浜松基地人権裁判第18回・証人尋問4(元同僚の証言)

 

2010年12月6日、地裁浜松支部で浜松基地自衛官人権裁判の4回目の証人尋問がもたれ、元同僚のTさんが証言した。傍聴支援者は70人を超えた。裁判が始まる前に、公正判決を求める要請署名3万人分の提出がおこなわれた。今回の署名提出は9月、11月に続いて第3回目のものであり、提出数はのべ3万5千人分となる。署名提出後、浜松駅で宣伝行動もおこなった。

今回の証人尋問は亡くなったSさんの同僚であり、Nによる人権侵害を直接見る機会があった元同僚のTさんに対しておこなわれた。Tさんは自身へのセクハラを含め、Nによるいじめの実態を証言し、上司がいじめを認識し、いじめがあったにもかかわらず適切に対応してこなかったことや亡くなる前のSさんの状況を語った。

元同僚Tさんの証言で明らかになったことは以下のことがらである。

Sさんの作業ミスがとくに多かったとは思われないこと、上司がもった食事会では、Nによるいじめのエスカレーション、報復が怖いため、本音が言えなかったこと、NがSさんに対して、「ばか野郎」「死ね」「やめろ」「五体満足でいられなくしてやる」といった暴言をやくざが脅すような巻き舌で繰り返したこと、それは感情的になり自分をコントロールできないようだったこと、殴ったり、平手でたたき、ドライバーの取手で頭をたたいたり、後ろから整備靴で蹴飛ばしたりもしたこと、暴行は平成17年(2005年)の年明けくらいからひどくなったこと、Sさんに屈辱を与えるためにNがTさんに反省文を読ませたこと、いじめをやめさせたくてTさんが上司に申し出ても「俺らの時代では普通のこと」と言って取り合わなかったこと、いじめが繰り返される中で、Sさんの口数が減り、「死にたい」と口にするようになり、顔から出血したり、口内炎ができるなど体調を崩していったこと、Sさんは子煩悩なお父さんだったが、Nのことで「辞めたい」「死にたい」と漏らしていたから、自殺のことを聞いて原因はNかと思ったこと、この事件の調査の際に幹部も「俺もいじめによると思う」と漏らしていたこと、職場では階級が一番下の者がお湯沸かしや掃除をおこなうことになっていて時には職場に朝6時半に出勤することもあること、Tさん自身もセクハラにあって申し立てし、体調を壊して入院したこともあること、セクハラといじめの件についての自衛隊内の調査でNは停職5日の処分だったが、もっと厳しいものが出ると思ったこと、これらの事柄が原告側代理人との問答で次々に明示されていった。

最後に、証言者となることに様々な困難があるなかで証言を引き受けた理由を、自身の口から真実を語りたかったことともに、転属できずに自衛隊を辞めざるをえなかったことにけじめをつけたいためとした。

Tさんの証言を聞いていて、精神的にも今も引きずっている、自衛隊側には何もしてもらえなかった、人生にけじめをつけたいという趣旨の発言から、証言者自身の自己回復と正義の実現にむけての思いの深さを感じた。その思いからの証言は、裁判所側に現在の不正義の状態を覆し、尊厳の回復への正義を実現させる判決を、強く呼びかけるものだった。

被告側は反対尋問で、証言者の証言や記憶の不確実性を示そうとしたが、それは逆に、国側の不誠実さを際立たせ、いじめが実際にあったこと、「暴言を見るのはつらかった」「私も同じように辞めたいと考えた」と証言者自身の苦しみを一層はっきりさせるものになった。

次回の証人尋問は12月後半に予定されている。現在さらに2万を超える署名が集まっている。この提出も近日中におこなわれる。多くの市民のさらなる支援を呼び掛ける。(T)