佐藤和良講演・袋井「福島原発30キロ圏からの報告」

2011年5月21日、浜岡原発から30キロ圏にあたる袋井市でいわき市議の佐藤和良さんを招いて「福島原発30キロ圏からの報告」の題で講演会が持たれ、県西部を中心に400人が参加した。

集会でははじめに湖西市の三上市長が原発に反対する意思を表示した。続いて佐藤さんが福島原発震災の発生状況と被曝の実態について話し、講演後の討論では原発震災の原因と責任に言及した。佐藤和良さんは現在福島第2原発がある楢葉町の出身、福島原発の反対運動をすすめてきた活動者である。

佐藤さんは最初に、出稼ぎ地帯だった福島の浜通りへと原発を作れば仙台のようになれると宣伝され、原発が建設された経過、プルサーマルや増設に反対の意を示しはじめた佐藤知事が国策捜査によって辞職に追い込まれたこと、福島原発40年にあたり集会を用意していたことなど原発の歴史と反対の動きを紹介した。しかし、地震と津波により福島原発は炉心溶融をおこし、深刻な放射能汚染と被曝をもたらしていることを話した。

そして、放射能汚染の広がりは原発難民というよりは「原発棄民」を形成していること、被曝線量の上限があげられ、被曝が強制される状況となり、あきらめさせることで「ヒバクシャ」が作られていること、大地、空、海が汚染されることで第1次産業が破壊され、被害額は10兆円を超えるとみられること、「想定外」はその責任を逃れるための方便となっていることなどを話した。

佐藤さんは、電力、保安院、安全委員会、学者、マスコミによる「原子力村」の責任や国策としての原子力政策と東京電力の地域支配に実態についても話した。佐藤さんは、長崎の放射線学者の山下や行政を利用して「安全」を宣伝させ、被爆地(長崎)に福島で新たなヒバクシャを作らせるというやり口がなされている、今になってメルトダウンを認めているが、TVに出てくる者たちは原発を推進してきた犯人グループであり、ほんとのことは言わないとその実態を批判した。

また、佐藤さんは、現実はかつての国家総動員体制と変わらず、東電という国策企業が地域を原発のモノカルチャー化をすすめ、植民地支配と同様の状況がすすんでいるとまとめ、原発側は今も降伏文書に調印していないとした。

佐藤さんは、被曝の中でホールボディカウンターによる被曝調査の要求のたかまり、保護者の上京による子どもの20ミリシーベルトの安全基準の見直しを求めての文科省交渉の動き、風評被害というよりも放射能による実害の深刻さ、今後の海洋汚染などを紹介し、不必要な被曝が強要されている現状を福島県民200万人の棄民化につながるものと批判した。そして、原発は「いのちの問題」とし、浜岡原発を含め、市民要求による原発の停止と廃炉に向けての活動を呼びかけた。