浜松基地自衛官人権裁判第8回口頭弁論報告

2009年
7
6日、浜松基地自衛官人権裁判第8回口頭弁論報告が浜松地裁でもたれた。60人の傍聴席は満席になった。最初に原告側代理人が、前回、国側が傍聴席をチェックして監視するそぶりをみせ、傍聴者側が威圧を感じたことをあげ、そのような行動の中止を申し入れた。

 今回の弁論では、この間提出を求めてきた供述調書などの書類の写しを国側が提出したことを受け、それらの文書に対して原告側がその内容について質問した。自衛隊側の証拠についてはすべて出すように求めてきたが、今回の提出で求めてきたものの多くが提示されることになった。書類をみると人権侵害の実態や安全配慮義務違反を指摘することができる。今後はこれらの書類や原告側の資料を利用して、人権侵害の実態を明らかにすることになるだろう。

 次回は83111時から。多くの市民の支援・傍聴をよびかける。    (T


自衛隊という職場で何が起きていたのか

―浜松基地自衛官人権裁判「学習会」

 

 7月16日夜、浜松基地自衛官人権裁判の学習会が開かれた。主催した「支える会」の予想を超える35名が参加し、講師の塩沢忠和弁護士の明解な問題提起に聞き入った。裁判はすでに8回目の口頭弁論が終了し、原告が求めていた国側の調査資料のほとんどを開示させることができている。次回からは原告として具体的に事実を明らかにして被告国の責任を立証していく段階にある。

まず、塩沢弁護士は浜松基地自衛官人権裁判の意義と提訴に至る経過について説明した。一人の自衛官のいじめによる自殺と「自衛隊に謝ってほしい」という遺族のやむにやられぬ想いから「調停」の申し立てとして始まったこの事件が当然ながら国・自衛隊側のかたくなな姿勢によって壁につきあたったこと、何としても提訴したいという遺族の熱意が多くの人を動かし、弁護士に依頼があり、弁護団を組織して時効ぎりぎりで提訴できたことを述べた。そして提訴するための準備において、浜松基地の実態について具体的に知り、自衛隊も自衛官という労働者が働く職場であり今まで自衛官の生活について考えてこなかった運動の質に気がついたと問題を提起した。この裁判は自衛官自殺の責任を問うものでありながら、必然的に自衛隊という組織の体質を問い、自衛隊の「民主化」を展望するする質を内包しているのであろう。

次に、自殺したSさんの経歴、原告である妻のAさんとの出会い、Sさんをいじめた被告Nの経歴と「いじめ」の実態、Sさんのイラク派遣後エスカレートした「いじめ」などについて、これまで知られてこなかったエピソードを交えて説明した。その上で、「いじめ」を防止できなかった上司である課長、班長、shop長などの対応などについても具体的に述べ、上官の安全配慮義務はないとする被告国の主張を強く批判した。そして、一部にNを転勤させるなどの動きもあったが、Nの転勤が取りやめになったことを知った直後にSさんが死を選んだことを明らかにした。

最後に、今後の課題にについて触れ、開示させることができた調査資料は、まさに「宝の山」で新しい事実が明らかになっている、これを読み込み次回の口頭弁論に向けて弁論を組み立てると決意を述べた。また、「支える会」の結成は、原告や弁護団にとって大きな励ましであるとして「支える会」拡大への期待も語った。

残念ながら予定した時間に限りがあり、塩沢弁護士が触れることができなかったこともあり、2回目の学習会を十分な時間を取って開催しなければという思いを新たにした。                   [M]

 

◎浜松基地自衛官人権裁判の日程・静岡地裁浜松支部

 

8月31日(月)  11:10〜  弟9回口頭弁論