4.16「福島原発で何が起こっているのか、
そして浜岡は」広瀬隆静岡講演会
2011年4月16日、静岡市内で「福島原発で何が起こっているのかそして浜岡は」という題で広瀬隆さんの講演会が持たれ、600人が参加した。この集会は浜岡原発を考える静岡ネットワークが呼びかけ、静岡県内の市民団体が共催する形でもたれた。
集会でははじめに河合弁護士があらたに浜岡原発の停止を求め差止請求を行うことを呼びかけ、浜ネットの白鳥良香さんが地震時の浜岡原発の危険性について説明した。その後、広瀬隆さんが3時間にわたって福島原発の現状と問題点、放射能汚染の現状、浜岡原発の危険性などについて話した。
広瀬さんの話で印象に残ったものを以下にあげておこう。
●マグニチュードは8.4から9.0に挙げられたが、それは単位をモーメントマグニチュードに変えたものであり、地震を大きなものに見せるものだった。賠償責任をうやむやにするものともみられる。
●福島の原子炉はGE製やGEのもとで東芝、石播、東芝がライセンス生産したものである。GEの製造にかかわった人々がその安全性を告発している。1976年には3人のエンジニアが辞職して反原発運動に参加した。その一人が今回CNNのインタビューに応じて福島の原子炉Mark1の事故で「何千もの命が失われる可能性がある」と訴えている。NRCも大惨事の可能性を指摘している。すでに炉心溶融が起きている。溶融によって再臨界に至る危険性もある。
●揺れの大きさ500ガル程度の地震で配管に亀裂などが入り、そこから水素が漏れ爆発に至ったとみられる。配管の損傷が報道されたのは3月26日の新聞記事だった。地震の翌日には1号機の圧力容器の気圧は70気圧から9気圧に落ちている。これは配管の損傷によるものとみられる。津波ではなく地震で配管が損傷し、冷却材を失ったことが事故の主原因だろう。それは日本の原発54機のバックチェックがすべて吹き飛ばされたということだ。
●福島は地震と津波で電源を喪失し、実際にブラックアウトになった。東海第2原発も電源喪失の危機にあったことが判明した。4月7日の地震では女川と東通原発でも電源喪失の危機にあった。2010年6月には福島2号機で電源喪失事故が起きていたが、マスコミは追及しなかった。2010年3月、東電は1号機が60年間は運転可能だと暴言を吐き、保安院はそれをみとめてきた。
●「5重の壁」などと宣伝しているが、実際には圧力を維持するためにはバルブを開けるしかなく、放射能が外部に放出される。大量の放射能流出を批判したら「デマ」扱いされたが、1か月後には政府が大量流出を認めた。「安全」を語る政府やTVに出でてくる「学者」の発表がデマそのものだった。レベル7になることを知っていながら、国民に被曝を強要したのである。早い段階から100キロ内の避難を検討すべきである。
●4月8日には理由は不明だが1号機の放射線量が急に増加した。冷却用に水を注入しているが、底の抜けたバケツに水を入れるようなものであり、流出した水による汚染が続く。今後はそれが濃縮されて蓄積し、ゆでガエルのようにじわじわと殺されていくという状態である。プルトニウムやストロンチウムも検出されている。3号機のMOX燃料は中性子線やα線の放出放射能線量が高く、そこからのアメリシウムやキュリウムも危険である。核燃料プールからの蒸気にはトリチウムなどの放射性物質もふくまれている。海の汚染は想像を超えるレベルに至り、コバルト58も検出された。3月15日には3号機付近で毎時400ミリシーベルトが検出されたが、これは通常の350万倍である。福島市内の値は高く深刻な汚染実態がある。しかし福島の水道水の汚染の報道が抜けている。
●1時間1.015マイクロシーベルトで1年間いると、24時間×365日で8891マイクロシーベルトになり、大きな被曝となる。約1万倍になると考えるとわかりやすい。政府は「安全」とか「ただちに影響はない」などと宣伝しているが、それは子どもたちを死に追いやる犯罪行為だ。体内被曝は危険であり、正常と異常とは概念的なものであって、もともと安全の基準値などはない。政府は暫定基準値なるものを公表しているが、FAOとWHOが設立したCODEXのヨウ素131の基準値が1キログラム100ベクレルであるものを、2000ベクレルに引き上げている。
●放射線同位元素協会(現・日本アイトソープ協会)は当初核実験の問題点を伝えてきたが、核実験に反対する人々が追われ、原子力の推進を掲げるようになり、有効利用の方向に転換した。アイトソープ協会や放射線医学総合研究所は悪質である。自衛隊員や労働者の被曝量250ミリシーベルトに引き上げているが、これは原発労働者の年間被曝量の上限50ミリシーベルトの5倍にあたる数値である。死ねというようなものだという不満の声が上がっている。
●チェルノブイリ事故ではロシア・ウクライナ・ベラルーシで被害者は計700万人に足している。チェルノブイリや今回の福島の事故のように、浜岡では砂丘が原発を守り、さらに12メートルもの防水壁を作るというが、それでは守れない。取水トンネルは破壊され、取水槽の水は熱湯になってしまうだろう。直下型地震が来れば。浜岡原発はすぐに破局をむかえる。今すぐに浜岡原発は止めるべきだ。必要なものは電力ではなく、命である。トヨタ自動車は浜岡原発の停止を求めるべきだ。汚染地帯にプリウスがあっても何の意味もない。原発事故は人類の生存にかかわる問題である。
以上が,講演を聞いて印象に残った発言である。当日静岡では小出裕章さんの講演会も持たれ、500人が参加した。翌日、浜ネットは浜岡現地でのチラシまきを行った。(T)
御前崎で配布した浜ネットのチラシから
浜岡原発と心中はゴメンだ!浜岡原発無条件で即時停止を
私たちは、最も危険な浜岡原発をせめて東海地震が過ぎ去るまで、停機するこ
とを求め、国・県・中部電力に要求してきました。また原発裁判・デモにおいても、
東海地震を甘く見るな、原発震災は日本全体を深刻な危機に陥れると主張し続け
てきました。その通りのことが福島原発で起こってしまったのです。しかしこの
間、国も中電も東海地震に余裕を持って耐えられると主張してきました。これを
無視し、1・2号機の廃炉は決めたものの、他の3基は、東北地方太平洋沖地震
M9.0を上回るかもしれない東海地震の襲来を承知しながら運転をし続けています。
【もう騙されません】
中部電力は、12メートルのフェンスを作って津波を防ぐなどと言って説明してま
わっているようですが、こんな姑息な手段で巨大東海地震を防ぐことなどできま
せん。地震という自然の力に対抗しようとしてもムダです。元々浜岡原発は安政
東海地震(M8.4)を想定して地震対策を行ってきたものです。今更フェンスを作っ
てみても、原発本体がM9.0の地震には対応した地震対策を取っていないからです。
【浜岡原発を全部止めても停電は起きません】
昨年12月から1月にかけて、浜岡原発は全部止まっていました。しかし停電と
はなりませんでした。電気が足りなくなると予想できるのは、真夏の8月、高校
野球が行われる時だけです。ならばその時だけ、みんなで少し電気を節約すれば
解決します。原発を不安を抱えたまま、危険をおかしてまで稼働させる理由は一
つもありません。
【原発に「想定外」は許されません】
原発に限っては「想定外」と言って逃げ切ることはできません。原発事故は普
通の事故とは違います。それが福島原発事故で証明されました。