにおいても、中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を刺激し、軍備強化の悪循環をもたらしています。
今回の移動展開演習は、
第一に、中国や北朝鮮に対する露骨な威かくの意味を持ちます。とりわけ、北朝鮮の問題に関して、現在6か国協議や米朝協議、日朝協議など外交交渉による問題解決が図られている中で、全く無用かつ有害な挑発と言わざるを得ません。
第二に、演習は平時において市民社会に軍隊の姿を無理やり見せつけ、軍隊や兵器、戦争への拒否感を低減させることも意図しています。MD作戦や軍隊の存在に慣らさせ、先制攻撃を前提とする軍事作戦を容易にすることが狙われています。「武力攻撃事態等対処法」が規定する「武力攻撃事態」を演習の形で平時に強引に持ち込むことは到底許されません。
第三に、演習は市民生活よりも軍事行動に明確な優位性を与えるものです。道路の交通規制、装備の「防衛」を名目とした展開地域における厳戒・弾圧態勢、そして公園という憩いの場に軍隊が公然と侵入することなど、人権侵害を伴うことは必至です。
第四に、「防衛」を名目とするPAC3の配備、展開は、MDが「先制攻撃のための盾」である以上、逆に相手国からの標的となるリスクを周辺住民に押しつけます。演習自体も同様の危険をはらむものです。
第五に、今回の演習を含めてMD配備は情報公開がほとんどなされない中で進行しています。3月末の米国から購入したPAC3ミサイル本体の入間基地への搬入も完全に秘密とされました。「軍事機密」の名による情報統制が「文民統制」を形骸化させ、軍の暴走を招きかねないことは歴史が証明するところです。
以上の危惧を踏まえて、私たちはミサイル防衛計画自体の中止と入間基地配備PAC3の撤去、そして今回の戦時演習の撤回を求める立場から以下の点を質問します。
@演習の開始(搬出)及び終了(撤収)の日時や駐屯地、公園等におけるミサイル装備の展開期間、また装備積載車両の通行ルートなどの情報を公開してください。
A入間基地のPAC3部隊は発射機5台を含め全体で約30もの車両になると言われます。今回移動展開させる装備の内容と規模、及び移動の際に計画されている具体的な交通規制の内容を教えてください。
B市ヶ谷駐屯地に展開する場合、迎撃時には隣接する高層マンション(建設中)の窓ガラスが風圧で破壊されることになると報道されています(5月9日、朝日夕刊)。この事態をどのように考え、対処しようとされているのでしょうか。
CPAC3展開地周辺には高層建築物の建設を規制する制限区域を設ける必要があるとの指摘があります。他省庁や自治体との間で設定作業は進んでいるのでしょうか.
DPAC3が誤って民間航空機を撃墜する危険を避けるため、国土交通省と調整して上空に飛行禁止区域を設定する必要があるとの指摘があります。05年5月12日の大野功統防衛庁長官答弁の「必ずしも必要ない」との認識に変更はありませんか。
E公園への展開には管理者である東京都の許可が必要であり、交渉中とのことです。しかし、展開により直接の影響を受けるのは都民というより区民レベルであり、都に加えて当該区の許可が最低限必要だとの声がありますがいかがでしょうか.
F展開した装備を「防衛」するためとして、具体的にどのような警備態勢が計画されているのでしょうか。
G弾道ミサイルを追尾するレーダー装置から発射されるレーダー波の影響について、防衛省からの説明はありません。強力なレーダー波はまるでむき出しの超大型電子レンジであり、人体への影響が懸念されるばかりか、携帯電話やテレビ受像などを妨げる電波障害を引き起こす可能性もあります。レーダー波の具体的な影響と今回取られる対策についての情報公開を求めます。そして、危険な「人体実験」になりかねない公園など人口密集地への展開は中止すべきと考えますがいかがでしょうか。
Hレーダー波の発射は特定公共施設法に基づき、総務相が認めることになっています。認可が得られたのであれば、日時と具体的な許可内容について教えてください。
I今回の演習の予定経費はいくらでしょうか。具体的見積もりを教えてください。
J今後も同様の演習を繰り返すつもりでしょうか。予定や頻度などを教えてください。
K07年度中にPAC3が配備されるという習志野、武山(横須賀)、霞ヶ浦への配備予定時期とそれぞれのPAC3の展開想定地域を教えてください。
L防衛省は07年度末の首都圏配備完了まで、「敵の目を欺く」ために入間から他の配備地や市ヶ谷、練馬駐屯地を常時巡回させ、実戦並みの迎撃準備訓練を行うといいます(4月8日、産経)。具体的計画と今回の演習との関連を教えてください。
M今回の演習の中止(少なくとも大幅延期)を決断する考えはありませんか。
【呼びかけ】核とミサイル防衛にNO!キャンペーン
【賛同】【賛同団体】
