2009..9 名古屋でPAC3配備反対東海集会開催

2月9日名古屋で「パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会」の結成集会とデモが持たれ、50人が参加した。呼びかけは、愛知・不戦へのネットワーク、岐阜・各務原基地へのPAC3の配備の中止を求める会、三重・戦争をしない・戦争協力もしない三重ネットワーク、静岡・NO!AWACSの会浜松の4団体。2008年には浜松基地にPAC3が配備され、その器材を使ってのアメリカでの実験もおこなわれた。今回の集会は2009年2月の岐阜へのPAC3配備が計画される中で企画された。

 集会は、東海交流会の結成について説明をうけて、藤岡惇さんの「宇宙の軍事化とミサイル防衛」の講演がもたれ、その後、三重・浜松・岐阜・名古屋からの運動報告、集会アピールの採択の順ですすめられた。集会の後にはデモ行進をおこなった。

 

 藤岡さんははじめに、マネーと核軍事力の暴走の中で宇宙ベースのネットワーク中心型戦争がすすめられてきたが、それが挫折し、経済危機となった状況を話した。そして、宇宙軍拡・ミサイル防衛(MD)推進の論拠を批判し、北東アジアでの平和構築に向けての展望を語った。

 藤岡さんはMDの問題点を次のようにまとめた。

MDが防衛するものはアメリカの制宇宙権と新型戦争システムである。MDによるミサイルの標的は北朝鮮ではなく中国であり、さらにロシアやアセアンになる。実際、韓国のパトリオットは中国に向けて配備されている。MDは専守防衛のためではなく、米軍の先制攻撃を促進するものである。軍拡競争をすすめ、宇宙を戦場にするものである。敵の軍事衛星破壊に向けての軍拡もすすむことになる。敵のミサイルの撃ち落しは困難であって、コストは膨大なものになり、アメリカの軍需産業が大儲けする。さらに核軍拡もすすみ、宇宙を核戦場にしかねない。また航空機・自動車・徒歩での核攻撃も可能になり、原子炉も攻撃対象になる。日本ではアメリカに従属する軍産複合体が形成され、市民への監視も強まる」と。

 このようにまとめた後、藤岡さんは北東アジアでの平和構築に向けて提言した。

MDを止める外交力・市民力が求められる。ヨーロッパでは米ソの核ミサイル軍拡に対抗して反核運動が高まり1987年には中距離核ミサイル全廃条約を成立させた。アセアンは1995年に東南アジア非核地帯条約をつくり、イラク戦争の中の2003年にバリ島で第2次協和宣言を発してユーラシア諸国に東南アジア友好協力条約(TAC)への加盟を促した。カナダ・東欧ではMD推進派が失速し、アメリカではMD凍結を語るオバマ政権が生まれた。」

「宇宙は誰のものでもない。宇宙兵器禁止条約を作ろう。中距離ミサイルを設置させないことを手始めにミサイルの管理もすすめよう。さらに東北アジアで非核地帯条約を作ろう。今年は世界天文年であり、それを宇宙軍拡のストップの年としたい。4月にはソウルで東北アジアのMDと宇宙軍拡を考える国際集会が開催される。ここへの参加も呼びかける。」

 藤岡さんが指摘するように、アメリカのミサイル防衛司令部は全米戦略軍司令部の下にある。この全米戦略軍司令部はネブラスカのオマハ近郊のオファット空軍基地内にある。この司令部は新たな核戦力構想の下に2002年に戦略軍と宇宙軍の司令部を統合して形成されたものである。この司令部の下に、地球規模攻撃司令部(グローバルストライクコマンド)とミサイル防衛司令部などがあるわけである。ミサイル防衛はアメリカの予防先制攻撃と一体のものであり、ミサイル防衛と先制攻撃がグローバル戦争の両輪といっていいだろう。

 講演の後、東海地方各地でのPAC3配備反対の取り組みが紹介され、集会アピールの採択の後、名古屋・栄の繁華街でのデモに移った。デモでは、岐阜や三重への新型ミサイル配備の反対、ミサイル防衛の中止、宇宙の軍事利用反対、三菱のミサイル生産中止などを力強く訴えた。

日本各地ですすむPAC3配備は、アメリカのすすめるグローバル戦争の環のなかにある。東海でPAC3反対の活動をすすめ、それを北東アジアの平和にむけての活動に繋げていくことが求められる。                           (竹内)

 

参考

「パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会」結成集会アピール

 政府は、2003年「弾道ミサイル防衛(BMD)システム」の導入を決定しました。ミサイル防衛システムとは、飛来する弾道ミサイルを人工衛星、レーダーなどで探知・追尾し、これを迎撃・破壊するためのシステムです。すでに、海上自衛隊は、5隻のイージス艦を配備し、海上発射型ミサイル(SM3)の導入を進めています。

 また、地上配備型パトリオットミサイル(PAC3)は、首都圏の入間基地(埼玉県)、習志野基地(千葉県)、武山基地(神奈川県)、霞ヶ浦基地(茨城県)に配備され、2008年5月からは、浜松基地(静岡県)に、そして、今年2月には岐阜基地に、9月までに白山基地(三重県)、饗庭野基地(滋賀県)、2009年度には第2高射群の芦屋・築城・春日・高良台の各基地(福岡県)への配備が計画されています。「BMD(弾道ミサイル防衛)システム」は、アメリカが他国を攻撃しやすくするためのものだといわれています。いわば、「先制攻撃のための『盾』として位置づけられています。決して「防衛」のためではありません。

 このBMDシステムが、世界やアジアのさらなる軍拡競争を招き、戦争の危険を増すと容易に予想されます。もし、このような事態になれば、憲法の平和主義を破壊することになります。すなわち、「集団的自衛権」の行使へと進展し、憲法第9条に違反することになり、かつ、憲法前文に記述された『日本と世界の平和的生存権』の侵害にもなります。

 私たちは、PAC3配備が進められようとしている東海各地で、反対運動に取り組んでいる力を結び、情報の交流、反対運動の連携を目指して、「パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会」をここに結成します。

 世界の軍拡競争に巻き込まれるリスクを負うPAC3配備に、全国の仲間と共に反対します。                         2009年2月7日

「パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会」参加者一同