「破壊措置命令」の下での浜松基地のPAC3

麻生政権は朝鮮による「衛星」発射を口実に3月27日に「破壊措置命令」を出し、ミサイル防衛(MD)を発動した。それはMD部隊を「迎撃」用に実戦配備するというものであり、政府自身が日本国憲法の平和主義を破壊しようとする行為だった。

すでに3月19日には、浜松基地から岩手・秋田・浜松などにPAC3関連の特殊車両の通行通知が出されていた。秋田県への通知は23日に届き、26日になって「教育目的」の通行と新聞で報道された。浜松基地からのPAC3の移動は29日の朝7時から始まった。この日の11時30分に浜松基地への抗議・要請行動をおこなった。

命令前日の26日午後1時30分ころには、自衛隊幹部を乗せたとみられる小型のジェット機が浜松基地に飛来した。PAC3の展開に関する現場での指示のための来浜だろう。

「破壊措置命令」以前から、PAC3の展開にむけての準備が着々とすすんでいたのである。

30日に市役所に行き、市民生活部に対して市長も反対するように要請した。その際、市によれば「破壊措置命令」の翌日の28日(土曜)の朝、浜松市の市民生活部の担当者の携帯電話に浜松を29日に出るという連絡が入り、その日のうちにマスコミにも連絡がおこなわれたという。

当日の監視行動によれば、PAC3のトレーラーが次々に車列をなして浜松基地北門から出ていき、警察との連携で一般車両の規制もおこなわれた。北門には迷彩服姿の警備が立ち、「警備強化実施中」の看板がだされ、輸送隊員も迷彩服姿だった。

浜松基地から4基・50台余のPAC3部隊が東名高速を使って清水港に向かい、民間フェリーの第1有明丸に乗り込み、東北に向かった。仙台からは高速道を使って秋田・岩手に向かい、空自加茂分屯地・陸自秋田駐屯地に指揮通信関係を置き、PAC3を秋田の新屋演習場と岩手の岩手山演習場に展開させた。まだ寒い時期、隊員は駐車場などで野営したという。

発射機を載せた1台は道を間違え、秋田のスタジアムで照明灯のコンクリート部分に車体を挟み、3時間20分の間、動くことができなかった。発射機を載せたトレーラーは全長16メートル、30トン。浜松から秋田までの長距離の緊急移動には適さないものである。

「衛星」発射の日まで、浜松基地周辺には、深夜にAWACSの轟音が響くことが多かった。AWACSも「破壊措置命令」下でMD態勢に組み込まれ、朝鮮監視飛行を繰り返していた。 

宇宙覇権・予防先制攻撃・ミサイル防衛・情報戦・諜報戦・平時の戦時化などが現代グローバル戦争の柱であるが、今回の展開も、アメリカの衛星情報に依拠し、日米の作戦司令部を形成し、MDを発動させ、「ミサイル」情報戦をおこなって情報操作を繰り返し、平時での戦時状況が作り出されたわけである。

「ミサイル危機」を煽って麻生政権はMDを発動させたが、それは危機に踊ってしまうというこの政権の脆弱性を示すものであり、その国際的信頼はさらに低下するだろう。また、防衛省が発射の誤情報を流すという失態も世界に示された。首都圏では市ヶ谷の防衛省防備を中心にPAC3が展開された。

このなかで示されたことはMDそのものが実際には役に立たないということであり、PAC3が市民を守るものではなく、市ヶ谷・朝霞・習志野という軍事拠点を守るものであり、東北へ配置されたPAC3は粉飾に過ぎなかったということである。

さて、2008年5月から始まった浜松基地へのPAC3の配備に際して、PAC3の実弾は配備しない、PAC3は教育用に配備するという説明だった。では、今回の東北への移動に際したPAC3の実弾はどこから運び込まれたのだろうか。謎のひとつである。  


「破壊措置命令」撤回・浜松基地のPAC3の秋田・岩手への展開中止要請行動

3月27日の破壊措置命令の撤回と浜松からのPAC3の東北展開に抗議して以下の要請をおこなった。
3月29日の抗議行動には岐阜や名古屋の仲間も参加した。
この抗議行動に先立つ朝7時、浜松基地正門から東北に向けてPAC3が出て行った。
3月30日には浜松市への要請行動をおこなった。

