「アジアを見つめて 植民地と富山妙子の画家人生」
東京のYWCAの「韓国併合100年企画」として富山妙子の作品展がもたれ、12月11日には富山妙子と真鍋祐子の対談ももたれた。
会場には、富山の光州民衆抗争、「キツネ」、「慰安婦」、炭鉱、ハルビンなどのシリーズの作品が並んだ。12月11日には、日本社会を風刺した「キツネ」の作品群を背景に、富山が自身の思いを語った。富山と真鍋が対談で語っていたように、作品は言葉になりえず蓄積されたままになっている言葉(「恨」ハン)をアートで表現したものであると思う。展示会場に設置されている上から垂らされた8枚の赤い布は、切断されたままの「恨」が現実とつながりを求めるようだった。
ハルビン作品群は1901から1949年の歴史を示すコラージュである。それは、人間がその時代にどれだけ現実をとらえることができるのかを問いかけているようだった。「ユーラシアの空の下で」は尹東柱の詩から着想したものであり、星空のもとでの恥じることなき新たな生の出立を呼びかける。「はじけ鳳仙花」は筑豊の炭鉱での連行朝鮮人の語られてはいない多くの思いを埋め込んだ作品である。「きつね」の作品群は、天皇制国家の枠組みにより、精神を操作された帝国の人間たちの非人間的な姿を描いている。「海の記憶」は慰安婦とされ、死を強いられた多くの女性たちを追悼し、その尊厳の回復を求める作品である。「倒れたものへの祈祷」は光州事件での死者の「恨」などを描いたものである。
富山は、空・大地・深河・星座を見つめ、そこに刻まれた多くの物語を読み取ろうとし、そのイメージを描く。大地に刻まれた多くの人々の抵抗の歴史が、新たな表象で形作られていく。いつまで人間を食い散らかしたまま生きているのか、人間にとって大切なものは何かと、富山は問い続ける。富山は90歳近いが、今もみずみずしい感性で描き続ける。すがすがしい風が会場に漂う。(T)