アジア連帯講座、活かせ九条!福岡の会、グループ 武器をつくるな!売るな!、国連・憲法問題研究会、市民運動ネットワーク長崎、市民の意見30の会・東京、戦争に協力しない!させない!練馬アクション、全野党と市民の共闘会議、NO!AWACSの会浜松、パトリオット・ミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会、派兵チェック編集委員会、ピース・チェーン・リアクション、ひきこもり九条の会、ピッピISOGO、広島瀬戸内新聞、不戦へのネットワーク、平和懇談会いるま、平和懇談会はんのう、平和の声・行動ネットワーク、平和のひろば・みのお、許すな!憲法改悪・市民連絡会、ヨコスカ平和船団、神戸ラブ&ピース(07年10月現在)
◆迎撃ミサイルPAC3の都心展開演習に関する
防衛省公開ヒアリング
報告[要旨]
9月28日(金)午後4時30分より参議院議員会館第3会議室にて、防衛省あてに事前に提出した(一部は当日追加提出)質問に対する回答を聞く公開ヒアリングを行いました。
予想通り極めて不十分かつ不誠実な回答が連発されましたが、明らかになった点(PAC3の配備予定時期が習志野12月〜1月頃、武山1月末頃、霞ヶ浦3月末頃など)もありました。
【防衛省側出席者】
防衛省
運用企画局事態対処課 防衛部員,運用支援課訓練企画室 防衛部員,情報通信・研究課防衛部員
防衛政策局 防衛計画課 計画第3班長防衛部員
経理装備局 システム装備課 誘導武器班防衛部員
※矢印(→)からが防衛省の回答です。
私たちはミサイル防衛計画自体の中止と入間基地配備PAC3の撤去、そして今回の戦時演習の撤回を求める立場から以下の点を質問します。
@演習の開始(搬出)及び終了(撤収)の日時や駐屯地、公園等におけるミサイル装備の展開期間、また装備積載車両の通行ルートなどの情報を公開してください。
→訓練を実施するという計画を固めた事実はない。具体的なことは説明できない。
A入間基地のPAC3部隊は発射機5台を含め全体で約30もの車両になると言われます。今回移動展開させる装備の内容と規模、及び移動の際に計画されている具体的な交通規制の内容を教えてください。
→仮に訓練を実施するとしても、30台の車両を使用したり交通規制を実施することは現段階では想定していない。
[参加者]9月議会で入間市は「基地の方から情報公開がないので大変苦慮している」としながら「10台で調査のため移動する」と回答していた。
→自治体との協議状況も含めて検討の詳細はまさに部隊運用に直結する話であり、我が国防衛の手の内を明かすことになるため具体的な回答を差し控えたい。
B市ヶ谷駐屯地に展開する場合、迎撃時には隣接する高層マンション(建設中)の窓ガラスが風圧で破壊されることになると報道されています(5月9日、朝日夕刊)。この事態をどのように考え、対処しようとされているのでしょうか。
→住民の方に誤解を与えてしまう記事だと考え、朝日新聞に正確、慎重な報道をしてほしいと抗議を申し入れた。周辺環境を考慮し、安全な運用を大前提に検討している。市ヶ谷の具体的な検討状況については部隊運用の関係で答えられない。
CPAC3展開地周辺には高層建築物の建設を規制する制限区域を設ける必要があるとの指摘があります。他省庁や自治体との間で設定作業は進んでいるのでしょうか。
→あえて将来のために建築制限を検討しているということはない。
DPAC3が誤って民間航空機を撃墜する危険を避けるため、国土交通省と調整して上空に飛行禁止区域を設定する必要があるとの指摘があります。05年5月12日の大野功統防衛庁長官答弁の「必ずしも必要ない」との認識に変更はありませんか。
→変更はない。
E公園への展開には管理者である東京都の許可が必要であり、交渉中とのことです。しかし、展開により直接の影響を受けるのは都民というより区民レベルであり、都に加えて当該区の許可が最低限必要だとの声がありますがいかがでしょうか。
→東京都との協議状況については部隊運用に直結する話だと思うので答えられない。
[参加者]「部隊運用」の定義は何か。拡大解釈が過ぎる。住民への説明義務を果たせ。
F展開した装備を「防衛」するためとして、具体的にどのような警備態勢が計画されているのでしょうか。
→手の内を明かしてしまうと警備にならないので答えられない。
G弾道ミサイルを追尾するレーダー装置から発射されるレーダー波の影響について、防衛省からの説明はありません。強力なレーダー波はまるでむき出しの超大型電子レンジであり、人体への影響が懸念されるばかりか、携帯電話やテレビ受像などを妨げる電波障害を引き起こす可能性もあります。レーダー波の具体的な影響と今回取られる対策についての情報公開を求めます。そして、危険な「人体実験」になりかねない公園など人口密集地への展開は中止すべきと考えますがいかがでしょうか。
