7.26浜松基地人権裁判 第1回証人尋問
2010年7月26日、静岡地裁浜松支部で浜松基地人権裁判の第一回目の証人尋問がもたれ、NMショップ長が証言した。
証人尋問は被告・国側から始まった。
尋問の内容は、ショップ長が部下の身上把握に努めていたこと、死に追い込まれたSさんは上司に対して意見具申はしないタイプであること、Sさんに「ミス」があり、能力は低いとみられたこと、Sさんに仕事上の不満は見られなかったこと、Nに大声で怒鳴られていたこと、Sさんの残業については知らないこと、などを述べた。それは、職場での「指導」が人権侵害にはあたらず、叱責の理由はSさん自身の能力の欠如によるものであり、「指導」は死の原因ではないという国側の主張を補強させるためのものだった。
しかし、原告側の反対尋問のなかでそのような国側のもくろみは崩されていった。
反対尋問では、Sさんの「ミス」をショップ長自らがすべてを確認してはいないこと、その「ミス」も軽微なものであること、ショップ長はNに遠慮しSさんへの人権侵害を止めなかったこと、ショップ長自身がNの行為を問題視する能力がなく、暴言や暴力を肯定していたこと、ショップ長が国側のいう「行き過ぎた指導」自体を感知できていないこと、その無責任さがSさんを更に追い込むことになったことなどが、反対尋問のなかで浮き彫りにされていった。
そのような尋問の状況は、裁判官による質問、あなたが言うような能力が低いとみなしたSさんになぜ整備を統括させるようにしたのか、部隊では人物的な特長についての引継ぎはなかったのか、というものにつながった。
今回の尋問では、職場内で実際にNによる怒鳴り声などのパワハラや殴打が常にあったこと、上司はそれらを知っていたが、それを人権侵害とみなす感覚が欠如していること、ミスが多いというがそれらは軽微なものであること、ショップ長自身に管理能力がなかったこと、亡くなる前にショップでの整備責任を任されるようになっていたことなどが明らかになった。また、現場では、国側のいう「行き過ぎた指導」自体が感受されていないことや自衛隊内での人一人の命への想いの薄さも示され、さらに隊員所持の合鍵も存在したという術科学校内の管理のずさんさも明らかになった。
国側は、人権侵害の存在を隠蔽し、Sさん個人の資質の問題へと事件を矮小化し、その責任を回避しようとしているが、反対尋問でその無理と矛盾は露呈せざるをえない。それはどこに正義が存在しているのかを如実に示す光景である。
次回はもう一人の上司の尋問である。多くの市民による支援の傍聴を呼びかける。 (t)