ドイツ緑の党・ジルヴィア・コッティング=ウールさん静岡交流会
2011年5月19日、ドイツの緑の党の国会議員であり、緑の党の原子力・環境政策スポークスパーソンであるジルヴィア・コッティング・ウールさんが浜岡を視察し、静岡市内で交流会をもった。呼びかけは「虹と緑しずおかフォーラム」。
コッティングさん1952年生まれ、2003年には緑の党バーデン・ヴュルテンベルク州の代表に選任され、教育、移民や失業問題などに取組んできた。2005年には連邦議会議員に初当選している。この3月末、コッティングさんの地元の州議会選挙では緑の党が勝利し、緑の党のウィンフリート・クレッチマンが州知事となった。この州は原発が立地する保守的な地域だった。
今回、コッティングさんは福島を訪問し、続いて静岡県の浜岡原発を視察、県知事とも会談した。川勝知事に対しては、「浜岡は福島と比べものにならないくらい危ない。事故があれば、甚大な人命被害と壊滅的な経済的影響が出る」と語り、浜岡の廃炉を求め、再生可能エネルギーへの転換を呼び掛けた。
静岡市内でもたれた交流会では、コッティングさんははじめに、ドイツと日本の違いについての印象を、ドイツでは国家に対して理念を抱いていることやナチの体験からくる批判精神の存在があるが、日本にはそれがないのでは、と語った。それは、過去の戦争責任への無責任の体質が、現在の「想定外」を語り「安全」を宣伝する体質につながっているという指摘なのだと思った。
以下、 講演や討論の中で、印象に残った発言を記しておこう。
●浜岡は3つのプレートが集まる場所にあり、狭い敷地に5基もある。これは無責任であり、中電は住民の安全を考えていない。
●政府の学校内では子どもは20ミリシーベルトまでは安全という数値の引きあげはあまりに高すぎる。子どもに閾値はなく、少量でも危険である。
●浜岡を停止したのは第一歩、廃炉を目指すべきだが、自然エネルギーによる代替エネルギーは市民による小規模分散型がよい。
●日本はハイテク技術があり、風力・太陽光の条件は整っている。市民からのうねりが大切。
●原発事故での隠ぺいは原発自体が内包する問題。原子力は民主主義、透明性と相いれないものである。原子力は基本的に反民主主義なのである。「原子力の平和利用」自体を捨てるべき。
●福島の事故により、危険性が暴露された。原発事故が起きるわけであるから、電力会社はきちんと保険を掛けるべきだが、どの保険会社も加入をうけつけないだろう。
●ドイツの核廃棄物最終処分場での汚染実態はつかめていない。地下水に漏れ出ているのが実態である。
●緑の党は単一体ではなく、まだら模様の組織であるが、総意は環境・エコロジー・脱原発である。異なる意見のグループを尊重し、何を求めているのかを理解し、共通の目標を定め、議論を集約させていくことが大切だ。それによって力を一つにしていく。
●今は事故のショックに時期だが、今後、事故により、住めない地域や汚染の実態がだんだんと明らかになるだろう。
「原子力の存在そのものが反民主主義」という指摘はもっともであり、緑の党の組織論なども興味深かった。浜岡原発が存在し、その実態が容認される中で、知らぬうちに蚕食されていく自らの意識が問われたように思った。
交流会への参加は30人ほどだった。「原発は怖い、やめよう」という運動的なうねりとそれを実現してくための地道な組織的討論との距離を埋めていくことも課題である。
(T)