浜松基地自衛官人権裁判第12回口頭弁論報告
2010年3月1日、静岡地裁浜松支部で自衛官人権裁判の第12回口頭弁論がもたれ、60人近い仲間が傍聴した。
この日の弁論は、被告の自衛隊側が、原告に公務災害認定関係書類を提出するように求めたことへの反論から始まった。この公務災害認定請求は本裁判とは別にすすめているものであるが、その書証(書類、メール記録や日記など)を自衛隊側代理人が原告側に求めたことから弁論となった。この要求に対して、原告側は国へとすでに出したものであり、被告は国側から取り寄せができるはずで原告として必要と判断したものは提出していると反論とした。
つづいて安全配慮義務違反をめぐって弁論がなされた。原告側は2月に準備書面7・8を提出し、Sさんが死に追い込まれるまでの状況、パワハラをおこなったNと自衛隊側の法的責任について論証したが、このうち安全配慮義務違反が争点になった。
すでに原告側は周到に弁論を進め証拠調べに入る段階になっている。しかし、今回の口頭弁論では、被告の国側がさらに関係者の聞取りをして書証を提出し、反論のための準備書面を出す予定を述べることで引き伸ばしを図り、早期の証拠調べ入りに抵抗しているようにみられた。自衛隊側は、他の裁判の主張と同じく、Sさんの死の原因を個人的な理由によるもので隊内での人権侵害によるものではないという方向ですすめようとしている。
原告側は、人権侵害をおこなった行為が傷害致死罪にあたり、その人権侵害を放置したことに対する上司の安全配慮義務違反を追及している。証人申請では自衛隊側の上司については学校長ら5名の審問を要求している。繰り返されるパワハラが精神的な傷害をもたらし、Sさんから生きる力を奪っていったことが、この間の口頭弁論で明らかになっている。
裁判を通じて、被告Nや国の犯罪性と責任を明らかにして賠償させ、早急に公務災害の認定をさせていくことも求められる。
裁判後の集会では、弁護士の解説ののち遺族や親族からの発言があった。元自衛隊員の親族が、原告が自衛隊を訴えることに同意することは勇気ある厳しい決断だったと思う。親族の気持ちをそこまで追いやったのは、自衛隊側の人を人として扱わない人権侵害が横行する体質である。
遺族が語ったように、今回の裁判は隊員がSOSを出す場がないという現在の自衛隊の体質やシステムを変えていく闘いでもある。故人の思い出を語るなかで流される涙を受け止め、その悲しみを、勝利を分かち合う日に変えるために、支援の輪を広げよう。
なお、口頭弁論前に、支える会は街頭でチラシ撒きをおこない、市民に支援を呼びかけた。
(T)