→関係法令、この場合総務省令である電波法施行規則に示されている、一般人が立ち入る場所における具体的な電解強度の基準値を守って運用する。具体的数値はレーダーの性能が推測されてしまうので示せない。測定器を常に持ち歩いて運用するわけではない。あらかじめ出力はわかっているので守って運用できる。
Hレーダー波の発射は特定公共施設法に基づき、総務相が認めることになっています。認可が得られたのであれば、日時と具体的な許可内容について教えてください。
→許可は計画が固まってから総務省に申請する。
I今回の演習の予定経費はいくらでしょうか。具体的見積もりを教えてください。
→計画を固めていないので答えられない。
J今後も同様の演習を繰り返すつもりでしょうか。予定や頻度などを教えてください。
→答えられない。
K07年度中にPAC3が配備されるという習志野、武山(横須賀)、霞ヶ浦への配備予定時期とそれぞれのPAC3の展開想定地域を教えてください。
→習志野には07年12月から08年1月くらいに、武山には08年1月末くらいに、霞ヶ浦には08年の3月末くらいではないかと思う。緊急時の展開想定地域についてはいちがいに答えられない。「この場合にはここに置きます」ということが外部に出てしまうと、場合によっては良からぬことを考えている人が展開の妨害をする可能性がある[=市民の反対運動を指すものではないと後で釈明]。第一高射群の任務の基本は首都圏防空だが離れたエリアに行くこともあり得る。
L防衛省は07年度末の首都圏配備完了まで、「敵の目を欺く」ために入間から他の配備地や市ヶ谷、練馬駐屯地を常時巡回させ、実戦並みの迎撃準備訓練を行うといいます(4月8日、産経)。具体的計画と今回の演習との関連を教えてください。
→巡回させる訓練を行うとの方針を固めたとの事実はない。
[参加者]例えば柏の隣にある海上自衛隊下総基地なども展開候補地となり得るか。
→展開する可能性としては当然あり得る。
M今回の演習中止(少なくとも大幅延期)を決断する考えはありませんか。
→(ない)
【追加質問】
NPAC3ミサイルの発射時には有害な煙が発生すると指摘されています。煙の成分と人体への影響は、そして周辺住民の保護についてどう対処されるつもりですか。
→発射後の煙はミサイルが上空に上がるので大気中に速やかに拡散されると考える。周辺にガスが滞留することは考えられない。ガスの成分はまだ発射経験がないので確認していない。[=後日、米側に問い合わせ回答へ]
O展開候補地として挙がっている緑地公園の管理者である東京都との協議状況を教えてください。
→部隊運用に関わるので答えられない。
P防衛省の08年度概算要求概要「5 弾道ミサイル攻撃への対応」にある各経費額は。
(1)「ペトリオット・システムの改修
等」の具体的内容と要求経費
→「ペトリオット・システム改修」371億円、「維持・整備体制の構築」総額749億円
(2)「PAC3ミサイルの発射試験 等」に関して、試験の内容と予定時期、要求経費
→米国のニューメキシコ州ホワイトサンズ射場で08年度(概算要求約9億円に加えて、06年度にも関係予算)、09年度と発射試験行う。日本の機材を持っていく。
(3)「PAC3リモートランチ端末の取得【新規】等」の具体的内容と要求経費
→ランチャー(発射機)に関して数十キロ離れたところにレーダーを置いて広い範囲をカバーできるようにするもの。約9億円。
(4)「ペトリオット戦術シミュレーターの改修 等」の具体的内容と要求経費
→操作、対処要領について訓練するためのシミュレーション機能の機材。約6億円。
(5)「PAC3ミサイルの取得」の具体的内容と要求経費
→97億円。取得数は答えられない。
QPAC3は2008年度配備分から三菱重工がライセンス生産したものが配備されます。関連装備も含めて三菱重工のPAC3関連受注(契約)額を教えてください。
→浜松配備(08年度)分として05年度契約額(ミサイルと地上装置)に
約540億円。
MD関連経費は
04年度1068億円、05年度1198億円、06年度1399億円、07年度1826億円、08年度1580億円(概算要求) [小計約7000億円]
R2006年8月、防衛庁(当時)がMDシステムの日本国内への配備を加速させるためとして、PAC3をライセンス生産する三菱重工や関連数十社を対象に、契約額の5%程度を国が助成する助成金制度を新設する方向で検討に入った(日経)と報じられました。その後どうなったのでしょうか。
→そうしたことを検討した事実は全くない。
【後日(10月3日)回答分】
・三菱重工PAC3関連ライセンス生産06年度契約額(09年度配備分)は約650億円。
・PAC3部隊を指揮する統合任務部隊の司令官は、臨時に編成されるので状況により異なる可能性もあるが、航空総隊司令官(現在府中、いずれ横田)が担うことを想定。
・習志野基地の毒ガス調査とPAC3配備に関連性はなく、調査が配備に影響することはない。
・PAC3の耐用年数は現時点で事例なく未確定。新型なので性能等確認しないと不明。