第8回「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」東京会議開催 

                             

2009年11月21日から22日にかけて、明治大学で第8回「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」東京会議がもたれ、のべ400人が参加した。この「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」は日本での歴史教科書の歪曲問題をきっかけに日本・中国・韓国の歴史教育関係者が集まり、共有できる歴史認識の発展と東アジアの平和をテーマに発足したものである。この会議は2002年の南京での開催から始まり、東京、ソウル、京都、北京などでの開催を経て、今回で8回目になる。この間に共通副教材を作成し、2005年に3カ国で『未来を開く歴史』を出版している。

今回の会議は21日に基調報告と第1テーマの東アジアの国際緊張と平和運動、22日には第2テーマの歴史教育における東アジア史の可能性と第3テーマの戦争の記憶と平和に生きる権利の順に報告が行われ、最後に総括会議がもたれた。この会議での報告者と討論者は30人を超えた。

ここでは報告の中から印象的なものをあげておく。

「90年前の東アジアでのナショナリズムの中に恒久的な東洋平和論があったことを大切にすべき」「歴史認識問題に向き合い、人類が克服できていない戦争とパワーポリティクスを克服すること」「東アジアでの共同体建設のために地理・歴史・アイデンティティでの障害を超え、歴史認識を越境させる」「日朝の国交正常化が東アジア冷戦の傷跡を洗い流すことになる」「世界で『改心と和解のグローバル化』が展開している」
「北東アジアでの非核地帯化が求められる」「平和運動は関係についての運動であり、希望の想像力をエネルギーとするもの、それは現場での生の出会いからはじまる。北東アジア市民社会の形成が課題」「東アジア平和と繁栄を考える報道人ネットワークを作りたい」「東アジア地域史の角度から3カ国を説明できるような教材が必要」「歴史の事実を尊重し、偏狭な民族感情を捨て、正義や平和の視点で歴史問題に向き合うこと」「共同の発展と平和をテーマに『東アジア史』を確立したい、それが構造的暴力を清算し、東アジアでの市民の形成につながる」
「学ぶことで過ちを繰り返さない社会を作ることができる」「教育委員による教科書採択ではなく、学校や現場の意見で採択されるように制度を変えるべき」「平和教育では知に触れることのみならず、心に触れることが大切」「歴史認識の核心には人権を置き、また未来志向の価値を持つことが大切であり、冷戦的思考を克服することが求められる」
「韓米同盟とその軍事演習が必要という冷戦仮説が根絶されていない、平和的生存権の保障が求められる」「平和的生存権とは国内外の一般市民の戦争被害者への被害回復措置から始まる」「歴史の理解を深め、魂を揺さぶること、豊かで繊細な資料が歴史を生きたものにする」。

このように多くの問題提起がなされたが、今回の会議の特徴は、東アジアの共同体形成に向けて「東アジア史」の確立が提起され、東アジアでの平和確立のために、東アジアでの冷戦の終結と平和運動の市民的連帯が強調されたことであった。その実現に向けての歩みが、各地域ですすめられていくことが今後の課題であると思う。      (竹)