   
11時30分 基地前抗議行動           7時すぎ 浜松基地を出て行くPAC3

1 浜松基地への要請書

浜松基地司令様                                    2009329

日本国首相様 防衛省大臣様                           NO!AWACSの会

                                                 人権平和・浜松

 「破壊措置命令」の撤回と
         浜松基地のPAC3の秋田・岩手への展開の中止を求める要請書

 

327日麻生政権は、朝鮮による「ミサイル」発射を口実に「破壊措置命令」を出しました。それにより、「ミサイル防衛」部隊を実戦配備し、戦争の開始につながる態勢をとろうとしています。外交努力ではなく軍事的威嚇を行使するこのような動向に、私たちは強く抗議し、その撤回を求めます。

この命令によって首都圏では市ヶ谷を中心に朝霞・習志野にPAC3が配置され、佐世保のSM3を持つイージス艦「ちょうかい」「こんごう」も配置されます。浜松基地のPAC3は秋田と岩手に展開します。すでに浜松基地から「教育目的」による特殊車両の通行予告通知が319日付で出され、23日には秋田県に届き、26日から4月末までを予定して陸自秋田駐屯地と空自加茂分屯地に展開するといいます。岩手では陸自岩手駐屯地に配備されます。加茂分屯地に指揮所を置き、秋田・岩手の駐屯地にPAC3を配備して迎撃態勢をとるというのです。

わたしたちはこのような展開の中止をここに求めます。防衛省・浜松基地による「教育目的」の名での事前通告のやり方にも強く抗議します。軍事組織の嘘と隠蔽が戦争を拡大してきたからです。

 この間、わたしたちはMD導入とPAC3の配備の中止を求めてきました。その理由は、MDやPAC3は新たな米軍の戦争システムへと浜松基地を統合することになり、政治的には憲法を破壊し、日米共同作戦により集団的自衛権が行使され、経済的には数兆円の軍需企業の利権を生み、社会的には基地機能を強化し、宇宙の軍事化とアジアでのミサイル軍拡をさらにすすめるからです。

今回の「破壊措置命令」とPAC3の展開によって、私たちが指摘してきたことが実際に起きようとしています。それは戦後初めての「破壊措置」命令による戦闘配置であり、その行動によって、憲法第9条が最初に破壊されることになります。戦力の不保持も武力の威嚇・行使の禁止も交戦権の否認も、実際の軍事行動によって無きものにされます。実施の運用は米軍からの情報と日米の共同作戦司令部の判断によることになり、浜松基地のAWACSもこのシステムに組み込まれていきます。

今からでも遅くはありません。「破壊措置命令」の撤回と浜松基地のPAC3の秋田・岩手への展開を中止すべきです。

かつて日本は「鬼畜米英」を叫び、竹槍で飛行機と闘おうとし、占領を提灯行列で祝いました。今では「北朝鮮のミサイル」を口実に「ミサイル防衛」を宣伝し、北東アジアでの対立を煽る世論操作がおこなわれています。しかし国際的には、首相のホテル・料亭での接待政治、泥酔大臣の金融対策、金のばら撒きとセフティネットの破壊、大臣の人権侵害の放言、過去の戦争への歴史的責任なき対応など信義なき政権とみなされ、内外の評価は低下する一方です。「愛国心は悪党の最後の逃げ場」といいますが、このような危機にある内閣が、「ミサイル」からの国家防衛を煽動し、未完成のシステムの戦闘配置によって憲法の破壊をすすめる政策は、まさに悪党の所業です。

現在の危機を招いている原因は、朝鮮戦争が未終結であることと21世紀に入っての宇宙覇権によるグローバル戦争の拡大です。今こそ、平和協定の締結につながる政策をとり、グローバルな戦争政策を中止し、国交の正常化をすすめ、アジアでの非核化とミサイル軍縮といった外交努力をおこなうべきです。 以上、要請します。


PAC3の移動、配備中止の申し入れ

 浜松基地司令 平本正法様                                  2009年3月29日

                 パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会
                                 不戦へのネットワーク
                                 岐阜基地へのPAC3の配備の中止を求める会
                                 NO!AWACSの会浜松
                                 戦争をしない・戦争協力もしない三重ネットワーク

