どうしたら償えますか                

生駒 孝子

 

どうしたら償えますか

 

今も電気にあふれる暮らしを続ける私たちは

 

原発を止めたら、回りまわって自分の仕事に影響しないかと

怯える会社員たちは

 

自国の事故さえ収束できないまま原発を輸出しようという企みに、

怒ることしかできないでいるニッポン人は

 

 

どうしたら償えますか

 

「瓦礫処理を全国で分けあうのが復興への協力だ」

こんな美名に騙されそうな市民は

「放射性のごみ処理は現地で」がチェルノブイリが出した結論だと

ほとんどのマスコミは報じない

 

「頑張ろうニッポン!頑張ろう東北!」

繰り返される言葉に政治的、あるいは商業的なニオイを

感じてしまうラジオリスナーは

ニッポンに暮らす外国人にもこの言葉は向けられているか

 

 

どうしたら償えますか

 

私たちの死後、使用済み核燃料棒という爆弾を抱えながら

生きる子や孫や、その子孫たちに

 

緑なす福島をフクシマに変えてしまったのは、

私たちの無知と無関心だ

経済的に原発を受け入れざるを得ない、第二のフクシマは

地震国ニッポンのいたるところに在る

 

 

どうしたら

 

深夜のコンビニで

        生駒孝子

 

「ピンポン」自動扉が開くと

「いらっしゃいませ」と棚の向こう側から

若い女性の声が迎えてくれた

店内には誰もいないらしい

彼女が商品を補充しているらしい気配が

遠慮がちに伝わってくる

 

「お願いします」私がレジの前に立つと

彼女は弾かれたように飛んできた

「ありがとうございます」

伏し目がちにレジを打つ彼女は二十代前半、

娘と同じくらいかと思った途端思わず声が出る

 

「ひとりなの?若い女の子がひとりで恐くない?」

なんて余計なことをいうおばちゃんだ、

言い終わらないうちに後悔をする

彼女はパッと目を上げて一瞬戸惑いを見せた

しかし直ぐに少しだけ幼くはにかんで

「初めは恐かったですけど、もう慣れました」と

頬を上気させ、素顔で笑った

 

彼女は何を夢見て朝を待つのだろう

 

それから深夜この店の前を通る時、

私の車は最徐行をする

彼女の姿がそこにあることも、

ないことも期待しながら