2008年9月7日に、以下を浜松基地へと要請した。



防衛大臣様                       
200897

浜松基地司令様                      人権平和浜松

                             NO!AWACSの会

 浜松基地のPAC3を使用してのアメリカでの発射実験の中止と

空自のイラク派兵の中止を求める要請書

 

 浜松基地へと20085月からPAC3の配備が市民に秘密のうちに始まりました。その機材を使って防衛省は9月中旬から、アメリカのニューメキシコ州ホワイトサンズ射場で発射実験をおこなおうとしています。実験は2発のPAC3で模擬ミサイルを迎撃するというものですが、その経費は約23億円といいます。

わたしたちはミサイル防衛(MD)によるPAC3配備に反対してきました。それは、配備が憲法の平和主義の精神に反し、日米の軍事的一体化をすすめ、PAC3の発射自体が交戦につながり、あらたなミサイル軍拡をすすめ、多額の税支出をともない、社会の軍事化をすすめるものであり、浜松を再び戦争の拠点とすることになるからです。

わたしたちはこのPAC3のアメリカでの実験についても中止をここに強く求めます。

 20083月から4月にかけて、アメリカの議会ではミサイル防衛を点検する公聴会がもたれました。そこではミサイル防衛の脅威と現実、見通しとコスト、ミサイル防衛庁の問題などが問われました。討論は、本当に脅威があるのか、巨額の投資を続けるべきか、ミサイル防衛庁の意見もふまえて審査するというものであり、十分な議論のないままでの日本へのMDの導入とはまったく異なる状況が生まれています。アメリカでは、グローバルな戦争をおこない、先制攻撃とMDを進めてきたありようの問い直しが進行しているのです。討論では、PAC3などによるMDが多弾頭やおとり攻撃に対しては無力であること、攻撃はICBMではなく短距離ミサイルや巡航ミサイルによるものである可能性が高いことなどが指摘されています。MDへの合理的な根拠が問われ、公正な評価が求められる中で、MDへの信用が大きく揺らいでいるのです。

日本でのMDは、アメリカによる日本の軍事の統合の推進と近年逮捕された防衛事務次官や兵器販売のフィクサーらの暗躍の中で、すすめられてきました。浜松などに配備されたPAC3はその機材を使っての実験さえおこなわずに配備されてきました。一度SM3の実験をすれば60億円、PAC3の実験をすれば23億円、MD全体では数兆円の税を使います。税はこのように軍事費のために浪費するものではなく、民衆の生活保障のために使うべきです。また、MD用ミサイルについては実験が高価となり、基本的には実射訓練をおこなわないともいいます。このような対応では、日本のものは実用不能ということになります。

日米の軍事的一体化は司令部統合の形ですすんでいますが、そのテコがMDです。グローバルな戦争をすすめるアメリカとの軍事的一体化は日本の戦争国家化をすすめることになります。MDを中止し、対等な関係を持つように努力し、憲法の平和主義の理念を再確認すべきです。

 また、2008711日と88日、浜松基地から第16期の空自イラク派兵要員が7月に4人、8月に4人と出発しました。2004年からの浜松からの派兵人員は計111人となり、今回で派兵は30派と31派になります。イラクでのC130は米軍の「空のタクシー」とまで呼ばれ、戦場であるバグダッドへの軍事輸送を繰り返しています。アフガニスタン攻撃を支援しての海自の給油も繰り返しおこなわれ、8月末にはNGOの日本人が殺害されるにいたりました。アメリカのグローバルな戦争に加担しての参戦を、今すぐ中止することが求められています。

大臣と司令が、実験の中止と派兵の中止にむけて取り組むようここに要請します。

 

【連帯メッセージ】

  の動きをつないで「ミサイル防衛」を包囲しましょう!

 浜松基地に反対して活動されてきた皆さん、お疲れさまです。PAC3の初の派米実射訓練に機材が使用されるという浜松基地。その地元での取り組みは、今後ますます大切になるでしょう。浜松基地には実弾自体は配備されないと言われますが、教育訓練部隊として、各地のPAC3を運用する高射隊の能力強化という重要な役割を担います。

 加えて危惧されるのは、この間浜松基地が一部マスコミへの意識的な露出を図っていることです。テレビ東京系の土曜夕方の若者向け番組では、普段は公開しない区域への取材が許可され、PAC3の発射態勢準備の訓練の様子までもが放映されました(『Hi Hey Say!』)。ご丁寧に、「9月には初の実射訓練がアメリカで予定されています」との解説さえ付け加えられていました。興味本位かつ全く無批判に防衛省・自衛隊のPRをする、こうしたマスメディアの傾向は今に始まったことではありませんが、浜松基地の位置づけの高まりを反映しているのではないでしょうか。

 一方で、今回の実射訓練が持っている「偽装実験」と言わざるを得ない以下の側面は一切隠されたままです。(1)性能確認試験を後回しにして前倒し配備を繰り返してきた点(2)アメリカで行われてきたPAC3実験の実態が、射程300500kmの短距離ミサイルや航空機を想定したものに過ぎない点(3)防衛省が性能確認試験以降、通常であれば毎年行うはずの実射訓練を「膨大な経費」を理由に実施しない方針を固め、自らPAC3が「無用の長物」であることを認めた点。

 現在、東欧へのアメリカのミサイル防衛(MD)基地建設計画が大きな争点となっています。とりわけXバンドレーダー基地の建設予定地となっているチェコでは市民の反対運動が高揚し、米国との協定の批准を阻み続けています。「スターウォーズ反対」の叫びが再び国境を越えて高まっているのです。突出してMD配備に突き進むこの日本の地で、MD反対運動は一層力をつけていく必要があるでしょう。

 914日には首都圏の仲間を中心に「全国実行委員会」として呼びかける実射訓練反対の防衛省要請行動を行います。浜松をはじめ各地の皆さんとの情報交換と具体的連携を強めながら、一刻も早いMDからの撤退を勝ち取るために努力を続けていきたいと思います。共にがんばりましょう。


  
 200897日   核とミサイル防衛にNO!キャンペーン