 ミサイル防衛が発令され、浜松基地から秋田、岩手両県にPAC3部隊の移動が行われます。私たちは今回の移動、展開をただちに中止するよう強く申し入れます。

 今回の移動、展開は北朝鮮の「ミサイル」発射を口実になされています。しかし北朝鮮当局は人工衛星打ち上げと発表し、国際機関にたいしても危険区域と日時の通告を国際的ルールに従って通告しています。 政府は「飛翔体」などと言いあくまでも「ミサイル」発射としようとしています。 官房長官は通常は落下することはないので国民に冷静に対処するように求めました。 冷静に対処していないのは政府―防衛省―自衛隊でしょう。ミサイル防衛を発動するなどというのは冷静さをかいた行動です。矛盾に満ちたものです。

 首都圏にはすでに移動、配備が完了しました。予定の通過コースから遠く離れ、落下することはありえない首都圏にマスコミに公表しながら大々的に配備するのは何故なのでしょうか。 浜松基地からの移動もフェリーと陸路使うと報道されています。 移動手段、経路や配備箇所を公表したのでは現実の防衛の役には立たないはずです。 北朝鮮だけでなく全世界に日米軍の戦争体制を誇示することが第一の目的なのでしょう

 今回のミサイル防衛の発動は米軍と一体となったミサイル防衛システムの世界初の実戦訓練そのものです。 さらに日本の「有事」=戦争体制構築の大掛かりな訓練と国民動員を図るものです。自治体も巻き込みながらの体制づくりが進められています。ソマリア沖での護衛艦2隻の派兵によって本格的な武力行使を伴う海外派兵の開始にあわせた、日本国内での戦争体制作りが今回のミサイル防衛発動です。

 浜松基地配備の意味も明らかになりました。戦略的な展開を行う部隊の出撃拠点であるということが明らかになったのです。PAC3−ミサイル防衛は戦争を誘発すると訴えてきたことが今回証明されました。

 未曾有の経済危機のなかで職や住居を失う人が次々に生み出されている現在、誰も戦争なんか望んでいません。平和で未来に希望が見えるような人間らしい生活を求めているのです。

 軍拡では平和はつくれないのです。直ちにPAC3移動を中止するよう求めます。



2 浜松市への要請書

浜松市長様                                  20093月30日

                          NO!AWACSの会

                                                 人権平和・浜松

浜松基地のPAC3の秋田・岩手への展開の中止を求める要請書

327日麻生政権は、朝鮮による「ミサイル」発射を口実に「破壊措置命令」を出しました。それにより、「ミサイル防衛」部隊を実戦配備し、戦争の開始につながる態勢をとろうとしています。外交努力ではなく軍事的威嚇を行使するこのような動向に、私たちは強く抗議し、その撤回を求めています。

浜松基地のPAC3は秋田と岩手に展開しようとしています。すでに浜松基地から「教育目的」による特殊車両の通行予告通知が319日付で出され、23日には秋田県に届き、26日から4月末までを予定して陸自秋田駐屯地と空自加茂分屯地に展開するといいます。岩手では陸自岩手駐屯地に配備されます。加茂分屯地に指揮所を置き、秋田・岩手の駐屯地にPAC3を配備して迎撃態勢をとるというのです。

 この間、わたしたちはMD導入とPAC3の配備の中止を求めてきました。その理由は、MDやPAC3は新たな米軍の戦争システムへと浜松基地を統合することになり、政治的には憲法を破壊し、日米共同作戦により集団的自衛権が行使され、経済的には数兆円の軍需企業の利権を生み、社会的には基地機能を強化し、宇宙の軍事化とアジアでのミサイル軍拡をさらにすすめるからです。

今回の「破壊措置命令」とPAC3の展開によって、私たちが指摘してきたことが実際に起きようとしています。それは戦後初めての「破壊措置」命令による戦闘配置であり、その行動によって、憲法第9条が最初に破壊されることになります。戦力の不保持も武力の威嚇・行使の禁止も交戦権の否認も、実際の軍事行動によって無きものにされます。実施の運用は米軍からの情報と日米の共同作戦司令部の判断によることになり、浜松基地のAWACSもこのシステムに組み込まれていきます。

PAC3導入に際し、浜松市に何回か反対するように要請してきましたが、PAC3は教育用と言うことで実戦には使わないという認識でした。しかし、今最前線での使用が行われようとしています。このような使用は浜松を再び戦争の拠点とすることであり、私たちは反対します。

浜松市長は浜松を戦争の拠点としないためにも、浜松基地のPAC3の秋田・岩手への展開の中止をもとめてください。